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ラテンアメリカの研究を通じて、日本社会についても考える 畑ゼミ

ゼミ紹介

ラテンアメリカの研究を通じて、日本社会についても考える 畑ゼミ

公開日:2012/12/14

現代のラテンアメリカ地域が抱える問題を、 歴史や文化、政治、経済、 国際問題などさまざまな方向から 探っていくゼミです。また、ラテンアメリカを通して、日本社会についても改めて考えます。前期はテキストをベースに、最近のラテンアメリカ各国の動向などを習得。理解を深めたらそこから自らの研究テーマを見つけ出し、3年生は4大学合同ゼミでの発表に向けて、4年生は卒業論文という形で研究を進めていきます。

研究室DATA

畑 惠子 教授(社会科学部 ラテンアメリカ地域研究)
所在地:早稲田キャンパス14号館

多くの民族と人種による「多様性」がラテンアメリカの魅力

 「ラテンアメリカ」と聞いて、何を思い浮かべますか? サッカー、それともサンバ? マチュピチュやイグアスの滝といった世界遺産でしょうか? そもそもラテンアメリカとは、アメリカ大陸のメキシコからアルゼンチンまでに位置する国々と、ドミニカ共和国やキューバなどカリブ海の島国から構成されている地域のこと。日本からいちばん近いメキシコでも、到着まで最短で15時間! 距離的にも遠く、高校生にとってはそれほど馴染みのある場所ではないかもしれませんね。

 では、そんなラテンアメリカについて学び、研究するおもしろさや意味、そしてラテンアメリカ自体の魅力はどこにあるのでしょうか。
 「まず、日本とはまったく違う社会だということですね。日本に暮らしていると、日本の生活こそが普通と考えがちですが、ラテンアメリカを見るとびっくりします。日本とは、生活も考え方も対照的。そこがおもしろいんじゃないでしょうか」と畑先生。しかし、ただかけ離れているだけでなく、実は抱えている問題には共通する部分も多いのだそうです。

「日本と同じ問題が、ラテンアメリカではもっと極端な形で表面化していることがよくあります。 たとえば、日本でも非正規雇用や貧困の問題が注目されていますが、ラテンアメリカでくらべものにならないほど貧富の格差が大きい」。そのため、ラテンアメリカの問題を調べていくと、日本だけを見ていてはわからない問題に気付けることもあるのだとか。なるほど、ラテンアメリカを通して、日本社会を知ることができるんですね。

 そして、「多様性」もラテンアメリカの大きな魅力。「もともと先住民がいて、スペイン人が征服して、国によってはアフリカから数多くの奴隷が連れて来られて、しかも、近代になってからの新移民にはアジア系の人も多い。それぞれの民族、人種の文化が混ざり合って、ラテンアメリカは独特の文化を創り出しています」。さまざまな民族や人種がいるところには、混乱や摩擦がつきものですが、ラテンアメリカの場合には、民族間の対立が比較的少ないというのも特徴だそうです。「そうした対立がうまく隠されているという面もありますが、文化や人の融合が強固なところが、ラテンアメリカのよさになっているんじゃないでしょうか」。

4大学での合同ゼミまであと1カ月というこの日、予行演習も兼ねた発表の様子です。重要なキーワードはホワイトボードに書くなど、効果的なプレゼンテーションのために試行錯誤中。

問題意識を持って、自分なりの研究テーマを見つける

 さて、畑ゼミでは、毎年11月に津田塾、獨協、慶應義塾の各大学のラテンアメリカのゼミと、合同ゼミを実施しています。合同ゼミで発表を行うのは3年のゼミ生全員。取材に伺った日は、辻大喜さんが合同ゼミの練習も兼ねた中間発表をしていました。

 テーマは、ブラジルにとってスポーツがどんな役割を果たしてきたのかを検証した「ブラジルの政策とスポーツの関係」。発表が終わると、内容をさらにブラッシュアップするために、畑先生とゼミ生が感想や質問を投げかけます。
 「サッカー選手の欧米への移籍金は、具体的な金額例があるともっと興味を引くのでは?」「合同ゼミでは、思いもかけない質問が出てくるから、準備はしっかりしたほうがいいよ」と、4年生からは経験を踏まえた意見も。また、「話す内容をすべて原稿にします」と今後の方針を語る辻さんには、畑先生が「読んでるだけではつまらないから、今日のようにメモを見て話したほうがいいのでは?」とアドバイス。

 畑先生によると、合同ゼミは発表の仕方や質疑応答の訓練の場でもあるそうです。「研究は内容がもちろん大切ですが、内輪でやっていると『なあなあ』になることも。他大学のゼミ生の前で緊張感を持って発表したり意見を言ったりすることには、とても意義があります」。

 一方、4年生のほとんどは、合同ゼミのときに決めたテーマをより深く掘り下げて研究を進め、卒業論文を完成させるのが最終目標です。畑ゼミでは、研究テーマは個人の興味のままに決めて構いません。今年の4年生が選んだテーマは、「ブラジルの大豆産業の発展が環境に与える影響」や「ラテンアメリカの水道民営化による“水戦争”」「チリの初等教育について」など。変わったところでは、ラテンアメリカを代表する文学者ガルシア・マルケスの『百年の孤独』と、世界各国の文学作品や映画との相違点を研究している学生もいるそうです。取り上げる国も、研究の切り口も本当に多彩です。

 「なぜそのテーマを選んだのか、そこに明確な問題意識さえあれば、どんなことでも研究テーマとして成立しますよ」と畑先生。そして、それぞれがやはり日本の問題にも関わってくるのだとか。「たとえば、日本では大豆をほぼ輸入に頼っていて、輸入先の第2位がブラジルです。つまり、ブラジルの大豆産業のゆくえは、日本にも大きく影響を及ぼすということです」。

 「ラテンアメリカの国々は、どこも問題が山積みだし、日本から見ると暴力や犯罪も多くて、とんでもないところと思う人もいるでしょう。でも、意外なほどみんな自分の国に誇りを持っていて、明るくて楽しく前向きです。ここも日本と違うところで、日本が失ってしまったものがラテンアメリカにはあるとも言えます」。ということは、ラテンアメリカを研究することで、ひょっとすると日本を元気にするヒントが見つかるかもしれないかもしれませんね。

「今後ブラジルのスポーツはどうなっていくと予測しますか?」「W杯とオリンピックによるインフラ投資がスポーツにもよい影響を及ぼし、さらに発展すると考えます」。発表後は、必ず全員が1つ以上質問をするのが畑ゼミの決まり。

「ペレの活躍前は、サッカー選手は白人中心だった?」「ペレの活躍はいつ頃?」。この日の質疑応答中には、しばしサッカーの話題で盛り上がりました。

先生からのメッセージ

 私自身の話をすると、学生時代にオスカー・ルイスという文化人類学者がメキシコやプエルトリコの貧困層について書いた本をたまたま読んで、そこからラテンアメリカに魅かれていきました。それまでは、何を研究すればいいか悩んでいたんですけど(笑)。もし、ラテンアメリカで気になることやモノ――遺跡でもサッカーでも何でもいいので――があったら、少し調べてみてください。調べればもっとおもしろいことが見つかって、そんな風に興味がつながっていくのではないかと思います。また、ラテンアメリカに限らず、日本以外の他の地域に関心を持つことはとても大切です。モノの見方や考え方に広がりが出ますよ。

先輩からのメッセージ

 アメリカ留学中にブラジル人の友だちができたことで、ラテンアメリカに興味を持ちました。 なぜか、自分に近いものを感じたんです(笑)。合同ゼミでの研究テーマは、ペルーのフジモリ政権に関する日米の報道の違いです。自分のやりたいことを勉強できるゼミなので、ラテンアメリカに少しでも関心があったら、ぜひ畑ゼミに入って、ひとつのテーマをとことん突き詰めてみてください!

3年・五十君 侑希子さん

先輩からのメッセージ

 卒論では、「日系企業のブラジルへの進出」について研究しています。ブラジルには鉄鉱石などの資源が豊富で、権益を確保しようと日本の商社の動きが活発なんです。現在進行形の内容なので、ネットなども駆使してできるだけ新鮮な情報でまとめようと頑張っています。調べているうちに、ビジネスの流れや企業の考え方が見えてくるのもおもしろいですよ。

4年・佐々木 貴悠さん

このゼミを目指すキミに先生おすすめの本、映画

ラテンアメリカ世界のことばと文化』畑恵子、山崎眞次・編著 (成文堂)

早稲田大学の先生が中心となってまとめた本です。「ラテンアメリカって、そもそも何?」という人は、まずこの本を読んでみてはいかがでしょうか。ラテンアメリカに属する国や地域について、主に言語と文化、暮らしの面から紹介しています。ひとくちに「ラテンアメリカ」と言っても、いろいろあるんだということがわかってもらえたらうれしいですね。

ラテンアメリカ 出会いのかたち』清水透、横山和加子、大久保教宏・編著 (慶應義塾大学出版会)

歴史、文化、文学、政治、経済など各分野でラテンアメリカを研究している 慶應義塾大学の先生方 14人が、ラテンアメリカの魅力や研究を始めた動機、研究テーマを選んだ理由などをそれぞれの言葉で語っています。 「なぜラテンアメリカを研究するのか?」という、皆さんの素朴な疑問への答えが見つかる(かもしれない)一冊です。

モーターサイクル・ダイアリーズ』(映画)

キューバ革命で大きな役割を果たした革命家チェ・ゲバラが、学生時代に南米各地を回った時の旅行記をもとに作られた2004年の映画です。ゲバラが、旅をしながらラテンアメリカの抱える問題に気づいていく過程がわかります。 ロードムービーで映像的にもおもしろいので、ゲバラもキューバ革命も知らないという人でも楽しめると思いますよ。