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Monthly Spotlight / 折原芳波

アレルギー反応のブラックボックスに挑む

興味のきっかけは自身の喘息

「アレルギー」という言葉は日常会話の中でもよく使われていますが、学問的には、本来ウイルスや細菌などの外敵から身体を防御する免疫システムが、人体には無害な物質に対して過剰に反応した状態を指します。もともと私自身が重度の喘息患者だったこともあり、私は免疫学の中でも特にこのアレルギー反応に興味を持っています。実際、免疫学の勉強を始めてみると非常に奥が深く、そのおもしろさに魅了され、大学時代から今日に至るまで免疫・アレルギーの研究に取り組んでいます。

アレルギー反応のキープレーヤー「Th2細胞」と「IgE」

アレルギー反応は非常に複雑な現象で、様々な細胞や物質が関わっていますが、その中でも特にTh2細胞とIgEというタンパク質が重要な役割を担っていると考えられています。Th2細胞はリンパ球の一種で、アレルギー反応を誘発する手助けをする細胞です。この細胞が増えることによりアレルギー症状が悪化します。IgEは抗体の一種であり、寄生虫など身体に有害な物質を攻撃し、感染を防御するための武器のようなタンパク質です。このIgEの中に、本来、無害な物質(花粉、ダニ、食物など)と結合するものが増えている状態をアレルギー体質と言います。アレルギー症状を呈する患者さんの血液中にはIgEが多量に存在しており、このIgEにより種々のアレルギー反応が引き起こされていると考えられています。

これまでのアレルギー研究はこれらのTh2細胞とIgEをメインに行われ、数々の知見が得られてきました。実際に様々な治療薬が開発されており、アレルギー症状を対症療法的に抑える薬も広く使われています。一方で、これらの薬が効かない組織リモデリングという反応も気道や皮膚では起こっています。これらは非可逆的に起こるので薬剤の開発も難しく、これからの研究が待たれています。

免疫学以外からの視点~神経学の観点から~

そこで新たな研究へのきっかけとして、私は免疫学以外の視点として、カナダ留学時代から神経学からアレルギー反応へのアプローチを試みています。糸口となったのは、元々神経系の病気とされていたパーキンソン病やアルツハイマー病、多発性硬化症などの神経変性病態の解明に、近年の免疫学的なアプローチが一役かったことです。それなら逆に、免疫系が原因とされてきたアレルギー反応にも神経が関係しているのではないかと考えたのです。実際、咳をする時にも神経が関わっていますし、アトピー性皮膚炎のかゆみも神経系です。

そこで、ヒトの血液を採取し、リンパ球において神経伝達系の遺伝子発現に変化がないか調べてみました。そして、神経伝達物質受容体の発現が活性化リンパ球で上昇していることを発見しました。さらに、神経伝達物質をリンパ球に作用させると、Th2細胞を介した炎症反応が増加することもわかってきました。今後は神経伝達物質を介したアレルギー反応のメカニズムを明らかにするとともに、新たな治療薬の開発につなげていきたいと思っています。

IgEを介さないアレルギー症状~赤ちゃんを診断ミスから救うために~

血中のIgE値は多くのアレルギー患者で上昇しており、臨床現場でもアレルギー診断の指標の一つとして使われてきました。ところが、近年、血液中のIgE値がそれほど高くないにもかかわらず、おもに食物由来のタンパク質に対して重篤なアレルギー反応を起こす患者さんがいることがわかってきました。このようなアレルギーはIgE非依存性アレルギーと分類され、この分類に入る消化管アレルギーの患者さんは全国で約5000人以上いると言われています。これらの患者さんの多くは新生児を含む乳幼児で、このアレルギーが原因で死亡するケースもあります。にもかかわらず、胃腸系の疾患と混同され、消化管アレルギーであると診断されていない場合も多いのです。そこで、私は現在、国立成育医療研究センターの先生方と共同で、このIgE非依存性アレルギーの診断マーカーを見つけることを目標に研究を行っています。

これまでに、私たちのグループでは、アレルゲン特異的なリンパ球増殖検査がIgE非依存性アレルギー患者の診断に有効である可能性を指摘してきました。乳幼児の血液から分離したリンパ球に牛乳などの食物タンパク質の各種成分を添加して5日間培養すると、健康な人のリンパ球に比べてIgE非依存性アレルギー患者ではリンパ球の数が増加していたのです。ただし大変残念ですが、このリンパ球増殖法の有用性は限定的であり、陽性反応が出るのはIgE非依存性アレルギー患者全体の70%以下に留まっています。

IgE非依存性アレルギー反応は嘔吐の有無と血便の有無により4つのクラスターに分けることができます。この中でも嘔吐のある患者さんにおいてはリンパ球増殖法により75%前後の確率で診断可能であったのですが、嘔吐のない患者さん、特にその中でも血便もない患者さんにおいては50%以下の確率でしか診断できませんでした。これから、ほかの検査方法と組み合わせてさらに感度と特異性を向上させ、実際の臨床現場において診断マーカーとして利用されるよう研究を続けていきたいと思います。また、薬学出身の研究者として、臨床現場で実際に治療・診断を行う医師と基礎研究を行う科学者のかけ橋となれるよう努力していきたいと思っています。

取材・構成:天野千尋
協力:早稲田大学大学院政治学研究科J-School

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