ぴーぷる

ココロの天の河を渡る“OriHime(オリヒメ)” を開発
ロボットで日本を元気にしたい

吉藤 健太朗さん


■よしふじ・けんたろう
1987年奈良県生まれ。奈良県立王寺工業高等学校卒業。本学創造理工学部5年。中学生のとき「ロボフェスタ2001」関西大会で準優勝。そこで出会ったロボット開発の師匠に弟子入りするため、工業高校に入学。車椅子の開発で「JSEC※1」で文部科学大臣賞、世界大会の「ISEF※2」でエンジニアリング部門3位を受賞。19歳のとき奈良文化折紙会を設立。折り紙を通じて地域のつながりを生み出し、奈良から折り紙文化を発信している。そのほか、野外活動で子どもたちの世話をし、火を振り回してファイヤーダンスを踊り、友人をもてなすために果実酒を仕込むなど、語り尽くせないほど多彩な顔を持つ。苦手なことは料理。一人暮らし4年目にしてやっと炊飯器を使いこなせるようになったとか。

※1 JSEC(Japan Science & Engineering Challenge)ジャパン・サイエンス&エンジニアリング・チャレンジ。科学技術の将来を担う高校生の育成を目的に開催される朝日新聞社主催の科学技術自由研究コンテスト。優秀な3研究をISEF にファイナリストとして派遣する。
※2 ISEF(International Science and Engineering Fair)国際学生科学技術フェア。世界中50カ国以上から集まる1,500人以上の高校生が、各々の研究を発表するコンテスト。世界最大級の「科学技術のオリンピック」。



Orihime  

■OriHime-オリヒメ-
生年月日:2010年6月22日
自由度(関節数):24
素材:プラスチック&カーボンファイバー
好物:11.1V/1300mA
趣味:Skype
ひと言:私の映像を見たい方はこちら(http://www.youtube.com/watch?v=40wUVjXh9gs)まで♪
ウィークリーWebページにもアップしてもらいました。


 いつもの飲み会に、遠く離れた場所にいる友人が、分身のロボットで参加する。友人はパソコンの画面を通じて飲み会の輪に入り、お腹を抱えて笑えば、ロボットも同じ動作をする。居酒屋にいるみんなは、ロボットに話しかけ、まるで友人がその場にいるような気持ちになる…。そんな光景を可能にするのがその名も“OriHime”という名のロボットだ。

 このOriHimeをモーター以外のすべてを一人で設計、開発しているのが吉藤さん。「OriHimeは、距離や身体問題を克服し、人と人をつなぐコミュニケーションデバイスです。遠く離れた一人暮らしや入院など、会いたい人に会えない人の力になれる発明をしたい。その思いがOriHimeの原点です」。

 小さい頃からものづくりが大好きで、折り紙をしたり、段ボールや牛乳パックでおもちゃを作ったりと、常に手を動かして遊んでいた吉藤さん。「特に折り紙は私の原点。あらゆる興味が、折り紙から始まっています」。  工業高校に入学し重油の匂いのする青春を送っていたとき、絶対に傾かず、段差を昇れる車椅子を開発。「JSEC※1」で文部科学大臣賞、世界大会の「ISEF※2」でエンジニアリング部門3位を受賞した。一躍、地元の有名人となり、高校野球の地方予選甲子園の始球式をオファーされるほど注目を浴びることに。「車椅子の開発が世間に知られたことで、お年寄りから普段困っていることを相談されるようになりました。それで分かったのは、身体的な悩みよりも、人に会えないことによる寂しさからくるストレスを解決しなければならないということでした」。

 高校卒業後は高等専門学校に編入し、人工知能を学びながら、寂しさを癒すロボットを作ろうと考えていた。しかし、折り紙のボランティア活動で、人と人が折り紙を通じて交流し、楽しそうにしているのを見ていて、「人とロボット」の形ではなく、「人と人をつなぐロボット」が理想という思いに至ったという。

 その後、本学創造理工学部に進学。自宅のアパートに旋盤やフライス盤を持ち込んで、ものづくりの腕を磨く一方、パントマイムサークルに入って身体の動きを研究。身体全体で感情を表現するOriHimeの開発に生かした。片足立ち、モデル立ちまで自在にできる動きは、実にチャーミングだ。「早稲田にきて良かったと思うのは、熱意に溢れた尊敬できる仲間がたくさんいることです。各学部それぞれの分野でいろいろなことを考えている友人から刺激を受けて、自分の想像の幅が広がるのが大学生活の醍醐味ではないでしょうか。僕自身も、ものづくり職人の感覚からさらに視野が広がって、ロボットで社会のニーズに応えていきたいと思うようになりました」。


友人同士のだんらんの場にもちゃっかりOriHimeが
▲友人同士のだんらんの場にもちゃっかりOriHimeが
  ▲折り紙教室では子どもたちも大はしゃぎ
▲折り紙教室では子どもたちも大はしゃぎ


 今後は、OriHimeの実用化を視野に入れた研究をすべく、さまざまな機関にプレゼンをしたり、スポンサーを探したりと活動を広げていく予定。「OriHimeがインテリアのように家庭に入っていくことを目指したい。また女子高生が携帯と同じ感覚でロボットを手にするような『ロボット革命』を起こしたいです。人と人をつなぐロボットで、日本を元気にしたいですね!」。

 初対面の相手には、折紙でバラの花を作って、その場でプレゼント。細やかな気遣いでエンターテイナーを地でいくそんな吉藤さんだからこそ、人の心を癒すOriHimeが生まれたのだろう。人と人の間に流れる“心の天の河”を渡るOriHimeとともに人と人の新しいコミュニケーションの形を見せてくれるに違いない。


 

吉藤 健太朗さん
▲吉藤 健太朗さん

OriHimeと

 

OriHimeの動き

実用化に向けて

 
1249号 2011年7月7日掲載