第923号 Jan.18,2001 


■有給4年3カ月 会社員が自転車で世界一周! 「企業内自由人」ことミキハウス 坂本 達さん

 夢は世界のいろいろな人々と会うこと。地球上にはどんな人がいて、どんな物を食べ、どんなところに暮らし、どんなことを考えているのだろうか。その夢を就職しても唱え続け、前代未聞の4年3カ月の有給休暇をもらい43カ国5万5千km、自転車で世界一周した坂本さん。この度、感動のフォトエッセイ『やった。』が出版された。

<会社員でありながら、世界一周を実現>

 就職活動ではメーカーを回った。面接で会ったミキハウスの社長に惹かれた。この人のところで働けたらと思ったら、相手もそう思ってくれたのだろうか、縁があって入社した。

 人事で採用と研修を担当する傍ら、社長に「世界を走りたい」と個人的な企画書を出していた。3年にわたり5、6回提出。最初は世界の子供に自社製品を着せて写真を撮ってくるだとか、会社のメリットになりそうなことを書いていたが、相手にされなかった。20代後半は仕事で大切な時。そんな時に現場から離れていいのかとも迷った。でも自分でなきゃできないことをやろうと決意。最後は「30歳までに、世界を自分の六感を使って見ておきたい。そのためには会社を辞める覚悟もあります…」と書いた。「そこまで本気なら」と社長からOKが出たときは信じられなかった。社員が暖かく送り出してくれたのにもムチャクチャ感動した。会社から、ロゴ入りシャツを着て走れとか宣伝しろとかの業務命令は一切なかった。夢を純粋な形で叶えられるように、との配慮だった。出発直前、社長が「タツを応援してやりたいんや」と、同僚に言っていたことを知った。自分で言い出しておきながらこんな人がいるものかと、頭をガーンと殴られたようだった。

<不満があれば、文句は言わず、自らその不満を解消する>

 学生時代の理想は高くて、就職して組織の矛盾に直面すると、組織の文句ばかり言ってる人もいる。不満なら文句を言ってないで、自分で不満を解消すればいいと思う。

 例えば就職活動がうまくいかないのは面接官とか会社や時代のせいにするんじゃなくて、もしかしたら自分の方に問題があるんじゃないかという見方をする。「人や環境のせいにしないこと」が大切。女性だから……と言われるなら、そう言われないような活躍をして実績を作ればいい。また、「仕事で忙しいから」と言い訳をしない。いい環境をつくるのも仕事のうちだ。物事の核心を捉えてその優先順位を付ける。自己満足に浸らず、及第点が付けばいい。

<一生のテーマは「人との出会い」>

 一昨年12月に帰国し、復職。皆にお世話になったり助けてもらったので、週末はこれまで20回位小学校から高校までどこへでも世界一周のスライドを上映しながら報告に出かけている。報告することが助けてくれた人への恩返しになるとも思う。明日は小田原でPTAの方々、先週は千葉県の小中学生600人に。日本でも多くの人との出会いがある。

 今回は手段が自転車で世界一周だったが、今後もいろいろな人々に出会いたい。日本というユニークな国に生まれ育った"日本人"を活かして、僕自身何ができるか。また今回のように、自分の力以外のものが働き助けてくれて、僕を突き動かすだろう。生きていれば失敗や困難も多いが、人の"善"と自分を信じて努力していれば、いつかその日が来るだろうと、ポジティブな思考が身に付いた僕には思える。

<僕が世界一周から持ちかえったもの>

 大切なことは、「幸運は自分で導く」ということ。そのためには感謝の気持ちを忘れずに、例えば挨拶、お礼、ゴミ拾い、席を譲る。自分の気がついたこと・できることをすると運が向いてくる。悪い人でもいい部分を持っているので、そのいい部分で応じてくれる。経験から言っても、前の村でも親切にしてもらったから、今度も大丈夫だろうと自分を信じていると、いい体験ができる。不安な気持ちだと敬遠される。今は休みもない忙しい毎日だけど、一人じゃないし、食べたいものを食べられるし、本も書かせてもらった。さまざまな物の見方をする人がいるが、気にしてばかりだと何もできない。要は見方次第、「自分次第」だ。

さかもと・たつ●

 1968年東京都生まれ。92年3月政治経済学部経済学科卒業後、株式会社ミキハウス入社。95年ロンドンを出発し、自転車による単独「世界一周」に旅立つ。ヨーロッパ、アフリカ、中東、アジア、アラスカ、カナダ、南米を走破。99年12月エクアドルより帰国。ミキハウス社長室人事に復職。世界一周の体験を写真展、講演会等で報告活動を行っている。1人の会社員が自転車で世界を旅するという「夢の実現」を綴った感動のフォトエッセイ(写真・上)も1月中旬に出版予定。

【URL】http://www.mikihouse.co.jp/tatsu

※写真:『やった。』三起商工株式会社発行。1,700円(税別)。これからも体験を日本で伝えることによって、サポートしてくれた人たちにお返ししたい。「こんな会社員がいるのか」と思ってもらえるのも嬉しい。本の印税はすべて、旅で助けてくれた人たちにお返しする。

※1月19日以降に書店、大学生協に並ぶ予


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