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「ゲーム理論」と「計量分析」で、国際政治問題の解決への道筋を探る 栗崎ゼミ

ゼミ紹介

「ゲーム理論」と「計量分析」で、国際政治問題の解決への道筋を探る 栗崎ゼミ

公開日:2015/11/13

国際政治の中でも、国際紛争や国家間競争といった主に安全保障に係わる分野について、その原因やメカニズムを探ると共に、解決策について考察していくゼミです。考察の過程では、「ゲーム理論」や「データ分析」という数学的なアプローチを用いる点に、このゼミの特徴があります。ゼミ活動の軸は「研究」で、3年の時からゼミ生が各自関心のあるテーマを設定。2年間で論文の完成を目指すほか、4年の3月末に北米で開催される国際学会で研究の成果を発表することをひとつの目標としています。

研究室DATA

栗崎 周平 准教授(政治経済学部)
政治学演習α
所在地:早稲田キャンパス3号館

http://www.f.waseda.jp/kurizaki/

ゼミ活動の中心はあくまで「研究」、先生との共同研究も可能

 国際政治学の中でも主に「国際安全保障」の分野について研究する栗崎周平先生のゼミ。安全保障関連法案の成立を巡って、2015年は日本国中でさまざまな意見が交わされました。高校生の中にも、国際政治や安全保障について高い関心を持っている人は増えているのではないでしょうか。

 「かみ砕いて説明すると、このゼミでは『戦争の原因を分析して、平和への条件を探し出そう』ということをやっています」と栗崎先生。そして、分析をしたり条件を探し出していくために欠かせないのが、「ゲーム理論」と「データ分析」なのだそうです。

 「ゲーム理論」とは、複数のプレーヤーが参加するゲームで、参加者がどう考えてどのように行動するのかを予測・分析するもので、経済学の分野などでよく使われています。「たとえば、『みんなが理解し合えば、戦争はなくなるはず』という考え方がありますね。ゲーム理論を使えば、『どういう条件のもとなら、お互いの理解が深まって戦争を回避できるか』を理論的に導き出せます」。

 また、「日中関係は悪化しているが、経済活動など市民レベルでの交流は活発だ」という話を聞くことがあります。「そうした市民の交流が戦争回避につながるかもしれないと考えたときに、実際の貿易量や人の交流の頻度と、戦争の発生確率の変化っていうのを統計的に見ていくこと(データ分析)で、その発想が正しいのかどうか科学的に考察することが可能です」。

 つまり、「ゲーム理論」や「データ分析」といった手法を用いることで、国際政治の問題を理論的・実証的に研究できるというわけです。ちなみに、数学の知識は多少必要だそうですが、栗崎先生によると「中学校レベル」とのこと。数学があまり得意でないという人も、心配は要らないようです。

 そんな栗崎ゼミの特徴をうかがうと、「『勉強』ではなく『研究』をする場所だという点ですね」とのこと。どういう意味なのでしょうか? 「ゼミの活動の中心が、『研究』にあるということです。このゼミでは、専門書をみんなで読むといったインプットの活動は行いません。ゼミ生は、自分の関心のあるテーマを独自に研究してもいいし、私が進めているいくつかのプロジェクトに共同研究者として参画する方法もあります」(栗崎先生)。

 海外の文献を数多く読み込んだりたくさんのデータを集めて分析したりと、ゼミ活動はかなり本格的でエキサイティングです。中には自分の研究、栗崎先生との共同研究の両方に参加しているゼミ生もいるそうです。

栗崎ゼミでは、3年と4年の2年間を通して、ひとつのテーマを深く研究するゼミ生が多いとのこと。この時間は3年生のゼミですが、時間の都合がつく4年生も複数参加。3年生のゼミ発表を真剣に聞きながら、ときには資料探しに関するアドバイスもしていました。

ゼミ生の発表中は、必ず教室の後ろの席でプレゼンを聞くという栗崎先生。発表を優しくも厳しい目で見守りながら、研究の進め方や内容で気になる箇所や不足している部分があると、「それはどういうことなの?」と鋭く指摘します。

ゼミのプレゼン資料は英語で作成、海外での学会発表も目標に

 さて、秋学期がスタートして2回目のゼミ、この日はゼミ生が各自取り組んでいる研究について、夏休みにどの程度進んだか、進捗状況を発表しました。ひとくちに「国際政治」といっても、具体的なテーマはさまざまです。

 たとえば、トップバッターで発表した徳田誠太郎さんは、「三国間における抑止力(三角抑止)」が研究のテーマ。「ある国に対して軍事力を行使することが、別の国に対する抑止につながるということを研究しています。具体的な国名を挙げて説明すると、もし今中国がフィリピンに対して武力を行使した場合、それが日本に対しての抑止になるのではないかと、ということです」。

 こうした例は、実際にいくつもあるそうです。「ただ、データを使った実証的な研究はまだ実績がないので、私がぜひやってみたいと考えています」(徳田さん)。現在は、どういうデータを使って分析するのがよいか悩んでいるところで、この日の発表のときに、栗崎先生と4年のゼミ生から当たるべき論文などのアドバイスを受けていました。

 その他のゼミ生の研究テーマとしては、「大国からの軍事援助や軍事同盟が、核兵器保有の決定にどんな影響を及ぼすか」、「沿岸警備隊を動員することで、領土・領海紛争のリスクが減るかどうか」など。ゼミ生によって、研究の進み具合はそれぞれでしたが、いずれも先行研究などを参考にしつつも独自の視点でアプローチしようと前向きに取り組んでいる姿が印象的でした。

 ところで、ゼミ生が準備してきた発表の資料は、すべて英語! さらに、この日の発表自体は日本語でしたが、実は口頭での説明も英語で行う場合がけっこうあるのだとか。「私が強制しているわけでは決してなく、自主的に英語でやっているんですよ」と栗崎先生。その理由は、「具体的な目標を与えているからではないでしょうか」。

 栗崎ゼミには、この分野で活躍する海外のトップ研究者が直接指導に訪れると言います。「昨年は、プリンストン大学やスタンフォード大学、コロンビア大学の先生をゼミに招き、指導にあたってもらいました」。また、4年生の3月には研究の成果を国際学会で発表することを目標の一つとして掲げています。「今度の3月には、4年生5人が選ばれて国際学会に参加します」。なるほど、それはモチベーションも上がりそうです。

 栗崎先生によると、日本では理論的・実証的に国際政治を研究できる大学はまだ非常に少ないとのこと。しかし、世界的にはこの分野の重要度は増していて、ヨーロッパ諸国やアジアのトップ大学でも国際政治は実証研究の方向にシフトしているのだそうです。「でも、このゼミで頑張って研究すれば、世界のトップを目指せると考えています。日本から、このゼミから、新しい国際政治研究を一緒に世界に発信していきましょう!」。

発表は、スライドで説明することが多いそうですが、必要に応じてホワイトボードを用いることも。ホワイトボードにゲーム理論の展開に欠かせない概略図を描きながら、自分がどのように進めたいか、現状の問題は何なのかを説明する関口雅啓さん。

ゼミは、机と椅子が可動式であるCTLT教室で実施。グループワークやディスカッションが活発にできると評判の教室です。

「内戦時に、なぜテロリストは市民を攻撃するのか」というテーマで研究を進めている佐藤和輝さん。発表の最後には、「地理情報と先行研究のデータを組み合わせることで、再来週あたりにはある程度の分析を発表できます」と宣言して、栗崎先生からはお褒めの言葉が!

先生からのメッセージ

 日本の高校生は、勉強や研究で世界のトップを獲りに行ける能力を十分に備えていると思っています。ただ、大学に入ると一休みしてしまって、4年間経つと国際的な競争力で世界に負けてしまうことが、特に文系では非常に多いのが現状です。トップを狙うのは必ずしも国際政治学の分野でなくてもよいのですが、もしこのゼミに来るのであれば、みなさんがトップを獲るために頑張れるように、環境を整えることが私の責任だと思っています。せっかく素晴らしい能力を持っているのだから、一緒にトップを獲りに行きましょう!

先輩からのメッセージ

 日本では、安全保障論を議論する場合に感情論に陥りがちですが、このゼミではゲーム理論や統計データを使って、客観的な目線に立って議論ができます。そこに面白味を感じて、このゼミに入りました。栗崎先生は、ゼミ中は厳しいこともおっしゃいますが、普段は優しくてとてもユーモアのある方です。将来の夢はいくつかあるのですが、このゼミでの研究を生かして、たとえば日本の安全保障の方向性を決定するような仕事に就けたらと考えています。

3年・徳田 誠太郎さん

先輩からのメッセージ

 2年のときに栗崎先生の授業で「実証研究」に興味を持ったのが、ゼミに入ったきっかけです。現在は、どんな条件のもとで同盟が破棄されるのかという「同盟のreliability(信頼性)」について研究しています。卒業後は、大学院で「開発経済学」を学ぶ予定で、引き続き、実証研究の手法を使ってこうと考えています。「研究」というと難しそうですが、「知りたいことを知る」手段でとても楽しいものです。大学では、その楽しさをぜひ体験して欲しいですね。

4年・柏木 柚香さん

このゼミを目指すキミに先生おすすめの本と音楽

はだしのゲン』中沢 啓治・著(汐文社)

 平和の尊さを思い戦争の悲惨さに対する怒りをもつ心を養って下さい。これが国際政治学という学問の原点です。他に多くの書物がありますが、被害者と加害者という双方の当事者であった日本人の立場が描かれています。

Do They Know It's Christmas?』エチオピア飢饉を救うためにバンド・エイドが1984年に発表した楽曲

 「グローバル・イシューを自分の問題として考える心を持ってほしい」ということです。

ヤバい経済学』スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー・著(東洋経済新報社)

 常識や思い込みの本当の姿を見破るためにはデータ分析が有効です。国際政治のデータ研究にも共通する社会科学(経済学や政治学や社会学など)における実証分析の醍醐味が見て取れます。

宇宙137億年解読―コンピューターで探る歴史と進化』吉田直紀・著(東京大学出版会)

 宇宙の始まり、宇宙の最初の星の正体をコンピュータ・シミュレーションで再現することで「最初の星は青色だった!」ことを解き明かす画期的な研究の解説です。このような科学(サイエンス)における知的興奮を、国際政治研究でも味わえます。