とっておきの話

カイロの街の思い出

政治経済学術院 教授
土屋 礼子

 今年(2011年)の1月にチュニジアに続いてエジプトで民主化革命が起きたと伝えられた時、私は思わずテレビの画面に釘付けになった。エジプトの首都カイロにおける革命の中心地という「タハリール広場」に聞き覚えがあったのだ。エジプト旅行の折に使ったガイドブックをあわてて広げてみると、やはりそうだ。その広場は宿泊したホテルからすぐ近くにあり、友人と私はエジプト考古学博物館へ行った後、散歩してその広場に面したマクドナルドの店に入り、チキンバーガーを食べて、そこからアブディーン宮殿まで歩いたのだ。あの平凡に見えた広場に今や人々があふれかえり、革命を(うた)う聖地になっている!

 2009年春に私はカイロ大学の教員である友人に誘われて、エジプトに初めて出かけた。ピラミッドや王家の谷など古代遺跡やシタデルなどひととおり観光し、その幾重にも折り重なった歴史の深さに感動した。しかし、私にとって最も印象深かったのは、実はカイロ市街の夜の(にぎ)やかさだった。カイロの繁華街は、夜中の3時ごろまで商店街が煌々(こうこう)と明るく、老若男女が通りを賑やかに行き来する、その活力に私は瞠目(どうもく)した。ショーウインドーいっぱいに子供服が並べられた店、映画館、地元名物のスナックであるコシャリを食べさせる店、パン屋、生ジュースのスタンド、卵屋などなど。なかでもすばらしいのは、果物や野菜を並べた市場の露店である。オレンジやリンゴ、スイカ、ブドウ、トマトなどが並べられているのだが、どの店も実に細心を払ってきれいに揃えて品物を並べてあり、その並べ方も全体のデザインが考えられている。ディスプレイとして美意識が溢れている。こんな美しい並べ方をする露店の八百屋を日本でも他の国でも見たことがない。長い歴史を持つカイロの市民が日常の中で磨いてきた文化の高さを垣間見た気がした。民主化革命を支えているのは、あのような店を営んできたごく普通の人々たちなのだろうと今にして思う。



ハミルトンのモーテルでのお隣さんはナショナルチームのウェールズを応援
▲カイロの若い女性たちはオシャレ

私の好きな国歌斉唱。どこの国歌も好きです
▲カイロの露店の様子

 
1262号 2011年11月17日掲載