とっておきの話

本場のラグビー観戦方法

スポーツ科学学術院 准教授
中村 千秋

 私はこれまでニュージーランド、オーストラリア、イングランド、スコットランド、南アフリカにラグビーの遠征や合宿で滞在し、「プレーするラグビー」と「支えるラグビー」を通して世界トップレベルのラグビーが育つ文化に触れてきた。しかし、今回はニュージーランドで開催されている(10月10日現在進行形)ラグビーワールドカップで3つの日本代表戦(対フランス、ニュージーランド、トンガ)を純粋な観客として観てきた。観戦当日は3時間前からスタジアムそばのレストランに入り、友人との会話は適当に流して名前の「粋さ」で選んだニュージーランド産の白ワインとともに、ムール貝のワイン蒸しやラム肉をほおばりながら、試合前の時間を過ごしていた。すると次第に饒舌になってくるので、周りにいる日本人以外の人たちからも親しげに声を掛けられるようになる。ニュージーランドの英語は聞き取りにくいし、フランス語はもちろんさっぱりできないのだが、すでに上機嫌な私は同じく上機嫌そうな相手に下手な英語で返答し、結局はそこで知り合った「仲間」と敵味方なくそのまま肩を組んでスタジアムへ向かうことになる。

 スタジアムでの国歌斉唱では初めて大声で国歌を歌った。どういうわけか涙が流れた。フランスの国歌はいつもながらかっこいいし、ニュージーランドやトンガの国歌はとても優しそうに聞こえた。ゲーム中、私は日本代表を応援しつつ、隣の席で80分間「Steinlager」という現地のビールを飲み続けている国籍不明客に絶えず話しかけていた。そうするとゲーム後は勝敗に関係なくまさに「ノーサイド」でそのまま一緒にパブへ、ということになる。

 これは私が実体験した本場のラグビー観戦方法であるが、このようなスタイルは私だけでなくラグビーを観戦する者の心得であるように感じられた。と同時に、2019年に日本で開催されるラグビーワールドカップでの観戦はこのようにできるのか? と心配にもなった。



ハミルトンのモーテルでのお隣さんはナショナルチームのウェールズを応援
▲ハミルトンのモーテルでのお隣さんは
ナショナルチームのウェールズを応援


私の好きな国歌斉唱。どこの国歌も好きです
▲私の好きな国歌斉唱。どこの国歌も好きです

 
1260号 2011年11月3日掲載