NO.938 Jun.28,2001
学ぶことが、面白い! 早稲田の授業を変える新しい試み「テーマカレッジ」の今


テーマカレッジ授業風景  今年3月発行の『第19回学生生活調査報告書』によると、早大生の84%が授業に興味があるという。2年前の調査では78%だから、その間に、授業に対する関心が向上したことが分かる。その理由は、「教育のオープン化」と呼ばれる一連の試み(下記年表参照)。単位互換協定やオープン科目によって早大生の選択肢が多様化するとともに一方で、教材のデジタル化や遠隔講義等の教授方法の工夫が推進されて授業が変わり、学習刺激を受ける機会が増えたのだ。現在の早大生には「当然」の教育環境も、少し前の卒業生から見れば「ウソぉ、ズルイ! いいなぁ」と声が上がるだろう。しかし、84%という数字はあくまで通過点。学生の不満をなくし、「もっと!」の声に応えたい…と、今年、導入されたのが、「テーマカレッジ」と「インターンシップ」。今回は、早稲田だけの新しい制度「テーマカレッジ」を紹介する。

テーマカレッジパンフレット表紙 ◆「テーマカレッジ」って何?

 「テーマカレッジ」とは、あるテーマに関心のある教員や学生が、自由に集まり、ゼミに参加したり、講義を受けたり、時には合宿やフィールドワークに出かけたりする学習の場。所属学部の枠にとらわれず、学際的・学部横断的に学ぶことの面白さを知ってもらうために、今年度からスタートした。徹底した少人数教育で、全学部の一年生が対象(定員に空きがあれば、二年生以上もOK!)。「英語『で』学ぶ」「アート」「ビジュアルサイエンス」「ユネスコ」等、多彩で少し厳しいプログラムでは、新しい知識が得られる他、大学の学習・研究方法の基礎が学べる。
 参加学生の向学心は強く、修得単位の卒業単位認定の可否に関わらず(単位認定は各学部の基準による)、演習を欠席する学生はほとんどいない。さらに、TA(ティーチング・アシスタント)によるサブゼミ、学生自身が企画する自主ゼミや長時間の自習なども意欲的にこなし、「ついていくのが大変だが、自分のことについて考えさせてくれる」「高校時代にはなかった授業。自分の価値観が存分にぶつけられる」と学生の評価も高い。そんなテーマカレッジとは、一体どんなところか? 「二十世紀文化研究」に所属する大嶋敏也さん(二文1年)と中桐基善さん(一文1年)に話を聞いた。


大嶋敏也さん(左)と中桐基善さん(右) ◆先生が身近! 押しつけられた勉強じゃないのがスゴクいい

 「新しモノ好き。合格発表後に送付された冊子を見て、今年からというところに新鮮味を感じた」「学部を超えたテーマに自分の勉強の分野とは違う経験ができるかもと興味を持った」のがきっかけ。そして、説明会で実際に先生と話したことが、2人の運命を決めた。「熱意に打たれたのが最大の理由。大学の先生は固くて遠い存在だと思っていたのが、身近に感じられ、面白そうって思った」
 テーマカレッジ「二十世紀文化研究」で彼らが所属する演習のテーマは「アヴァンギャルドの時代」。「週1回の演習は先生の著作を基にディスカッションをします。先生が出すお題を皆で議論。最後は先生がまとめてくれますが、それが僕らが頭の中身を出しきって干からびたところに、水をくれるというか光をあてる感じで、すごいためになる。ある答えを教える、教えられるというのではなくて、高校時代より遥かに面白い」
 「そのうち、自分たちでもできるんだって気持ちがわいてきて、皆で知識を共有して何かを作り出そうって動きが生まれました」「GWのテーマカレッジ全体の合宿で各演習の先生方を囲んで、いろいろ話したんですよ。それを契機に、僕らが発起人になってサブゼミをやろうと言い出して。週1回やってます」。サブゼミでは、前半45分が先生の著作を基にプレゼンと討論、後半は各自が企画・提案して討論する。勉強方法も内容も学生が作り上げている。
 「意欲ある人が多くて物凄く触発される。全学部の人がいるから特色ある発言も出て、何か考えるにも多方面から光を当てることができる。押しつけられた勉強じゃないから、やらされている感じもしない。文科系は暇って言われるけど、寝不足の毎日」「知らないことを知りたい。やりたいことよりも、新しいことに挑戦する気分。やるべきことが多くて時間に追われるけど、振り返って『昨日は楽しかった』って思えるから、全然苦痛じゃない。必要悪としてのプレッシャーですね。今後は何か目に見える形を作り出したい」と、モチベーションは非常に高い。「やって良かったっすよ〜」、口を揃えて大絶賛だ。


オープン教育センターパンフレット表紙 ◆「知の新世界」へ旅立とう!

 今度は教える側、テーマカレッジの演習を担当しているオープン教育センター教務主任・塚原史法学部教授にも話を聞いた。
 「テーマカレッジは2種類の横断性を切り口として、大学教育の新しい可能性を追求する試み。現代社会の多様な価値観に対応した学際的なテーマの横断性と、それらに新鮮な関心を持つ意欲的な学生たちの学部を越えた横断性が、テーマカレッジを支えています。少人数の学生と教員が固有名詞で語りあえる環境を通じ、自己表現力や説得力、相手の反論に耳を傾ける度量等、新時代のリーダーに必要な能力が身につく。テーマカレッジは多人数・一方通行型から少人数・双方向型への大学教育の画期的なシフトを実践する企てであり、早稲田のような巨大私学でもマスプロ(大量生産)授業を越える教育の場が実現できることをもっと多くの人に知ってほしい」
 本学ではこれまで基本的に学部単位で授業が行われ、複数学部の学生が席を並べる教室は例外的だった。しかし、「私の担当する演習では全学部から学生が参加。そのため、発想が実にバラエティーに富んでいるのはもちろんですが、さらに重要なのは彼らが共通のテーマについて共に学ぶことで"早稲田"という知的コミュニティーの一員となったという実感を共有し始めたこと。とりわけ新入生諸君が多様な個性との出会いを通じて、1+1を3にも4にもしていく場面が生まれることが、テーマカレッジの面白さではないでしょうか」。
 まだ始まったばかりの試みなので、問題もある。例えば、テーマカレッジは複数の演習と関連科目から構成されるが、現状では2つ以上の演習を同時に履修することは難しく、関連科目の数も充分ではない。また、新入生を優先することから、2年生以上の登録に制限が生じることも。「これらの問題は各学部でオープン科目の単位認定枠を広げたり、テーマカレッジを担当する教員の数を増やしたりすることで徐々に解決に向かうでしょう」
 「産声をあげたばかりのテーマカレッジですが、近い将来には『…学部卒業』と並んで『…テーマカレッジ修了』の資格が取れるようにすれば、米国の大学のメジャー(主専攻)とサブメジャー(副専攻)に近いシステムが、早稲田に実現することになる。日本のどの大学よりも自由な校風と言われる早稲田大学の伝統を現代に生かそうとしているのが、テーマカレッジをはじめとするオープン教育センターの仕事です。学生の皆さんからの積極的な意見や提案、質問などを待っています。いつでも声をかけてください!」  集まり散じて人は変われど、仰ぐは同じき理想の光♪ 変わり続ける早稲田大学の授業。皆さんの声はこちらへどうぞ。

■オープン教育センター
URLhttp://www.waseda.jp/open/
E-mailopen@list.waseda.ac.jp

■「教育のオープン化」の歩み

[1997年度]
  • 同志社大学と日本初の全学部学生を対象とした大学間の学生交流協定を締結
  • 早稲田大学情報化推進プログラム第I期スタート(新入生全員への電子メールIDの発行開始)
[1998年度]
  • 全学部オープン科目・全学共通科目の設置
[1999年度]
  • 日本貿易振興会との学術交流協定によるインターンシップ生派遣開始
[2000年度]
  • 早稲田大学情報化推進プログラム第II期スタート
  • 日本女子大学、学習院女子大学との学生交流、東京女子医科大学との学術交流開始
  • 「オープン教育センター」発足
[2001年度]
  • 「テーマカレッジ」発足
  • 「インターンシップ」科目設置
  • 「学習院大学・学習院女子大学・日本女子大学・立教大学」(f−campus〜5大学間学生交流協定)、「武蔵野美術大学」(学術交流協定)、「東京女子医科大学」との間で学生交流開始
  • 京都42大学・短期大学との単位互換包括協定締結

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