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Monthly Spotlight / 宗宮 健太郎

宇宙の謎を解く鍵「重力波」初検出への挑戦!

  • 宗宮 健太郎(Kentaro Somiya)

重力波検出で見えてくる新たな宇宙の様子

誕生したばかりの宇宙はどんな様子だったのでしょうか。宇宙のかなたにある星の内部はどうなっているのでしょうか。現在の天体観測技術では、このような疑問に答えることはできません。それは、これまで人間が、光つまり電磁波の検出により宇宙を見てきたからです。電磁波は物体との相互作用が強く、物体に当たると反射し、減衰します。一方、重力波は物体を貫通し、減衰しないと考えられています。そのため、重力波は電磁波よりも遠く、深くからの情報を運んでくることができるのです。重力波の検出に成功すれば、これまでに見ることのできなかった新しい宇宙の様子が明らかになるでしょう。

重力波検出器LCGT建設へ

そもそも、重力波とは時空のゆがみが波として伝わる現象です。超新星爆発やブラックホール合体など大きな質量変動が宇宙のかなたで生じると、重力波が地球までやって来ると考えられています。重力波が来ると、直交する2方向で物体間の距離が伸縮します (図1)。一方が伸びた時には、他方が縮むという伸縮を一定の周期で繰り返します。
重力波の存在は、1917年にアインシュタインが予言しました。1990年代後半に日本と欧米に相次いで第一世代重力波検出器が作られましたが、直接的に重力波の検出に成功した例はまだありません。そこで、重力波の初検出に向けて、日本の重力波研究者が結集し建設されることになったのが、第二世代検出器であるLCGT (Large-scale Cryogenic Gravitational-wave Telescope) です。
私の役割は重力波検出器の設計です。重力波検出には、マイケルソン干渉計を利用します (図2)。レーザー光を半透明鏡に当て、直進する光と垂直方向に反射する光の2つに分離します。半透明鏡から一定の距離ずつ離れた地点にそれぞれ反射鏡を置き、返ってきた2つのレーザー光の位相差を検出します。重力波が来ると、直交する一方の腕(半透明鏡から反射鏡まで)が伸び、他方の腕が縮む現象が繰り返されます。その結果、位相差が変化します。この変化をモニターすることで、重力波を検出する計画です。

図1. 重力波により物体間の距離が変化するイメージ(提供/宗宮健太郎助教)。重力波には2つの偏波(+モードとxモード)があり、それぞれにおいて直交する2 方向で物体間の距離が伸縮を繰り返す。1台の重力波検出器では2つの偏波による距離変化の和を検出する。実際の距離変化は非常に微細である。

図2. 重力波検出方法の概要(提供/宗宮健太郎助教)。重力波が到達するとマイケルソン干渉計の片腕が伸び、片腕が縮む。双方の距離の変化の差を位相差により検出する。

先進技術の導入で重力波検出を阻む3つの壁を越える

重力波による物体間距離の変化は非常に小さく、100Hz程度の重力波が来た場合の変化率は10-23以下と言われています。これは、地球から太陽までの距離が水素原子1個の100分の1変化する程度です。そのため、重力波検出器の感度を上げるには、腕を長くすることが重要で、LCGTは3kmの腕をもつ大型検出器になっています。さらに、第一世代による重力波検出を阻んだ最大の要因は雑音です。第一世代検出器の研究成果として、地面振動・熱雑音・量子雑音という三大雑音源が特定されました。
LCGTには、三大雑音軽減のための工夫が施されています。まず、地面振動の影響を軽減するため、イタリアが開発した防振装置を導入しています。多段振り子の先にワイヤーで鏡を吊り下げるものです。さらに、LCGT独自の取り組みとして、検出器を地下に建設します。場所は、神岡鉱山内です。第一世代検出器のある東京・三鷹市の地上と比べて、地面振動は100分の1以下になります。
次に、熱雑音には、鏡をつるしているワイヤーのブラウン運動、鏡の反射膜のブラウン運動、鏡の中の温度ゆらぎがあります。熱雑音の影響は弾性方程式、熱拡散方程式などの式を用いて解析することができます。そこで、私は式を用いたモデリングをもとに、熱雑音を軽減するための設計を行っています。なかでも、鏡の冷却は世界に先駆けてLCGTに導入されたもので、LCGT最大の特徴です。冷却には冷凍機を用いますが、冷凍機と鏡を直接つなげることはできません。冷凍機の振動が雑音となるからです。そこで、冷凍機で鏡をつるしているワイヤーを冷却し、ワイヤーを通じて熱伝導により鏡を冷却する仕組みになっています。そのため、鏡の材質も熱伝導率の高いサファイアを採用しています。一方、冷却化により生じる問題もあります。熱を伝えるために鏡をつるすワイヤーを太く設計しているので、ワイヤーのブラウン運動による熱雑音が大きくなってしまうのです。このように、干渉計の設計では、ある側面を優先すれば、他の側面に問題が生じます。そのため、多数の側面を考慮して最適な条件を設定する努力をしています。
最後に、量子雑音の問題があります。レーザー光は周波数300THz(テラヘルツ、テラは1012)の電磁波であり、光子の集まりです。干渉計で計測される光子の数には、統計的なゆらぎがあります。このゆらぎが光子の位相を変化させ、ショットノイズと呼ばれる雑音になります。レーザーパワーを上げることでショットノイズの影響は軽減できますが、輻射圧雑音という別の問題が生じます。光子の振幅のゆらぎが大きくなり、光子が当たることによる鏡の位置変化が大きくなってしまうのです。

このため、検出器の感度は標準量子限界を超えることはないと考えられていました。これは不確定性原理によりもたらされる感度の限界です。不確定性原理とは、「物体を観測するときに物体の位置のゆらぎと運動量のゆらぎの積が最小値をもつ」という定理です。つまり検出器において、鏡の位置情報のゆらぎを小さくする(ショットノイズの影響を下げる)ためにレーザーパワーを上げると、鏡の運動量のゆらぎ(鏡の位置変化)が大きくなります。そのため、直後に観測される鏡の位置ゆらぎが大きくなってしまうのです。しかし、実際には光バネを利用した標準量子限界を超える干渉計がすでに考案されており、LCGTにもその技術が導入される予定です。

日・米・欧の協力体制により重力波の初検出へ

LCGTは先進技術の導入により、雑音を軽減し高感度化を実現する設計になっています。年間で3から4回、重力波を検出できると予想されます。しかし、重力波の検出には各国の協力体制が重要です。1つの検出器で重力波を検出しても、雑音との判別が容易でなく、重力波が来た方向を特定することも困難です。距離の離れた複数の検出器で得られた観測データを比較する必要があります。そこで、LCGTは、米国、欧州で第二世代にアップグレードされる検出器と協力し、重力波初検出の歴史的瞬間に向けて着々と準備を進めています。

取材・構成:青山聖子/伊藤容子
協力:早稲田大学大学院政治学研究科J-School

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