「市場経済論Ⅰ・Ⅱ」
数理で社会現象に迫る

社会科学研究科修士課程1年 高橋 礼香(あやか)

 

 突然だが皆さんは、「臓器移植」「婚活」「ゼミの選考」の3つに共通するある問題とは何か、と聞かれたらなんと答えるだろう?「市場経済論Ⅰ・Ⅱ」の履修を終えた今の私なら、こう答える。「ドナー(臓器提供者)とレシピエント(臓器被提供者)、及び結婚を希望する男女間、そして教授と学生のマッチングの問題です」と。

 ではその授業内容がもたらすは発見力とはどのようなものか。まず「市場経済論Ⅰ」では、大学院初年時の学生を対象とした講義であることに加え、履修者の数学の理解度を考慮し、かなりの時間がそれらのテーマを理解するのに必要な数学の知識の説明に充てられる。その後、「一般均衡理論」についての基礎的な事項―例えば「一般均衡解の存在」「パレート最適性」「コアの近次定理」について―の解説が行われる。続く「市場経済論Ⅱ」では、「社会的選択論」「アローの不可能性定理」「交渉理論」など、複数の主体間の関係を取り扱うさまざまなテーマについて講義が行われた。

 毎回の授業では、戸田学先生がホワイトボードに数式や文章を記述しながら、丁寧に解説してくださる。そのため当初、抽象的で難解に思われた理論が、実は私たちにとって身近で、現実の事象を丹念に考察することから発展していったことがよく分かる。たとえば冒頭の「結婚問題」―つまり複数の男女がいる集団内において、お互いに現在の結婚相手よりも好きな相手がいる、というペアが存在しない状態「安定マッチング」がありえるかどうか―は、ある研究者たちが提案した有名なアルゴリズムの理論と方法を用いて解くことができる。

 何らかの社会現象を解き明かしたいと思っても、残念ながら現実の社会では「実験」が困難である。そこでモデル化を通して数学的な問題に置き換えて解き、そこで示された結論を現実の問題に照らし合わせることで、問題の解決を図る。そうした経済学の分析手法を、基礎から身につけたいという人に、この講義は特におすすめである。

戸田先生
▲戸田先生

教材写真
▲教材写真




1260号 2011年11月3日掲載