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「まちづくり」を実地で学ぶ「都市居住環境論」

ゼミ紹介

「まちづくり」を実地で学ぶ「都市居住環境論」

公開日:2009/04/01

都市や住宅など、人間の居住環境を研究する分野。早田ゼミの研究テーマは「社会経済の仕組みがどんな現実世界を作っているか」「よりよい未来社会をどうデザインするか」ということだ。
従来、都市計画や公共政策というと、利便性を求めて新しいものを建設するという意味合いが強かったが、今は市民・行政が一緒になってコミュニティの再生を目指す「まちづくり」が注目されている。もともと「まちづくり」とは、著名な建築家であり早稲田大学教授であった吉阪隆正が初めて使った言葉だった。以来、早稲田大学では研究室が地域に拠点を持ち、市民と一緒にまちづくりに取り組むという伝統が受け継がれ、まちづくり研究・教育では中心的な大学になっている。

研究室DATA

早田 宰 教授
早田ゼミナール(社会科学部 自然科学分野)
所在地:早稲田キャンパス 14号館

現場で鍛える「ソーシャル・スキル」

 ゼミの活動拠点は、大学キャンパス内ではなく、西川口の商店街の中にある「コ・ラボ西川口」。ここは早稲田大学と地域の人々、行政等の協働によって運営される「まちづくり社会実験拠点」であり、「早田ゼミ分室」でもあります。
 西川口は、駅前でも空き店舗が目立ち、かつての活気を失ってしまった地域。早田ゼミでは、ここをケーススタディ地区として調査研究をしながら、実際に「街の再生」に取り組んでいるのです。

 「コ・ラボ西川口」の中では、学生が2~3人ずつのチームに分かれ、街の人たちの話を聞きに出かける準備をしていました。「社会調査の授業」と聞いていましたが、先生は学生に資料やICレコーダーを渡すとそれだけで学生たちは勝手に(?)外に飛び出していきます。
 「学生は、実際に街に出かけていって人の話を聞き、まちづくりのために何ができるか、提案をまとめます。提案力を鍛えるプログラムですが、アポイントの取り方、コミュニケーションの取り方といった、ソーシャル・スキルの勉強でもあります」と先生。

 「ゼミに入ったら、いきなりフィールドワークに行けと言われてびっくりした」と言うのは4年生の石塚 高秋さん。「最初はアポイントの取り方もわからず、どうしたらいいかわからなくなって先生に電話したんです。そしたら電話で延々と教えてくれた。とにかく現場には放り出されるけど(笑)、面倒見のいい先生だから、何とかやってこれました」。

4年・石塚 高秋さん

「コ・ラボ西川口」は、ガラス張りの明るい事務所。

フィールドで学ぶことの魅力

 早田ゼミは、2年生から参加可能。2~3年次は現場で経験と知識を蓄え、4年次ではそれに論理的な分析を加えた卒業論文に取り組みます。
 4年生の野口 琢生さんは、このゼミの魅力について「一番よかったと思うのは、地域の人たちの声を聞けたこと」と言います。「人との人とのつながりを大切にし、地域をよくしていこうとしている人たちに出会えたことは貴重な体験でした。最初は建築を勉強したいと思っていたんですが、今は、ものを作ることより、人間のいごこちのよさや暮らしやすさを探求したいと思っています」

 3年生の江田 佳那子さんは「本で勉強することって、研究されてから時間がたっていることが多いじゃないですか。現場で人の声を聞くと、本当にリアルタイムの問題がわかるのが面白いですね。話が広がりすぎて、まとめるのは大変ですけど(笑)」

 「現場主義」がモットーの早田ゼミですが、フィールドは西川口だけではありません。合宿では海外の大学と交流するのが慣例。「今年はハワイに行きたかったから(笑)、自分たちでハワイ大学に交渉して合同ゼミを実現させました」と野口さん。ここでも、現場で培ったソーシャル・スキルが発揮されたようです。

4年・野口 琢生さん

3年・江田 佳那子さん

地域とつながる、世界とつながる

 合宿だけでなく、インターネット回線でつないで海外の学生とディスカッションする機会も多いとか。海外の「まちづくり」への取り組みや歴史を知ることで、日本独自の特性も見えてくるそうです。
 単なる勉強を超え、実際に海外の学生とのコラボイベントを企画したこともありました。日本と中国の大学生がそれぞれ好きなお菓子を送りあい、ネット回線を使ったテレビ会議のようなシステムで、街の人と一緒に品評会を開いたのです。一位に輝いたお菓子はまだ日本では発売されていないもの。これを今、地域の商店会、婦人会らと連携して、日本で最初に販売しようと交渉中なのだそう。

 学生の研究活動が、地域の特産物を生み出す日も近いかも・・・?
 まちなかのサテライト拠点で、市民の協働で価値創出できるコミュニティという視点で「居住環境」の研究をしているゼミ生たちでした。

西川口で「ワセダ」として活動する自覚と責任を意識するため、身なりにも気を使います。街の人々も「早稲田大学が来るのは街のイメージアップになる」「学生の柔軟な発想に期待している」と、ゼミの活動に期待を寄せているそうです。

西川口が世界とつながる大スクリーン。

先生からのメッセージ

 大学は、専門知識を学ぶところと思っているかもしれない。それだけではなく、大学の4年間で社会人基礎力をつけほしい。
 「矛」=専門で勝負するためには、「盾」=主専攻を補強し、応用・活用するための知が必要である。
 早稲田大学は、知識を得るだけでなく「活用できる」人材を育てることをミッションとしている。その理念からできたしくみが「全学共通副専攻制度」だ。オープン教育センターでは学部・大学院生が垣根を越えて第二の知を学ぶことができる。それらを活用して、ぜひしっかりした「盾」を自分のものにしていってほしい。

このゼミを目指すキミに先生おすすめの本

風土――人間学的考察――』和辻 哲郎/著 (岩波文庫)

 世界の民俗・文化・社会の特質を、風土(モンスーン、砂漠、牧場の3つの型)から読み説いた、比較文化論の名著。
 アジアモンスーンの日本は、どこにも神様がいて、人々は自分の好きな神様をあがめ、願をかけ、失敗すれば謝って許してもらう。そんな日本と、厳しい一神教の砂漠の国とは何が違うのか?
 高校生が読んでもわかりやすい内容で、現代社会や公民の教科書ではわからない「日本らしさ」の、ベーシックな部分が理解できると思う。