学生注目!

知りたい、伝えたい、
農山村の価値
~私にとっての三重県大杉谷地区~

人間科学研究科修士課程 2011年3月卒業 川越 美里

 高齢化率約70%、過疎化が進み、「限界集落」と言われる三重県多気郡大台町大杉谷地区と出会って3年になる。町の中心部から約30km、山々に囲まれ川のせせらぎが聞こえる、どこか寂しい雰囲気の集落に入ってみれば、そこには温かく明るい住民がいた。
 所属していた天野正博・環境管理計画学研究室では、三重県多気郡大台町の各地で地域活性化に向けた調査をしている。参加して2年目、大杉谷への訪問をきっかけにこの地は私の卒業論文、修士論文での調査地となった。

 修士2年の夏、私は泊まるところも決めずに寝袋を持って一人で大杉谷に向かった。どこかで寝ればいいと思っていたが、結局私は4軒のお宅にお世話になって1週間を過ごした。突然やってきた学生に地域住民の方々が朝昼晩の食事と布団を用意してくれたのだ。独居の高齢女性は畑で採れた野菜を使い、おいしい料理でもてなしてくれた。一緒に食事をしたり、散歩のついでに湧水を汲みに行ったり、共に生活をしながらたくさんの話をした。動植物の名前や習性、畑づくり、昔の大杉谷の様子、生活の知恵や技術をはじめ、家族のあり方や人付き合いなど、私は何か大事なことに気づかせてもらったように思う。

 私はその年、合計13回・56日間大杉谷に滞在して調査をしたが、私は調査者としてのみ存在していただけではなかった。調査と言ってこちらの都合のよいことだけ聞いて帰ってくるのではなく、私個人として住民との関係を持ち、自然な会話をすることで、都会や自分の生活環境には無いもの、親からも学校でも教わらなかったことを学んだ。気がつけば大杉谷は私にとって、ただの調査対象地ではなく「ふるさと」と言えるような場所になっていた。

 今、全国の農山村で過疎高齢化が進行し、伝統文化の消滅、森林の管理不足、地域社会の崩壊、住民の生活の質の低下など、さまざまな問題を伴いながら価値ある農山村が消えようとしている。私は修士課程終了後、大杉谷に住む。もっと知りたい、伝えていきたい。

天野研究室での調査(OBも参加)
▲天野研究室での調査(OBも参加)


川面は鏡のように山々を映し出す
▲川面は鏡のように山々を映し出す


大杉谷卓球クラブ忘年会&私の誕生日祝い
▲大杉谷卓球クラブ忘年会&私の誕生日祝い

 
1252号 2011年7月28日掲載