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Monthly Spotlight / 橋本健二

役立つロボットを作る
-人の仕組みの理解と災害への対応-

ロボットを走らせる

私は「人間と同じように」走る2足ロボットを研究しています。また、この成果を活かした災害対応ロボットの研究も同時に行っています。

早稲田大学では1960年代から2足ロボットの研究・開発が進められてきました。私たちはヒューマノイドを開発することで、人間を「構成的に」理解しようと試みています。構成的理解とは、観察や分析ではなく、実際に作って動かしてみることで対象を理解する手法です。例えば、人間が歩くには骨盤の動きが重要だということは、ヒューマノイドを人間と同じように歩かせる試行錯誤からわかってきたことです。また、人間と同じように歩かせることができるようになったことで、福祉機器の使い方を定量的に評価する、といった他の分野への貢献も行ってきました。

すでにロボットを「人間と同じように」歩かせることには成功していますが、走らせるためには越えなくてはならない大きな壁があります。走るためには脚の力で跳び上がる必要があり、この動きには大きな力が必要です。ロボットはおもにモーターから力を得ていますが、跳び上がる力をモーターのみで出そうとすると、モーターが大きくなりすぎて人間のサイズや重量には収まりません。加えて、人間も筋肉のみから力を得ているわけではないため、「人間と同じように」走らせるという目的からも外れてしまいます。

実は、人間が跳び上がるときには、筋肉や腱の弾性も利用しています。走る動きを分析すると、着地時のエネルギーを弾性のある部分に蓄え、このエネルギーを解放することで大きな力を得ていることがわかります。そこで、私は現在、同様の仕組みを腰から下だけのロボットに組み込むことに取り組んでいます。筋肉や腱をモーターとバネに置きかえるのです。まずは脚自体をコイルのバネにしたモデルから始め、次に人間と同じ関節を持つ脚に板バネを入れる、といった段階を踏んで人間に近づけています。現在はロボットが倒れないように横から支えて実験していますが、2015年度中には足首を改良して支えを外すことができればと考えています。

図1: 膝と足首に板バネを組み込んだ2足ロボット(提供/橋本健二助教)


その後は胴体や腕、センサを付けて人間に近づけていく予定ですが、走行中に両足が浮いている状態が大きな課題になりそうです。浮いている瞬間に倒れそうになった場合の対処が難しく、腕も含めた上半身の動き方や下半身との連動が重要になるという予感がしています。また、速く走らせるという意味では、手の振り方にも注目しています。すでに、走ることができる2足ロボットも出てきていますが、よく見ると手は止まっています。

この研究は早稲田大学スポーツ科学部の川上泰雄教授と共同で進めています。人間と同じ動きを、同じメカニズムで、同じように制御するためには、人間の動きを知らなければならないからです。そして、「人間と同じように」走るロボットは、競技ランナーに対する合理的なコーチング法を編み出すのに利用できると考えられるからです。

定量的なコーチング手法を編み出す

スポーツ科学の研究者によると、短距離走でどのように走れば速くなるのか、定量的な分析はなされていないようです。速く走る選手のフォーム分析が積み重ねられてきたようですが、ロボットを使うことでより効率的な分析が可能だと考えています。人間ではできないような極端な動きから検証していくことができますし、動かしすぎて怪我をしてしまう心配もありません。

速くなる可能性が見えてきたら、その動きを、人間でも可能な動きに調整していくといった使い方を考えています。この手法で短距離走のタイムを縮めることできれば、人間が全身を上手く使う「こつ」が見えてくると睨んでいます。また、別の競技や動きにも応用できるでしょう。例えば、長距離走には足をつま先から地面につけるフォア・フット走法と、かかとからつけるヒール・ストライク走法の2つの走り方があり、どちらが効率的なのかは諸説ありますが、ロボットを使えば定量的な検証が可能です。

研究の見通しを考えると、東京オリンピックに出場する選手のトレーニングに間に合うのではないかと考えています。また、トレーニングの検証だけではなく、選手とのエキシビジョン・レースや聖火ランナーとしてロボットを走らせるといった使い方もありえるでしょう。

過酷な環境で働く災害対応ロボットへの途

これまでの研究成果を踏まえた災害対応ロボットの開発も進めています。東日本大震災や福島の原発事故を通して、崩壊の危険や高い放射線量が予想される、人間が入れない場所での救助や作業を行う災害対応ロボットへの期待が高まりました。こういったタイミングで内閣府が始めたImPACTという研究開発プログラムの中で、脚型ロボットの開発を担当しています。おもに4足歩行で這うように移動するロボットですが、これまで研究してきた2足歩行のノウハウから流用できる部分は多いと感じています。

脚型の利点は、他のタイプでは難しい垂直のハシゴや螺旋階段、段差の高さが一定でない階段を移動できる点です。一方で、2足歩行や4足歩行では転倒した場合のリカバリが課題です。なるべく転倒させないよう、ワニのように腹ばいにさせた上で4足歩行させるという、転倒の危険が小さい移動のさせ方を検討しています。また、壊れた場合に後続の活動の邪魔にならない場所まで自力で動いていく能力も必要です。そのため、現在開発している脚型ロボットは、4本ある脚のうち2本まで壊れても移動可能なように設計しています。

               

図2:開発中の脚型災害対応ロボットの完成予想図(提供/橋本健二助教)


これまでも災害対応ロボットは開発されてきましたが、メンテナンス不足で災害時に使用できないということが繰り返されてきました。そこで、今回のプロジェクトでは、老朽化したインフラやプラントの保守管理といった平時にも使えるロボットというコンセプトで開発を進めています。老朽化したトンネルや橋脚のメンテナンスが課題になっていることから、こういったロボットのニーズもあるのではと考えています。

最後に、私は、専門家と一般の方の間でロボットに対する認識の乖離が進んでいることに危機感を抱いています。ロボットといえばヒューマノイドを思い浮かべる方が多いと思いますが、この分野の専門家としては、「センサ」で受け取った情報に対して「コントローラ」で制御し、「アクチュエータ」で動くものは全てロボットという認識です。遠隔操作で動く重機もロボットですし、自動ドアもロボットの一種です。定義についての乖離と同じように、ロボットの能力についての認識にも乖離があるように感じています。2011年の災害においても、ロボットへの大きな期待に見合うほどの成果をあげることはできていません。現在開発しているロボットはどうにかして現場で使えるレベルまで能力を引き上げていかなければならないと考えています。

取材・構成:菊地乃依瑠
協力:早稲田大学大学院政治学研究科J-School

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