研究最前線

NO.896 Apr.13,2000
松本充司国際情報通信研究センター教授
次世代オンラインラーニング環境の研究開発


 「高等教育のオープン化」が、現在の大学の研究教育活動に大きな影響を与えつつある昨今、本学はネットワークやデジタル技術を活用した教育についてさまざまな実験や試みを実施している。

 松本充司教授の研究「次世代オンラインラーニング環境の研究開発」は、そんな21世紀の教育には欠かせない新技術。NTTラーニングシステムズ株式会社との共同研究で、教育分野へのバーチャルリアリティ応用技術の開発を目的とし、通信・放送技術を融合させた遠隔教育のプロトタイプ化と遠隔講師と受講生の一体感・臨場感のある空間の実現を目指している。

研究室の先生の様子  概要は、遠隔地にある複数(3地点)のバーチャルスタジオをATMメガリンク(7Mbps)とINSネット1500(1.5Mbps)で接続することにより、各地の出演者を1つのバーチャル空間に共存させ、かつCG(コンピュータグラフィックス)や実写映像を教育コンテンツに活用することにより、臨場感のある効果的学習を実現しようとするもの。この試みは過去に例がなく、バーチャルスタジオ技術と通信技術を融合した新しい教育コンテンツの開発に繋がると言う。今回は、教育コンテンツとして岡内三眞文学部教授らの協力により、シルクロードをテーマにしたバーチャルリアリティー遠隔講義の学習効果を検証している。

 1999年も押し迫った12月22日、西早稲田キャンパス19号館5階のマルチメディア研修室で行われた「3元オンラインバーチャル遠隔講義用教材コンテンツ制作実験〜遥かなるシルクロード〜」を取材した。今回の実験は、麻布の本会場と、横須賀、西早稲田の二箇所のサテライト会場を結んで3元中継を行うもの。西早稲田会場では受講者となる学生が待機。画面を通して、麻布から中継される岡内教授の講義を聴講する。

3元中継の画面  モニターに映し出された配信映像の講義では、岡内先生のアップが写されたり、また先生の手元にデジタル教材が表示されたり。画面の切り替えや、CGを多用した教材によって、一般に放送されているテレビ番組のように面白い構成になっている。説明を聞かなければ、それが回線を通じて配信されていることを忘れてしまう程。音声も、映像も思っていたよりも、随分と綺麗なものである。

 講義が一段落し、3会場のメンバーが同時に画面に表示される。CGを使った背景上に、3会場の人物が合成されて質疑応答を繰り広げる。これが、新技術を使ったもので、一見すると、人気番組『電波少年』のオープニングのよう。時間の経過につれて背景の空の色が変わっていくのが実に凝っている。3会場の参加者が、バーチャル空間で一同に会して質疑応答を行う映像を見ていると、あたかも3者が同じ場所にいるかのような錯覚に陥る。モニターの外に目を移した瞬間、青い背景を背にして待機する受講者が目に入り、画面が作られたものであることを再確認することになった。

3元中継の図解  CGの制作や、スタジオ操作が難しいことからディレクターが必要なこと等まだまだ課題が多いようだが、これが完成したら教育というものを大きく変えるのではないか、と期待は十分。将来は、大学等の高度研究機関または国際間におけるコラボレーションやプレゼンテーションへの活用や、小・中・高等学校における学校インターネットを応用した遠隔講義への展開が予定され、松本先生は、「現在第二弾を計画中です。将来的にはいろいろなテーマを取り上げて教材制作を継続する予定ですから、ご質問・ご提案があれば、ご一報ください」と語る。  2000年4月、国際情報通信研究科が発足し、ますます研究が活発化。21世紀のグローバルスタンダードを目指し、先生の研究は続く。

松本充司 ■ 松本充司(まつもと・みつじ)
国際情報通信研究センター教授。工学博士。1970年電電公社(現NTT)入社、1996年本学理工学総合研究センター、1998年より現職。

【研究分野】情報ネットワークプロトコル、マルチメディアアーキテクチャ、情報通信工学、モバイルネットワーク応用工学、ヒューマンインターフェース。

【所属学会】IEEE、電子情報通信学会、情報処理学会、画像電子学会。

【表彰】画像電子学会20周年記念業績賞(1992)、第21回日本ITU協会賞(1993)、電気通信技術委員会(TTC)表彰(1996)。

【E-mail】
[email protected]

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