「早稲田大学芸術功労者阿刀田高講演会」に参加して
(2011年11月28日 小野記念講堂)

文学研究科博士後期課程 特別研修生
(パリ・ディドロ大学 博士課程2年)
イザベル・ラヴェル

 私が今回の講演会に興味を持った大きな理由は、第1部で朗読される小説の題名にありました。『サン・ジェルマン伯爵考』。フランス人なら誰でも「あれ?」と好奇心が引かれるのではないでしょうか。特にパリの人なら、なおさらです。私の母校のソルボンヌ大学は、サン・ジェルマン・デ・プレから徒歩10分ぐらいの場所にあり、そこのお洒落(しゃれ)なカフェやバーなどが学部生の頃は憧れの的でした。しかし、私は地名としての「サン・ジェルマン」ではなく、「サン・ジェルマン伯爵」という人名が気になっていました。子供の頃、『世界の謎』という本がとても好きで何回も読んだのですが、その中に「十八世紀の不老不死の男、サン・ジェルマン伯爵」のことが書いてあったのをはっきりと覚えています。

 阿刀田高先生の御夫人である阿刀田慶子さんの朗読が始まると、講堂内が暗くなり、舞台だけが照明で照らされた雰囲気のある演出で、すぐに物語の中へ吸い込まれました。慶子さんがお一人で舞台に立っておられるのに、舞台からは一人一人の登場人物の声が聞こえて来るかのようでした。物語の舞台である帝国ホテルのロビーや、ひと昔前のモンマルトルなどが目に見えるようで、何も考えずに物語を集中して聞いていたので、最後のトリックにとても驚き、感動しました。

 第2部の阿刀田先生のお話も興味深く伺いました。小説を書くことにおいての「モチーフ」の大切さや、私小説にとっての「レアリズム」とは何を意味するのかなど、文学に興味を持つ人なら誰でも疑問に思っていることについて、とても面白く、そしてやさしく語られる先生のお話に聞き入ってしまいました。これからも、もっと積極的に早稲田大学での講演会などに参加したいと思いました。


阿刀田高先生
▲阿刀田高先生

阿刀田慶子さん
▲阿刀田慶子さん

 
1267号 2012年1月12日掲載