第915号 Nov.2,2000 


転職・天職 就職って何? 就職後1年で転職し、今「全日空スチュワーデス」岸 さおり さん

 今や大卒就職後5年以内の転職者が30パーセントを超える時代。キャリアアップやより良い生き方を求めて積極的に転職する若者が増えている。今回は、悩みながらも就職後1年で転職し、スチュワーデス(全日空では「キャビン・アテンダント」と呼ぶ)になった先輩を紹介しよう。

<愛する母校は地方の「非進学校」。そこから初の早大生>

 地方「非進学校」では、優秀な成績も輝かしい実績も、一流大学受験には繋がらない。しかし、彼女の志望先は早稲田大学ただ1つ。唯一の可能性に賭け社学の自己推薦制度に挑戦。見事、母校初の早大生となった。「高校時代の私の頑張りを丸ごと認めてくれた早稲田大学に今でも感謝の気持ち一杯です」。4年間のキャンパスツアーガイドで全国に「早稲田大好き病」が蔓延した。

<自分の存在価値の分かる「ベンチャー」に就職。しかし、仕事が降ってくる! 残業手当ゼロ! やめる人間はクズだ!>

 2年時に「大隈奨学金」を獲得し、「受験勉強してないコンプレックス」から脱却し、3年で地道な「管理会計」のゼミを選択。就職は熟考の末、「小さなコマでいるより、自分の存在価値がハッキリ分かる会社へ」と、経済誌に「急成長』1」と紹介された創設4年目のベンチャー企業を単願した。数年後に株式公開を目指し、法務・人事すべてが未整備だが、24時間全力疾走、寝る間も惜しんで働いても仕事の山。「やめる人間はクズだ!」。でも、部長や先輩が次々に辞めていく殺伐とした状況は、入社前には全くわからないものだった。

<「あなたの笑顔が見たい」という求人広告で転職決意! 「スチュワーデス」の「ワセ女」ってミスマッチ?>

 「3年以内の転職は履歴に傷がつく」と、転職は考えないようにして目を吊り上げて頑張るうちに笑うこともなくなった頃、偶然、新聞の「あなたの笑顔が見たい」という全日空スチュワーデスの既卒採用求人広告を発見。初めて「そうだ。どんなに苦しくても笑っていられる仕事がいい」と、転職を決意。生き方を見直させてくれたこの会社だけを受け、運良く合格した。

 学生時代は「大学出てまで何でウェイトレスみたいな仕事をするんだろう」と考えていたスチュワーデス。しかし、ベンチャーの経験から、仕事は結果がすべて、学歴は就職条件の要素の一つに過ぎないと実感。だから、全日空でのハードな訓練の陰で泣いたことがあっても、人の嫌がる仕事も厳しい規律も全く苦にならなかった。以前に比べれば「余裕! 今は天国です。」

 一見華やかに見えるが、クルーには体育会系のタフさが必要。また、乗客の安全・安心のためには信頼性や人間的な幅の広さも求められる。「このような資質は、スチュワーデス予備校等では育ちません。むしろ、早稲田のように多様な人間関係に揉まれ、対人折衝能力が育つ環境こそが理想的。そこで毎日を大切に生き、周囲に配慮する習慣がつくと人間的に成長できるのでは?」。ならば、ワセ女はむしろスチュワーデスにふさわしい。「ワセ女がダサ過ぎて目立つってこともないですから、皆さんもバカにしたり諦めないで、スチュワーデスという職業にチャレンジしませんか?」。世間や本人たちが思う程、ワセ女はダサくないらしい。そして、総長の良く言う「志は高く、頭は低い」本来の早稲田人なら、客室乗務員の鑑になれる。

きし・さおり●

 1974年東京生まれ。93年4月、早稲田大学社会科学部に自己推薦制度(「生徒会活動」と「情報処理技能」による)で入学。同じ「自己推仲間」に女優の小川範子さんもいた。ゼミは佐藤紘光研究室で、管理経営を学ぶ。97年3月同学部卒業。ベンチャー企業勤務を経て全日空スチュワーデスに転職。


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