先輩に乾杯!進路に迷ったときに読む、 身近な先輩へのインタビュー

舞台に立つ喜びをかみしめて

舞台女優
さとう 未知子さん

■さとう・みちこ
1982年、神奈川県生まれ。2005年、本学第一文学部卒業。大学在学中に文学座附属演劇研究所に入所。主な舞台は、06年、松平健特別公演 御園座『弁慶』。09年、新歌舞伎座 国立劇場にて『王将−坂田三吉の生涯』坂田君子役。同年、日生劇場『ジェーン・エア』ヘレン・バーンズ役。10年、帝国劇場『キャンディード』。11年、帝国劇場『レ・ミゼラブル』ファクトリーガール役。和ものからミュージカルまで、さまざまな舞台で活動中。愛読書は浅田次郎の『蒼穹(そうきゅう)の昴』、吉川英治の『三国志』など。
東宝製作ミュージカル「GOLDーカミーユとロダン」12月8日~28日までシアタークリエにて。
URL:http://ameblo.jp/michi-inconnue/

 今回ご登場いただくのは、舞台女優として活躍されている、さとう未知子さん。2011年4月から6月に帝国劇場で上演され、連日多くの観客を魅了したミュージカル『レ・ミゼラブル』など、話題の舞台で活躍するさとうさんに、学生時代のお話や舞台女優としての歩みについてお伺いした。

憧れの『レ・ミゼラブル』
 “早稲田”を初めて意識したのは、小学生のころ。エジプトの歴史が好きで、吉村作治・現本学名誉教授の本も読んでいたという。その中で、見慣れない文字を発見した。「お母さん、“ハヤイナダ”って何?」と聞くと、「それは“ワセダ”って読むのよ」という返事。そのときから、「エジプト考古学を学びたい。そのために将来は早稲田大学に行こう!」と思ったそうだ。

 ところが、中学生のころにハマったのは、歌舞伎だった。五代目尾上菊之助が襲名披露で女形を演じる様子をテレビで観て、「こんなにきれいな人がいるんだ!」と衝撃を受けた。高校生になると、語学留学でロンドンに行った。グローブ座で初めてシェイクスピアの演劇を観て、目の前で繰り広げられる演劇の迫力、観客が楽しそうに沸き立つ雰囲気を味わい、次第に興味は考古学から舞台へと移っていったという。その後、ミュージカル『レ・ミゼラブル』の舞台を観て感動し、憧れ、「いつか自分もこの舞台に立ちたい!」と強く思うようになった。

一から演技を学ぼうと決心
 高校卒業後、大学は小さいころから意識していた本学第一文学部に入学。好奇心旺盛なさとうさんは、演劇に限らず、いろんなことに興味を持った。「2年生になって剣道部に入部しました。『暴れん坊将軍』などの時代劇が大好きだったのがきっかけです(笑)。松平健さんになりきって、かなり本気で取り組みました」。

 3年生の秋、知り合いのレコード会社関係者から、デビュー前のある歌手の曲を聴かせてもらった。力強く、素晴らしい歌唱力で、ぜひ多くの人に聴いてもらいたいと思った。早速、さとうさんは行動に移す。「早稲田祭2003」で教室を会場としたデビュー前イベントを企画したのだ。イベントは溢れんばかりの観客を集め、大成功を収めた。ある歌手とは、後に『Jupiter』でデビューした平原綾香さんだ。

 このことは、さとうさんにとって大きな刺激となった。「私も演劇に打ち込みたいと思い、俳優養成所に通って一から演技を学ぼう、と決意しました」。そんなある日、テレビを観ていたら大好きな寺島しのぶさんが出ていた。「テロップに流れたプロフィールに『文学座出身』と書かれていたんです。ここだ!って思いましたね(笑)。調べてみたら、その日は研究生募集の願書提出の締め切り日と分かり、急いで事務所に足を運び、直接出願をしたんです」。

3年間は一人で頑張ると決めた
 4年生になると、昼は大学の授業、夜は6時から9時ごろまで文学座付属演劇研究所で学ぶ、という生活が始まった。忙しい日々の中、1年間をかけて、さとうさんは役者としての基礎を身に付けていく。「一番心に残っているのは、卒業公演での演技です。自分が演じているはずなのに、自分が自分ではないような不思議な感覚を味わいました。この感覚は何だろう、ぜひ確かめたいと思ったことが、舞台女優の道を決意した理由の一つです」。

 とはいえ舞台女優の道は、いばらの道。そこで、さとうさんはあることを決めた。「3年間は一生懸命に頑張る。3年でものにならなければ別の道を探す」というものだ。期限を切ることで雑念をなくし、芝居の世界に没頭した。

 最初は、ベテラン役者の付き人をし、身の回りの世話をしながら、人がどう演じるのかを見て学んだ。付き人時代は、出番の1分前まで付き人としての仕事をし、自分の出番が終わると、すぐに付き人に戻った。苦労はしたが、その分出演できる喜びは何倍にもなった。初舞台は、図らずも憧れの松平健さん主演の『弁慶』。この舞台から、さとうさんの舞台女優としての人生がスタートした。


“夢の一歩手前”という気持ち
 数々のオーディションを受け、何度も失敗した。『レ・ミゼラブル』のオーディションも、実は以前一度落ちている。悔しくて、会場そばの駐車場で泣き崩れたこともあった。

 そして、ついに転機が訪れる。ある日、世界的な演出家であるジョン・ケアード演出の『ジェーン・エア』のオーディションに行くと、なんとジョン本人がいるではないか! 「緊張のあまり、一瞬帰ろうかと思いました(笑)。でも留学経験もあり、外国の方と話すのに慣れていたんですね。うまく自分の中でスイッチが切り替わって、すごくオープンな気持ちになったんです。気付いたら『何曲歌っていいの?』なんて聞いていました(笑)」。

 そして、見事にオーディションに合格。さとうさんが役者を始めて3年目のことだった。「舞台初日はものすごく緊張しました。セリフに『いつか神様がご褒美をくれるはず』というのがあって、『これって私のことだ!』と一人で思ったりして…。役者を続けられることが本当に嬉しかったですね」。

 やがて、同じくジョン・ケアード演出の『レ・ミゼラブル』のオーディションにも合格。2度目の挑戦で、高校生のころから想い続けた夢を、見事にかなえることができたのだ。「合格したときは嬉しく思うともに、これから先のことも考えました。私は“こうなりたい”という夢が実現しても、まだ“夢の一歩手前”だと思うようにしています。それが、次に向けて頑張る原動力になっているのです」。

 最後に、後輩へのメッセージを伺った。「心に強く思ったことは、きっと形になっていくはず。ドキドキ★ワクワクするようなことを見つけて、それを続けていれば、必ず将来につながるものが見えてくると思います。ぜひ頑張ってくださいね」。


さとう  未知子さん

楽屋の化粧台前に飾られたお客様から贈られたプレゼントやお花。好きなものに囲まれてメイクをする ▲楽屋の化粧台前に飾られたお客様から贈られたプレゼントやお花。好きなものに囲まれてメイクをする

さとうさんが自宅に飾っている千秋楽に配られた大入り袋。袋にはさとうさんが出演した作品の名前が
▲さとうさんが自宅に飾っている千秋楽に配られた大入り袋。袋にはさとうさんが出演した作品の名前が

「藤沢周平劇場 山桜」(三越劇場、2008年)にて武家の娘役
▲「藤沢周平劇場 山桜」(三越劇場、2008年)にて武家の娘役

「ジェーン・エア」の稽古中。芝居の中では表情ががらりと変わる!
▲「ジェーン・エア」の稽古中。芝居の中では表情ががらりと変わる!

 

 
1253号 2011年8月4日掲載