あるべき姿

創造理工学研究科修士課程1年 上形 由布子

 無農薬・無化学肥料でビニールハウスも使わず、より自然に近い状態で作物を育てる野菜はとにかくおいしい。その野菜には農家の方々の愛情がたっぷりと注がれている。農薬を使わないため、虫が発生すれば1匹ずつ手で潰し、腰を曲げて雑草を抜く。

 「農薬が使えたら楽だよ」。夜の懇親会である農家の方の口から出てきた言葉だ。農薬が使えたら確かに楽だ。虫も発生しないし雑草も生えてこない。しかし、今の「楽」にしがみつかず、本来あるべき農業を追求しているのが三芳村(みよしむら)生産グループだ。食べる人、さらにはその子孫のことまでも考えて作物を作る。自然の摂理に従い、黙々と田畑を耕す農家の方には頭があがらない。はざかけ(刈った稲を干す作業)のお手伝いのため、田んぼに立って、刈りたての稲に触れる。稲から伝わってくる温かさは太陽光の温度だけでなく、育てた人の心の温かさをも感じさせる。

 3.11の東日本大震災による原発事故は世界中を騒然とさせた。原子力発電は今の「楽」にしがみついて後世のことは考えていないやり方だ。エネルギー政策の本来あるべき姿とはどういうものか、私は農家の方々の中にその答えを見た。

 「あるべき姿」を追求することは簡単なことではない。たゆまぬ努力と探求によって少しずつ近づいていくものだ。農業という分野で実践している人と触れ合い、その実践を少しだけ体験できた私は、自分自身のあるべき姿とは何か考えてみた。ブドウの種を植えればブドウが実を結び、リンゴの種を植えればリンゴが実を結ぶ。ブドウの種からリンゴは実らないし、リンゴの種からブドウは実らない。一人ひとりが自分という実を結ぶことができたなら、心温まる世界になるのではないかと思う。

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オクラの摘み取り
▲オクラの摘み取り

稲刈り・はざかけ
▲稲刈り・はざかけ

作物の出荷作業の手伝い
▲作物の出荷作業の手伝い

 
1260号 2011年11月3日掲載