早稲田から始まった合気道の「競技化」
部の誇りと使命を胸に

中村 俊介さん 本坂 裕貴さん

[プロフィール]
なかむら・しゅんすけ(左) 1990年熊本県生まれ。熊本マリスト学園高等学校卒業。スポーツ科学部3年。最近、AKB48のとりこになった。「早稲田祭2011」の生ライブでは天にも昇る心地だったとか。「直後の練習では気持ちを切り替えて集中しましたが、練習が終わったらまた夢の世界に戻りました(笑)」。推しメンは、仲川遥香ちゃん。

もとさか・ゆうき(右) 1988年福岡県生まれ。福岡県立京都高等学校卒業。商学部4年。月曜から土曜は練習、日曜日はワセダクラブで子どもに合気道を教えているので、合気道以外の趣味に費やす時間はなかなかとれないとか。楽しみは、休日にサイクリングをしたり野球をすること。



 数ある武道の中でも、合気道は相手を傷つけることなく、攻撃を封じることが特徴。受け身さえしっかりできれば痛い思いをせずに済む、ある意味平和的な武術だ。そのため、一般的には対戦試合がない。一方、剣道や柔道は、「勝負の場」をもち、競い合うことによって技術を向上させていく。そこで、世界に先駆け合気道の競技化を実現するために早稲田大学合気道部を54年前に創設したのが、本学教員の富木謙治先生だった。この競技合気道は、合気道部のOBが欧米に紹介し、今では世界中に普及している。

 「合気道の競技は早稲田が発祥だからこそ、部員としての誇りは大きいですね。優勝するのが当然という気持ちでいます」と語るのは主将の本坂さん。その言葉通り、大会の上位に早稲田の名を見ないときはない。本坂さんと次期主将の中村さんは、2011年夏、OBとともに参加した国際大会で団体戦準優勝に貢献した。

 世界に名を轟かす早稲田大学合気道部だが、意外にもほとんどの部員が大学から始めた初心者だ。本坂さんもその1人。「何か武道をやってみたいと思っていたのですが、合気道は殴ったり蹴ったりしないし、攻撃した相手を傷つけることが目的ではないところが気に入りました。大学から始めても世界大会に参加できるチャンスがあるんですよ」と語る。中村さんも合気道の平和的なところに惹かれているとか。「合気道の達人として有名な塩田剛三先生は『一番強い技とは、自分を殺しにきた相手と友だちになることだ』という言葉を残しているんですよ。そういうところがかっこいいですね」。

 合気道は、基本的に攻撃を仕掛けることのない武術だ。そのため、競技はあらかじめ攻撃役を決め、あたっても痛くはないゴム製の短刀で攻撃を仕掛けるところから始まる。攻撃される側は、武器を持っていないため不利な状態だ。体重ごとに階級が分かれているわけではないので、自分より体格が大きな人を相手に対戦することもよくある。それでも冷静に素早く判断して技をかければ、攻撃を封じることができるのだ。力技ではない、頭の良さが要求される。

 「そもそも不利な状態から試合が始まるので、かっとしたり、力が入ってしまったりすると当然のごとく負けてしまいます。私は割とかっとなりやすいタイプだったんですけど、合気道を始めて逆境に立たされても冷静になることができるようになりました。」と中村さん。一方、本坂さんは「私は逆で、淡々としているタイプ。それで、攻撃しない合気道に惹かれたのですが、日頃から勝負を意識しているうちに、熱い男になってきたと思います」。

 主将のバトンを引き継いだ中村さん。今後の抱負をこう語る。「部の歴史を受け継ぎ、さらにステップアップしたいですね。私はスポーツ科学部なんですけど、川上泰雄先生のゼミで合気道の技の原理をバイオメカニクスの視点から研究しています。研究を技の向上に役立たせたいですし、原理を解明して他のスポーツにも応用できたらいいですね」。

 後輩の言葉に深くうなずく本坂さん。「今後は合気道を全国に広めていきたいと思っています。合気道は楽しみ方に幅がある武道。競技の場において、多くの人と勝敗を競うこともできるし、形を練習することで武道としての技を磨くこともできます。もちろん護身術にもなります。私自身も一生続けていきたいです」。

 早稲田発祥の競技合気道の伝統をしっかり引き継ぎ、さらなる振興に使命感を燃やす2人。競技化によって進化を続け、世界中に競技人口を増やす合気道。その原点が早稲田にあるという誇りが、彼らを奮い立たせている。

 

中村 俊介さん 本坂 裕貴さん

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本坂さん必殺の「正面当て」炸裂!
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▲試合前、高ぶりを抑える

体格の勝る外国人選手を相手に堂々の準優勝
▲体格の勝る外国人選手を相手に堂々の準優勝

 
1267号 2012年1月12日掲載