第933号 May.24,2001 


■「志」を求めて起業! NPO(特定非営利活動)法人ETIC.でインターンシップのコーディネイトを手がける
 

山内 幸治さん

  日本では、NPOで働くことはまだ一般的ではない。ましてや、NPOの創業は、本当に特異なケース。欧米諸国を中心に高い専門性を発揮して、一般企業以上の年収を得る働き方もあるが、日本ではボランティアの要素が強く、手弁当で活動に参画する人が多い。そんな環境の中、NPO法人としてインターンシップ・コーディネートを手掛け、行政・企業・学校・学生の間を繋ぐ山内幸治さんは、「社会的な価値のある本質的な仕事がしたい。この仕事を通して、一人ひとりの人間の可能性を引き出し、新しい市民社会の形成に関わっていきたい」のだと言う。

<只々ひた走るも、活路が見えず。落ち込み切ったその時、「志」が見えた>

 体育会系熱血人間の山内さんが、「志」を認識したのは大学3年。AIESEC(国際経済商学学生協会)委員長として自信があった行動が周囲に否定され、落ち込み、もがき苦しんだ挙句だった。「ストレスで体調を崩し、最高血圧が70を切っても、職務を全うしようとしたけれど、涙が出るだけで空回り。そんな中、それまでの経験で語れることは何か追求した時、『インターンシップだ!』って突き抜けた感覚が訪れました」

<「これぞ己の道」。偶然が必然に変わって、ひたすら追求>

 サークル情報誌で偶然目に付いたAIESEC、先輩に惹かれて活動にハマり、海外インターンシップ担当になっていた彼。それまでは偶然の重なりであったが、それでも「受入先探しで訪れた数は全国で一番と言われる位、何度も企業を訪問していた」。そんな人間が「これぞ己の道」と認識したらスゴイ。今度は組織を離れ只一人、企業や大学を巡り、ホームページを作り、ひたすらインターンシップとは何かを追求し続けた。

<やり残し感が嫌で継続。いい動きには、必ずいい出会いがある>

 そして、インターンシップの可能性を見出すと同時に、世間の認識とのギャップを痛感し、宮城治男(現代表理事)らとETIC.インターンシップサポートセンターを設立。周囲は就職活動を始めたが、「今、辞めたら後できっと後悔する」とETIC.を継続。「やり残し感が嫌だった。振り返ると、僕がいい動きをする時は必ずいい出会いがあるんです。その時は、佐藤真久(現理事)と出会い、意気投合。半年間毎日議論して、彼はベルトの穴2つ分痩せてしまった(笑)」

<志を追求した結果、起業も、NPOも、方法は後からついてきた>

 翌年、「志」の追求には中立の立場で多くの人を巻き込めるNPOが最適と判断。「入学当初は、教師・マスコミ志望、起業なんて知りもしない(笑)。僕はいわゆる就職活動はしなかったけれど、実際はインターンシップを追求していれば組織の中での仕事と巡り合えるかも、と思っていたし、事実、企業から声もかかった。ただ、企業が求めるのは利益の最大化。僕らは価値の最大化を求めていた。だから、収益のための仕事ではなく、NPOとして本質的で社会的価値の高い活動をする道を選びました」

<顧客が上司。プロフェッショナルとして成果が求められる世界>

 NPOの有償スタッフには、高度な専門性が求められ、年齢・経験に関係なくプロフェッショナルとしての実力が問われ続ける。しかし、限られたNPOの人員の中では上司はいない。成長は自分次第だ。「コーディネイトする中で出会うインターンシップ受入先の経営者が上司。当初は実力をつけるため、厳しい注文を出す人の担当ばかりしていました。求められるクオリティもスピードも一流です」

<見識を深め、自己満足ではなく「本質的な」仕事がしたい>

 「自己満足ではなく、自分らしく自然体で、本質的な仕事がいい。30歳までを1つの山場として、この間に人を"動かす"力を身につけ、社会的な事業をプロデュースしたい。全ては"人"から学びます。でも、それには相手に自分も与えるものがなければ。だから、とにかく勉強! ある経営者の『80億年の歴史の中で、人間の人生なんて本当に一瞬。だから、できる限り光っていたい』という感覚にすごく共感するんですが、今、自分の可能性を引き出し、自分を生かすフィールドがここにあります」

■ やまうち・こうじ

 1976年神奈川県生まれ。早実から教育学部社会科学科社会科学専修へ進学し、99年卒。在学中は、AIESEC海外インターンシップ担当、日本委員会副委員長等を歴任後、ETIC.インターンシップサポートセンターを設立しディレクターに就任。「アントレプレナー・インターンシップ・プログラム」プロデューサーとして、年間100社300人をコーディネート。その他、大学・行政等のインターンシップ推進のコンサルティング・調査研究委託等を手がける。主な著書は『インターンシップ活用術』(98年日経事業出版社)。

【URL】http://www.etic.gr.jp

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