ジェローム・ベルによるレクチャー・パフォーマンス『ある観客』

ジェローム・ベルによるレクチャー・パフォーマンス『ある観客』 レポート

2月12日午後18時より小野記念講堂にて、世界的に著名な振付家・演出家であるジェローム・ベル氏がレクチャー・パフォーマンス『ある観客/Un spectateur』を行った。

ベル氏は、2011年に舞台芸術祭「フェスティヴァル/トーキョー」で代表作『The Show Must Go On』を上演し、またこの催しの前日と前々日には横浜で開催された国際舞台芸術ミーティングにおいて『ピチェ・クランチェンと私』を上演しており、日本においても強い関心が寄せられている芸術家である。また、これらの作品を含むベル氏の作品は、「ヴァネツィア・ビエンナーレ」などヨーロッパの代表的な現代アートフェスティヴァルはもとより、アジアを含む世界各地で上演されており、いま世界的に最も注目を浴びる芸術家の一人と言えるだろう。

さて、今回早稲田大学で行われた『ある観客/Un spectateur』であるが、タイトルが示しているのは、舞台芸術をこよなく愛する一人の観客であるジェローム・ベル氏本人のことである。ベル氏は気鋭の芸術家であると同時に、観客として多い時には年間500本ほどの舞台を鑑賞する無類の演劇/ダンス愛好家としても知られている。

「劇場における最良の立場とは、俳優でも演出家でもなく、舞台を完全に体験することのできる観客である」というベル氏は、今回、芸術家としてというよりも、一人の観客として、これまでの舞台鑑賞経験の中から記憶に残っている15本の舞台作品について語ってくれた。ヤン・ファーブルやアラン・プラテルなどの世界の一線で活躍する芸術家たちの舞台作品がなぜそれが印象に残ったのか、「時間」「空間」「身体」などの観点から独自の考察を展開した。身振りを交えながら展開されるベル氏の話は知的かつ説得力があり、舞台には様々な楽しみ方、見方があることを気づかせてくれる。

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「私たち観客1人1人が、お気に入りの舞台をコレクションしている演劇博物館のような存在と言えるのではないでしょうか」とベル氏の発言が印象に残った。舞台という生身の身体によって行われる一回性の強い上演芸術は、1人1人の観客の経験と記憶の内に生命を永らえ、伝えられていく面が多分にあるからだ。なぜ、私たちは演劇やダンスに惹き付けられるのか、舞台芸術の神秘と魅力について1人1人の観客が考える絶好の機会になったのではないだろうか。

文責:越智雄磨(演劇博物館助手)

 ジェローム・ベル (ダンサー・振付家・演出家)

1964年フランス生まれ。フランス国立現代舞踊センター・アンジェ(CNDC)で学んだ後、ダンサーとして多数の著名な振付家の作品に参加。92年のアルベールビル冬季五輪では、開・閉会式の演出助手を務める。94年より自身の振付作品を発表しはじめ、代表作である『ザ・ショー・マスト・ゴー・オン』で、ベッシー賞を受賞。近作に、知的障害を持つ俳優たちが出演する『Disabled Theater』(2012)や、アヴィニョン国際演劇祭のための『Courd’honneur』(2013)などがある。

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