NO.873 Jun.24,1999
Global Information and Telecommunication Institute,Waseda University
(略称GITI)

国際情報通信研究センター
〜来年4月、大学院国際情報通信研究科の開設を目指して〜


 一九九八年六月、国際情報通信研究センター(所長・富永英義理工学部教授)が発足し、現在これを母体とした大学院国際情報通信研究科を二〇〇〇年四月に開設する予定で準備が進められている。本学はアジア太平洋地域を主たる対象として、同年四月に発足した大学院アジア太平洋研究科によってヒューマン・ネットワークを形成し、大学院国際情報通信研究科によってメディア・ネットワークを展開することで、来るべき二十一世紀には、アジア・太平洋地域の教育研究の中心的役割を担うことになるであろう。
 さて、この特集では国際情報通信研究センターにスポットをあて、寺島信義同センター教授・大学院国際情報通信研究科開設準備委員長にインタビューし、その実像に迫ってみた。

1.地球規模の連携を目指して

寺島信義国際情報通信研究センター教授 国際情報通信研究センター(以下GITI)は、アジア・太平洋地域の中核的研究機関としての役割を果たすと共に、限りなく国際協力機関に近い位置付けとし、研究・教育に携わる人材は日本のみならず諸外国から広く招聘している。「漢陽大学、清華大学、ビクトリア大学、チリ大学などのアジアを中心とした国内外の大学と連携した教育研究環境を作り、情報通信を活用して、グローバルスタンダード(世界水準)、つまり世界に通用する研究活動を行うのが狙いです」と寺島教授。
 当面、西早稲田キャンパス二十九−七号館にセンターの本拠地を置き、センターを母体にした大学院研究科の設置を目指している。最終的には主たる機能を本庄キャンパスにおいて展開するという。

2.GITIの活動

国際情報通信研究センターの研究領域 GITIでは、情報通信システム、情報通信マルチメディア、情報通信社会科学の三つの研究部門を設置。情報通信を軸とした学際的研究課題を設け、国内外の研究・教育機関と連携して国際共同研究を行う。併せて、情報通信を通じて国際社会に貢献しうる人材の育成を図り、情報化社会の発展に寄与することを狙いとしている。
 研究活動については、まず第一に目指しているのは「情報、通信データの圧縮技術の世界標準化」だという。具体的な取り組みとして、国際シンポジウムの開催と、世界の大学や研究機関との連携を図ることが挙げられる。今年秋にはその成果が発表されることだろう。
教育活動では既存研究科との連携による大学院教育、国際共同によるオンライン大学院機能の提供による国際情報通信研究科の設置を目指している。また、最新のマルチメディア技術の習得を狙いとして、公開科目の「映像空間制作演習」を設置しており、今後徐々に教育活動も広がりを見せていくだろう。

専任教員・助手による研究(1999.6.10現在)
研究教員名
次世代情報ネットワークのためのリソース管理技法の確立浦野義頼(教授)
通信放送統合網の研究田中良明(教授)
マルチメディアシステムに関する研究寺島信義(教授)
モバイル環境赤外線通信インターフェースに関する研究松本充司(教授)
マルチメディア符号化・マルチメディア表現亀山渉 (助教授)
動画像符号トランスコーダの研究笠井裕之(助手)
情報通信分野における知的財産権・標準化に関する研究平嶋竜太(助手)
マルチキャスト通信網構成に関する研究三好匠(助手)
討論・研究会
日程内容
1998年4月〜ビクトリア大学(ニュージーランド)、カーネギーメロン大学、ハワイ大学(米国)とのオンライン仮想教育システムの共同研究
1998年 6月 3日〜5日地域情報化と国際協同に関するシンポジウム
1998年10月16日〜 ベトナム社会主義共和国との遠隔授業システムプロジェクト
1998年11月6日、1999年4月20日立体映像フォーラム
1998年11月〜12月バンドン工科大学(インドネシア)との遠隔教育共同実験

3.大学院構想の背景

 インターネットに代表される情報通信サービスの進展により、政治、経済は元より、社会活動に至るまで、グローバル化、ボーダレス化が進んでいる。その結果情報通信技術者のみならず、情報通信技術を活用したマルチメディアコンテンツの制作者、標準化技術者等の需要増をもたらし、情報通信分野の人材育成が社会的に急務となっている。特にアジア地域においてはこの分野の人材が不足していることから、専門的知識を持つ職業人の育成が強く求められている。このような(1)情報通信分野の専門家育成の必要性、(2)教育のグローバル化、ボーダレス化による競争の激化現象、(3)新しいビジネスチャンスの到来に対して、大学がなすべきことは、情報通信分野を従来の工学系・人文系・社会科学系等の区分で捉えるだけではなく、横断的な視点から情報通信分野を捉え、情報通信ネットワークを活用した、創造性豊かなグローバルスタンダードの教育研究を展開することである。殊にアジア地域の留学生や社会人を受け入れ、国際的視野を持ち、情報通信技術のみならず、マルチメディアコンテンツ、標準化等の専門能力を持つ人材の育成が課題となっている。このような状況を踏まえて本学では大学院国際情報通信研究科の設置申請の準備を進めていると寺島教授は語る。 各コースの教育研究内容
コース名特徴と教育研究内容
情報通信システムコース情報通信システムを構成する要素技術、すなわち、情報通信ネットワーク、ネットワーク・アーキテクチャ、無線・衛星通信方式、ディジタル放送方式、マルチメディア情報通信システム等について
マルチメディアサイエンスコースマルチメディアを対象としたエンジニアリングとアートの視点から、メディア芸術、サイバースペース表現、マルチメディア表現、画像処理、メディアデザイン等について
社会環境コース 情報通信社会科学の分野、特に国際標準化、情報通信経済理論等について

4.大学院国際情報通信研究科とは?

国際情報通信センターを取り巻く環境 「大学院国際情報通信研究科は情報通信システム、マルチメディアサイエンス、社会環境の三つのコースから成る国際情報通信学専攻の一専攻をもって構成し、修士課程と博士課程を同時に開設したいと考えています。独立研究科として新卒はもちろん社会人、留学生など幅広く学生を受け入れます。英語だけでも修了可能です。主専攻と副専攻の二つ以上のコースを選択することになります。この研究科では、情報通信を軸として理工系のみならず、人文科学系の領域も教育研究の対象として、それぞれの領域だけでなく、相互関連も探究することで、新たな知見の創造と教育を行います。グローバルなネットワークを活用して海外の大学との教育環境の連携も考えており、海外の大学の先生に講義をお願いして、ネットワークを介して受講することもできるようになるでしょう」とのこと。
 この研究科は、国際情報通信研究センターを基礎としており、図のように外部企業・研究機関等とも連携して教育研究を行っていくそうだ。
  時代に即し、二十一世紀のグローバルネットワークの中心的存在を目指すGITI。今後の展開が楽しみだ。

【問い合わせ先】国際情報通信研究センター(西早稲田キャンパス29−7号館)
TEL03(5286)9839

特派員:6/7 西早稲田キャンパス19号館5階
体験! GITI公開講座
『映像空間制作演習 第3回「二眼式立体映像:視覚負担・再生位置の確認」』

立体映像の撮影実習  八回にわたって行われる『映像空間制作演習』。三次元デジタルコンテンツ(飛び出す映像)制作に関する初心者向けの公開講座である。文、政経、理工など全学部から参加した受講生は二十人。受講者には、立体映像のショートフィルムやバーチャルリアリティー、視覚実験の刺激等自由なテーマによる作品課題の提出が義務付けられており、テーマが決まらない人にはエジプト古代遺跡の立体復元(資料提供:吉村作治人間科学部教授)等の課題も用意しているそうだ。
 講師・河合隆史先生(人科助手)の案内で着席。二人一組で実習するこの講座。相棒は「以前にGITIの立体映像フォーラムに参加したこともあり、3D映像に興味があって受講しています」という豊島瑠美さん(法3年)。門外漢の私がいきなり第三回に参加して大丈夫かな? と、不安が頭を過り、慌てて資料に目を通す。
 前半は講義「コンテンツ作成にあたって」。制作システムと立体感のコントロール、人間の視覚と映像の立体視の仕組みについて、河合先生の理論的な解説を聞く。当初、専門用語や数式に戸惑いを覚えたが、講義を逐一メモする内におぼろげながら概要が見えてきた。人間が左右の眼で見る映像には微妙な差異があり、立体映像を撮る際はビデオカメラに特殊な機械を付けて両眼の映像を作り出すとのこと。そうすると画像がずれた映像を撮ることができ、それを特殊メガネを掛けて見ると、あら不思議。平面の映像が立体的に見えるのだ。
 被写体の位置関係と立体感の相関関係、数式を用いた立体効果の推定方法等に関する講義を受けた後は、いよいよ実習。何も分からない私は、豊島さんと、もう一人の講師である尾藤峯夫さん(GITI嘱託研究員)の手を借りて、なんとか機材をセッティングした。教室内で撮影した後、豊島さんと二人で機材を抱え、屋外へ。早速、水稲荷神社や甘泉園に行って、講義で得た知識を実践。試行錯誤しながら撮影し、教室に戻って映像を再生。結果は…。
 「実に面白いが、知識を行動で再現するのは難しい」というのが結論。講義と実技が組み合わされているために、受講生は理論と体験の双方を獲得することができるのだろう。表面的な理解が次第に吸収されて自分のものとなっていくのを感じることができた。映像の立体効果(どの程度立体感を出すか)は作り手に委ねられており、体感シアター等で作品全体の立体感を演出する3Dコーディネーターには、立体効果や音声、照明などを総合的にコーディネートすることが求められるという。次回以降はコンピュータグラフィックスを用いた立体映像制作やノンリニア編集技法の実技指導を行う予定。受講生の中から未来の人材が生まれるのかもしれない。(ま)

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