第842号 Jul.2,1998


『情報を探す技術 捨てる技術 情報の達人になるための極意』 大串夏身著 ダイヤモンド社:本体価格1400円

 日常利用している本学の設備について、あなたは“よく知っている”と言えるだろうか。『早稲田ウィークリー』、『コンパス』、インターネットや掲示などで広報されているが、学生の皆さんからは“知らない”“情報がない”という声をよく聞く。これだけ情報が多いと、溢れかえる情報の海に溺れてしまって効果的な情報収集ができないまま“情報がない”と思っている場合もあるのではないだろうか。

 ビジネスの社会では、いかに効率的に情報を収集するかが重要な鍵になることが少なくない。戦略的に広報を行ったり、データを基に企画書を作成したり、取引先の情報にあわせてプレゼン資料を作成したり…例を挙げれば枚挙に暇がない。特に不況の今、競争化社会で生き残るために企業は必死の努力をしている。当然、社会での活躍を嘱望されている皆さんにも情報活用能力が資質の一つとして求められることになる。その場凌ぎのレポートのように仕事をこなしていては、チャンスにも恵まれないのではないだろうか。

 この本はそういった社会で生き残っていくのに不可欠な、情報収集の方法や管理の方法が書かれている。インターネットを活用した情報収集や“整理しない”管理など、短期間で情報が更新されていく現在に相応しい内容で、すぐに活用できるのが嬉しい。重要事項はチェックポイントとしてまとまっていて読みやすい。また、さまざまな情報収集先のリストや情報入手先の連絡先が掲載されているのもありがたい。ビジネスの現場だけでなく、大学生活においてもレポートの作成や研究活動にもかなり役立てられる。

 情報の達人になるための秘訣が凝縮されたこの一冊。まずはこの本から情報を収集することが達人への第一歩と言えるのではないだろうか。

(ま)


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 第842号 Jul.2,1998


『なぜあの人は気がきくのか』 中谷彰宏著 ダイヤモンド社刊:本体価格1400円

 本学出身の作家・俳優で、本誌でも2年間にわたって連載をしていただいた中谷彰宏さんの最新刊。月に4冊〜6冊のハイペースで本を出版している中谷さんの精力的な仕事ぶりには目を見張るものがあり、どれが最新刊かわからないほど。

 本書は、ダイヤモンド社から発行されている「なぜあの人は〜」のシリーズの八冊目。中谷さんならではの言葉で、ずばりと核心をついたエピソードや格言がもりだくさんである。

 「キオスクのおばさんは、払う前から、おつりを握っている」という帯の言葉がまず目を引く。確かに言われてみればその通りで、中谷さんの細かい観察眼と、キオスクのおばさんの「気のきき方、きかせ方」の両者に脱帽、という感じ。

 他にも「かすれたインクで手紙を書かない」「プライベートで気がきくひとは、仕事でも気がきく」「頭がいいとは、人の痛みがわかることだ」など、どの項目にも読んで納得、参考になる言葉が多い。

 表紙に「顧客満足のヒント」とあり、一見ビジネス書のようだが、学生生活や日常生活でも役に立つ事柄がふんだんに盛り込まれている。

 恋愛論、小説、ビジネス書と幅広い著作を持つ中谷さんの、人気の秘密がよくわかる。

 ふだん何気なく人と接している我々の肩をポンと叩いて、「プラスワン」を教えてくれるような一冊だ。

(よ)


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 第841号 Jun.25,1998


『坪内逍遥 文人の世界』 植田重雄著 恒文社:本体価格2800円

 坪内逍遥−−明治・大正期に、評論・小説・劇作等幅広い分野で活躍。本学において教鞭を執る傍ら、日本の新劇運動に多大なる影響を与えた。その坪内博士がその誕生を切に願い、自ら東奔西走して築きあげた日本で唯一の演劇博物館・坪内博士記念演劇博物館がこの十月に創立七十周年を迎える。

 この本は、その坪内逍遥先生が一大転機を迎え、人生に対してある一つの決意を抱いたところから始まる。東大在学中、試験の落第や母との死別などを経験。自分の人生観の甘さを痛感する逍遥。家からの援助や遺産の分配を断って自活の道を歩むとともに、猛烈な勉強を始めた。後になって、大学時代は「通り一遍の聴講をしてゐただけで、どの教師からも是ぞといふ感銘を受けたこともなかつた」と回想している逍遥が、生まれ変わった瞬間であった。

 かくして、逍遥は歴史に名を残す偉大な文人として成長していくわけだが、読むに従ってその間の足跡が次第に明らかになっていく。會津八一との深き交わり、逍遥の劇作・創句、教師としての逍遥、島村抱月らとの演劇活動…。逍遥のエネルギーは留まるところを知らない。その思いを余すところなく語り伝えようとしているのがまさにこの本であろう。

 著者・植田重雄氏は本学名誉教授で、會津八一にも造詣が深く、幾つもの著作を残している。今回の著作においても、師と弟子、そして親友として、お互いを尊敬し、高めあう二人の文人の水魚の交わりを鮮やかに描いき上げている。また、随所に引用されている逍遥の著作が味わいを増しており、読みごたえのある仕上がり。熱き思いを胸に秘めた学生の皆さんにぜひ呼んでほしい好著である。

(ま)


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 第839号 Jun.11,1998


『ケンブリッジのカレッジ・ライフ 大学町に生きる人々』 安部悦生著 中公新書:本体価格680円

 「大学」とは一体どんなところなのだろうか。そして学生生活とは? 一口に「大学」と言っても千差万別。日本国内の大学であれば制度は大差ないかもしれないが、やはり学校毎に違った個性があって、同じような学生生活が営まれているとは言い難い。それが世界各国ということになればなおのこと。学校の個性はもちろん、文化や体制なども日本とは全く異なり、同じ「大学」でも違った学生生活が待っていることだろう。

 そんな異文化の中での学生生活を紹介しているのがこの本。イギリスのケンブリッジ大学に一年半にわたって研究留学した著者が、自らの生活を基にケンブリッジの制度や歴史、教員や学生の気質などについて記録している。

 中でも興味深いのはオックスフォードやケンブリッジ独特のカレッジ制度についての記述。“カレッジ”のなんたるかは一読すれば明らかなのでここでは述べないが、カレッジ制度について、著者の体験やカレッジ・ライフの紹介から明らかになっていく。ただ、留学生という立場上仕方のないことなのかもしれないが、「これぞカレッジの真髄」とでも言うべき、カレッジ特有の教育現場に関する記録が少ないのが残念だ。

 著者の目で見たり、感じたりした事柄をエッセイ風・日記風の素直な語り口で綴っているので読みやすい。ただ、著者が研究者として留学しているため、一般学生ではなく教職員の視点から描かれている部分もあるが、それもまた知らない世界を教えてくれるという点ではまた魅力の一つとも言えるのではないだろうか。

 一冊に凝縮されたケンブリッジのカレッジ・ライフ。イギリス留学を考えている人はもちろん、学生生活について悩んでいる人、異文化を知りたい人にもオススメ。本文に散らばったヒントをぜひ読み取ってほしい。

(ま)


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 第838号 Jun.4,1998


『食後のライスは大盛りで』 東海林さだお著 文春文庫:本体価格419円

 本学のOBで、サラリーマンの哀歓を描く漫画家として著名な東海林さだおさんは、軽妙酒脱な文章を書くエッセイストとしても知られている。一九九五年には講談社エッセイ賞も受賞している実力の持ち主だ。特に、「食」に関してのエッセイが多く、タイトルからもわかるように、本書もその一冊。

 もり蕎麦の正しい食べ方とはいかに? どこまでつゆをつけて食べるべきか、わさびはどう使うべきか、幅はどの位の蕎麦がいいのか、著者は煩悶する。

 急にオムライスに郷愁を感じ、オムライスのはしごをして、正しいオムライスのあり方を探し、感激に打ち震える。

 山へ山菜取りに行き、夢中になった挙げ句にその美味しさに感激し、山菜に対する価値観が変わる。

 そうした一編一編に、東海林さんの一コマ漫画が添えられているのも楽しみだが、何より文章が面白い。軽妙さ、という点では、同じ本学出身の原田宗典さんに共通する部分があるかも知れない。

 エッセイは誰にでも書けそうだが、書き手の人となりがストレートに出てしまい、非常に難しいものである。しかし、東海林さんのエッセイは、肩肘張らずに楽しんで生きている東海林さんの憎めないキャラクターが、ほのぼのとした読後感を与えてくれる。

 寝る前のナイトキャップとして、肩の凝らないオススメの一冊だ。

(よ)


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 第836号 May.21,1998


『ムーンライト・オフィス編スキスキ★カメラ!!』 扶桑社:本体価格1262円

 「1+1は?」「2!!」なんて言いながら写真を撮ったり、「ねぇ、ちょっとプリクラ撮っていこうよ」なんて写真シールを作ったり、本当に写真が身近になった。写真を撮る道具も、レンズ付きフィルムやコンパクトカメラ、ちょっと本格派は一眼レフとさまざま。そうやって、いろいろと写真を撮っていると、もう少し上手に写したい、とか、もっと美人に写りたい! という欲が出てくるのでは。今回ご紹介する本は、そんなあなたにピッタリ。

 この本で取り上げられているのは、プリクラから一眼レフまで、とにかく“写真”と名がつくものならなんでも取り上げたんじゃないかと思うほど。身近にある道具や手段を活用して写真を撮ること、撮られることを楽しんじゃおう! というノリの良さが本の中から溢れてくる。思わずカメラを片手に撮影隊を気取りたくなる。

 とりあえず、本紙読者の皆さんに写真美人になるコツを一つ。

まず、正面、右、左それぞれの顔を写真に撮ってみよう。印象がそれぞれ違うはず。それで気に入った角度を元に、目線やアゴの上げ下げなどを研究すれば、あなたのベストショットが分かる。余裕があればフラッシュのたき方を工夫すればモデル並みの写真が撮れること間違いなし?! ぜひお試しを。

 その他にもセルフポートレートやナマぬル(※写真にイラストを加えて作品を作るもの)、コラージュや四コマコミックなど、お楽しみは盛りだくさん。彼女の誕生日にムーディな写真を贈りたいな、と思っている人や、写真を使って自分らしさを表現してみたいと思っている人は必見。題材は身の回りにいっぱい転がっているはず。さぁ、今すぐポケットにカメラを入れて、シャッターチャンスを探しに行こう!

(ま)


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 第835号 May.14,1998


『東京おいしい店ガイド』 岸朝子 神足裕司他著 講談社刊:本体価格1900円

 人気番組「料理の鉄人」で「おいしゅうございます」のフレーズでお馴染みの岸朝子、服部幸應、「恨みシュラン」の神足裕司など5人の食の達人が採点をした東京の「おいしい店」ガイド。

 こういう本に載っているのは、我々には縁のない高級なお店ばかり、というイメージがある。確かに、懐石料理やフランス料理で、一食数万円といった、我々にはなかなか手の届かない店も出ている。

 しかし、その一方で、てんぷら、とんかつ、おでん、焼き鳥、そば・うどん、カレー、スパゲティなど、我々に身近な食べ物の情報も満載。それに、値段の目安もついているので、お店へ行って「びっくり!」と目玉が飛び出ることもない。

 全部で1003店もの情報が掲載されているというから、必ずあなたの好みを満たしてくれるお店が見つけられるはず。エリアも、東京だけではなく、埼玉、神奈川、千葉といった近郊各県のお店も掲載されているのが親切だ。

 五人の著者の、味に対するこだわりを持ったコメントも一読の価値がある。また、友達と飲みに行くのならこの店、彼女(彼)を誘ってちょっと贅沢するならこの店と、本を眺めているだけでも満腹になっていい気分。食いしん坊にはオススメの一冊だ。

 家の近くのお店が載っているという意外な発見もあるかも知れない。現に、高田馬場、早稲田からも数軒が紹介されている。その店は? 本書を見てのお楽しみ。

(よ)


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 第834号 May.7,1998


『地球を救うかんたんな50の方法』 講談社刊:本体価格854円

 地球が危ない。随分前からそう言われているが、慌ただしく日々過ごしているとその変化になかなか気付くことができない。一人ひとりが何かを変えて、実行していかないと確実に状態は悪くなる、ということも分かっている。こうやって、思いあぐねている間に静かに、しかし着実に地球は病んでいくのだ。これではいけない、何かやらないと…。そんな思いを漠然と抱きながらも何もできない日が続いている…。

 そんな人にオススメなのがこの本。「あなたが、いますぐ、その場で、かんたんにできる地球を守る50のこと」という売り文句を信じてまずは手に取って、読んでみてほしい。四つの章には、今問題となっている環境問題の簡単な解説や、それに対して私たちができることがずらりと書かれている。

 「整備のゆきとどいた車は、そうでない車にくらべて九パーセントもガソリンが節約できます。ということは、有害な排気ガスも九パーセント少なくなるということです」「一リットル入りの牛乳パック三〇枚で、約五本のトイレットペーパーが再生紙として製造できます」「仮に一万世帯の家庭で電球を一個だけ電球型蛍光ランプに変えたら、白熱灯二万個分に相当するエネルギーが節約できます」

 とにかく身近にできることがこんなに! と、驚かされる。そして、もう一つの収穫は、環境問題は連鎖的に作用するということを知ったことだ。例えば分別せずに捨てたゴミが処理場の不足を招く、というのはすぐ分かる。けれどもそのゴミが水や大気を汚染するということや、さらにそのゴミの元を辿れば、大量の資源やエネルギーの無駄に行き着くということまで分かっているだろうか。

 そう考えると、ちょっとした無駄が、ネズミ算式に環境破壊を招いていることになる。逆に言えばできることを一つやるだけでも、随分効果があるということだ。さて、私も今からできることを始めようっと。

(ま)


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 第833号 Apr.23,1998


『三島由紀夫−剣と寒紅』 福島次郎著 文藝春秋刊:本体価格1429円

 三島由紀夫と著者との交流を赤裸々に書いた内容が話題になり、三島の遺族から販売差し押さえの申請が出た問題の一冊。

 著者が若き日に、文壇の寵児であった三島との同性愛の日々について描いたものだが、三島の没後二十五年以上を経て、今なぜこの本を書く必要があるのだろうか。

 これは、地方で売れない作家生活を続けている著者が人生の黄昏に最後の賭けに出た売名行為に過ぎないと、読書子は断言する。こういう物を、ただ売れればいいという気持ちで、平気で出版する文藝春秋という出版社の良識をも疑うが、一読の価値さえない本である。

 三島が同性愛者であったから、著者と肉体関係があったから、どうだと言うのだろうか。三島の残した芸術の数々は、そんな瑣末な、卑俗な出来事によって揺らぐほどヤワなものではない。「仮面の告白」に始まり、「金閣寺」「潮騒」「鹿鳴館」「豊穣の海」に至る、あの偉大なる金字塔を打ちたてた三島文学は、こんな俗物的な事ではいささかも傷つくものではない。

 しかし、だからと言って、なぜ今、亡き三島の秘密を暴くような行為が行われなくてはならないのか。単なる興味本位で、三島の本質を知らない読者がこの本を手にした時、大きな誤解を持ってしまうことが恐ろしい。

 古今東西、同性愛者の作家は枚挙にいとまがない。オスカー・ワイルド、折口信夫…。しかし、そうした性的嗜好によって、その人物や作品の評価が変わるものではない。ということは、三島が同性愛者であろうがなかろうが、その作品の本質は変わるものではないのだ。とは言え、本人が公言しなかった事柄を今になって掘り出すことが正しいとは思えない。

 著者の、出版社の良識を疑う、最近稀に見る俗悪な一冊である。

(よ)


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 第832号 Apr.16,1998


『発表の技法 計画の立て方からパソコン利用法まで』 諏訪邦夫著:本体価格738円

 presentation−。

 最近、さまざまな場面でこの言葉を聞くことが非常に多くなった。と、いうことは、同時にpresentationに必要な能力が社会で求められている、ということではないだろうか。

 確かに私たちが生活していく上で物事を発表する場面は、そう多くはないかもしれない。けれども、そのたまに直面する発表のできの善し悪しが、その後の人生に大きな影響を与えることも少なくない。

 大学生であれば、自分の研究を発表するゼミや学会での発表が最も頻繁にある舞台であるが、広く考えれば就職活動の面接も「自分について発表する」チャンスであるし、教育実習などもpresentationの一種と言えるのではないだろうか。そして卒業して社会に出てからも、研修や営業、企画の提出、報告など、枚挙に暇がないほど発表の機会は訪れる。

 しかし、学生の間は目の前に直面する課題や、日々の生活に追われて、そうした発表の機会をその場凌ぎでやり過ごす、ということも少なくないのではないだろうか。それでは、これから社会に出るための準備をする機会をむざむざ見過ごしてると言わざるを得ない。せっかく与えられたチャンスなのだからぜひ活かしてみてはどうだろうか。

 そこでオススメしたいがこの一冊。この本は著者・諏訪邦夫氏が、発表を行うにあたって重ねてきたさまざまな工夫や、他人の発表を聞いたり、自分の発表を見直したりして発見したポイントが簡潔に述べられている。主に学会発表をイメージして書かれている感はあるが、その他の発表の場面にも役に立つ解説が随所にある。

 しかし、ここで注意してほしいのは発表の方法にマニュアルはない、ということ。人真似では印象が薄く、効果的な発表が行われた、とは言いがたい。ぜひ、自分なりにこの本の内容を消化して、オリジナリティ溢れるpresentationの技法を発見してほしい。

(ま)


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 第831号 Apr.9,1998


『ビートたけしの20世紀日本史』 ビートたけし著 新潮社刊:本体価格1000円

 言いたい放題の毒舌(?)で相変わらず人気のビートたけしが作った今世紀の「歴史的!!教科書」。表紙に「文部省検定不能教科書」と書いてあるのが、いかにもたけしの本らしくて、「やられた!」という感があるが、内容は至って真面目である。

 1900年(明治三十三)の日露戦争から始まって三年前のオウム真理教事件まで、日本が歩んで来た紆余曲折の道筋を追って、たけしなりの解説や意見を加えたものである。

 使っている言葉は悪いが、たけしの言うことはある一面で真理を突いている事柄が多い。読者がその意見に賛成できるかどうかはともかくも、あの毒舌はシャイなたけし一流の照れ隠しなのだろう。

 一例をあげれば、ついこの間話題になった「戦後五十年」に関する様々な行事も、たけしの手にかかればメッタ斬りである。「戦争に勝ったのを記念するのならともかくも、負けた国がそれを記念してどうする」、と言われれば、それも一理あるかなと思わされる。たけしの言っていることは一見極端のようだが、それは言い方の問題であって、内容の本質に関する事柄は、正鵠を得ているとも言える。

 「この一冊は今の時代に警鐘を鳴らす書である」などと言えば、たけしは照れて「オイラはそんなつもりで書いたんじゃねえ」と言うだろう。

 しかし、我々が知らない時代の日本、また知っていても見過ごしてしまっていた日本の姿を知るには、思想統制され、公正な姿を隠された学校の歴史の教科書を見るよりも、よほど真実に近い姿が描かれている。こんな教科書が実際に授業で使われたら面白いのに。

(よ)


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 第830号 Apr.2,1998


『コミュニケーション学への招待』 橋元良明編著 大修館書店:本体価格2100円

 「コミュニケーションって何?」と聞かれた時に、きちんと解説できる人はどれくらいいるだろうか。

 私たちは日常、“コミュニケーション”という言葉をよく使うが、果たしてそれが何なのかと言われると困ってしまう。幾許かのイメージは持っているものの、説明しろといわれるとちょっと心許ないというのが大方の心理ではないだろうか。そういった“コミュニケーション”について解明するのが“コミュニケーション学”だ。この本はその学問領域の研究の中から、一般に興味を引きそうな知見を集めたもの。いわゆる“対人態度”などのマニュアル本ではなく、れっきとした研究書である。

 第一部「コミュニケーションを解剖する」では、生物学や言語学の側面からコミュニケーションを解明していく。「なぜ言葉を使うようになったのか」「民族や文化によって仕草にどういう違いがあるのか」「動物のコミュニケーションは?」など、私たちが当然のこととして受け止めている行為を学問的に解説していて、大変面白い。時折専門用語も出てくるのだが、それらには別途解説がついているので、入門者でもちゃんと読み進めることができるのでご安心を。

 第二部は「生活の中のコミュニケーション」と題して、私たちの日常生活にみられる諸現象を明らかにしていく。一時期街中で見られた水を詰めたペットボトル、その噂はなんで広がったのか。広告で新製品のビールの味を伝えるにはどうしたらいいか。テレビゲームをすることで性格や対人関係に影響が出るのか。…等々、身近な現象が具体例として取り上げられているので、第二部の方が内容的には分かりやすいかもしれない。

 一読して、“コミュニケーション学”という学問が、政治学、生物学、文化人類学、社会学、心理学…などさまざまな研究領域にまたがっているものだということが分かる。学問の世界の奥深さとこれからの新たな可能性を感じさせる一冊、これから大学生活を始めようとしている方たちにぜひ手にとってほしい本である。

(ま)


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