研究まっしぐら!

1000分の1秒を研究するスポーツ科学

スポーツ科学研究科博士課程2年
樋口 貴俊

筆者が企画した研究室対抗の野球大会の後の集合写真の一部分。前列右下が指導教員の彼末教授。前から2列目の右端が筆者。
▲ 筆者が企画した研究室対抗の野球大会の後の集合写真の一部分。
前列右下が指導教員の彼末教授。前から2列目の右端が筆者。

 

 私が所属するスポーツ科学研究科は人文・自然科学系の多種多様な学問の集合体で、私はその中の神経科学や運動制御といった分野を専攻に、野球打撃の正確性について研究しています。具体的には打者のバットコントロール、タイミング調節、ボールの位置の把握などといった能力が打率(打撃の成功率)とどのように関わっているかを解明し、打率を向上させるのに適したトレーニング法を生み出そうとしています。

 私の研究では、約0.4秒間で終わる野球の打撃の詳細を調べるため、1秒間に1000コマ撮影できる高速度カメラを用いて打撃動作やボールとバットの衝突を記録、分析します。ここで欠かせないのが太陽の光です。と言いますのも、1秒間に1000コマ撮影するためにはカメラのシャッターが1秒間に1000回開閉する必要があります。さらに、鮮明な画像を記録するためには10000分の1秒以内にシャッターを閉じる必要があります。しかし、1コマ毎の露光時間が非常に短いので、室内灯の下で撮影すると、画像は真っ暗になります。なので、十分な明るさを得るためには太陽光(室内灯の約100倍の照度)が必要不可欠となるのです。実験は屋外になるので、雨や日没で中止や、真夏の炎天下での撮影になることがしばしばあり、汗や泥にまみれながら研究をしています。

 たまにつらい時もありますが、この研究の成果がやがて、世界を代表する一流バッターの育成に貢献できると信じ、楽しみながら頑張っています。

屋外での実験風景。強い日差しにも負けず、撮影が続く
▲ 屋外での実験風景。強い日差しにも負けず、撮影が続く

最近の活動

●ベースボールマガジン平成23年5月号
(解説記事:研究者が分析!“打撃の正確性”向上へのヒント)
●公益財団法人ヤマハ発動機スポーツ振興財団スポーツチャレンジ研究助成 第5期生
[研究生活に連れ添うアイテム達]

研究生活に連れ添ったアイテム達

記録媒体(上)▶実験では大量の映像データを保存するのでたくさんのメモリーカードやハードディスクが必要になります。

野球・卓球道具(下) ▶ 研究の合間を縫っての野球や卓球は、研究成果を実践する機会となるだけでなく、新たな研究課題へのアイデアを生み出すための貴重な時間となっています。筆者は野球を日本(小中高)と米国(大学・独立リーグ)でプレーした経験があり、それらを通して現場から拾い上げてきた研究課題を実験室で解析し、また現場へ還元することを基本方針にしています。
 
1255号 2011年9月29日掲載