障がい学生支援室の 活動を通じた ボランティアの絆
 
7号館から「耳」で震災ボランティア ー携帯電話を利用した情報保障※ー

 早稲田キャンパス7号館1階にある障がい学生支援室では、聴覚障害・視覚障害・肢体不自由の学生が障害により学習の機会を妨げられないようにさまざまなサービスを提供しています。この中に、聴覚障がい学生が受講する授業の音声情報を、2名のボランティアがパソコンで文字化するという方法があります。これを本学のボランティアが、遠く離れた被災地、仙台市の大学の障がい学生に対して、携帯電話の通話、通信機能を使って支援する活動を本年5月から行っています。
 震災後、被災地の大学ではボランティア学生自身が被災するなどで支援が立ちいかなくなり、この窮状を知った「日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan)」の呼びかけにより、全国の13大学の学生たちによる支援が始まりました。本学では、障がい学生支援室で活動している学生たちが、現在仙台市の宮城教育大学と東北福祉大学の聴覚障がい学生が履修する授業での支援をしています。

※情報保障とは障害により情報が得られない人に対し、代替手段で情報提供すること

 被災地の大学から要望があれば、この活動は後期以降も続く予定です。被災地になかなか行けないが、なんとか支援や復興の役に立ちたいと思っている方、7号館1階でその思いが実現できますので、興味のある方は障がい学生支援室にご一報ください。

震災をうけて、一人一人が出来ること
学生ボランティア
人間科学部4年 関田 久美子さん
 東日本大震災後の春休み期間を利用して、現地までボランティアに赴いた学生さんも多いことと思います。私も、日本全体が緊張状態にある中で「今、自分がするべきことは一体何なのか」と随分悩みました。連日報道される、恐ろしい光景や辛く厳しい現実…。私は大学院の推薦入試を控えていたこともあり、不安の中にある家族を置いて遠方に向かうこともできませんでした。なにより現地で役立てるだけの知識も経験もありありません。せめても勉学に集中しようと思っても気ばかりが焦り、正直言って春休み後半はあまり有意義に過ごせていなかった様に思います。私自身、震災で怯えきってしまったのかもしれません。

 そんな中、障がい学生支援室の方から今回の宮城教育大学の遠隔支援のお話を伺いました。普段行っていることの延長で、被災した方々のお役に立てる。こんな嬉しいことはありません。早速、早稲田大学内で遠隔支援設備の準備段階から、関わらせていただくことになりました。

 実際の遠隔支援では、利用学生さんの隣で行うパソコン通訳とは違った難しい点もあります。そこを現地の支援学生と補い合い、まさに一緒に授業を受けているような感覚です。普段の支援でもそうですが、利用学生の学びに対する姿勢には、私自身が毎度奮い立たされる思いです。

 復興に向けて一人きりでは、出来ることは少ないかもしれません。その分、限られた出来ることの中から、自分にできることを真摯に行っていくべきであると感じています。そうした一人ひとりの心がけが通じ合い、広がっていくことで、復興に繋がっていくと私は信じています。
 
▲支援中の様子。右端が関田さん


▲関田さんがパソコンで入力している文字。 「板書の音」や「咳」も表現している
 
支援者、被支援者が綴る障が い学生支援の魅力
 障がい学生支援は、普段は学内の教室で「普通に」行われている。そこに関わる障がい学生とノートテイカーに、ふだん感じていることについて、教えてもらいました。
被支援者の声

私たちのニーズ
人間科学部4年 志磨村 早紀さん
 大教室で、『走れメロス』を順番に音読していく授業がありました。私の隣にいる支援者は、学生の読むスピードに合わせて文章をペンでなぞってくれます。早口の時はサーっとペンが走り、つまずきながら読んでいる時は、ペンの動きもぎこちない。登場人物になりきって読まれたセリフの後には、【セリフ上手い!】と書き込まれ、面白い読み間違いがあった時は、漢字の上に読み違ったふりがなを入れて説明してくれます。それを読んだ私は、周囲の学生に少し遅れてクスッと笑う。こうして私は「臨場感」を得ながら授業を受けているのです。

 授業での支援を受けるようになって、早4年目。最初は支援を受けることに慣れなかった私ですが、今では支援がつかない授業を受けるなんて考えられない程、支援の必要性を実感しています。私の両隣に支援者が着席していると、安心して授業に臨むことができます。何より、自力では得にくい臨場感を味わえるのが情報保障の良いところなのです。

 支援を受けていて最も良かったことはかけがえのない出会いです。長い付き合いのある支援者とはその分、信頼関係も強いです。支援者との出会いは私自身を成長させてくれたと感じています。今も支援を必要としている聴覚障がい学生は多いのです。これを読んだ方が一人でも多く、情報保障に興味を持ってもらい、大学生活に更なる充実をもたらすきっかけになってくれたら、と願ってやみません。
 
▲志磨村さん(左)と、友人で支援者の中村有希さん
支援者の声

ノートテイク
法学部2年 三好 達也さん
 私がノートテイクを始めたのは、1年生の春のことです。所属している「手話さあくる」の先輩にその存在を教えてもらったのがきっかけでした。何となく始めたノートテイクだったので、当時は情報保障について深く考えていなかったように思います。

 情報保障の形は大学によってまちまちです。昔と比べ多くの大学で情報保障を行っているという話を聞きますが、全ての大学や専門学校で情報保障の仕組みが確立しているわけではありません。そもそも情報保障とは何なのでしょうか。人によって考え方は違うと思いますが、私は『今を共有すること』だと思っています。講義内容だけではなく、教授のギャグで学生が苦笑いする。そのような何気ないことも含めて、共有すること。同じ場所で講義を受けている。その感覚を味わうために、ノートテイクなどがあるのだと思っています。

 先日、ろうの友達に言われました。「聴覚障がいとはいっても、人によって聞こえ方は違う。考え方ももちろん違う。だけど、聴覚障がい者はみんな同じであるかのように見られることも多い」と。私も大学に入るまで、難聴やろうの皆さんに会ったことがなかったので、聴覚障がいについて何のイメージも持っていませんでした。やはり、実際に話してみないと分からないこともたくさんあると思います。私も話すようになって、難聴者もろう者も聴者も誰ひとりとして同じ人はいないというのを強く感じるようになりました。変なことをしでかして、周りの空気が凍りついた時、「三好さん、すべりすぎです」などといちいちツッコミを入れてくるかわいい?後輩もいれば、初対面だというのにスキーのやり方を一から丁寧に教えてくれる人もいる。普段はあまり意見を言わなくても、一対一で議論が白熱すると、どんどん意見を言ってくれる人、法律家を目指して勉強している人、音楽が好きな人、嫌いな人…。いろんな難聴やろうの方々に出会いました。そして、そのような人って聴者でもたくさんいますよね。

 講義の時はいつもテイカーが隣にいる。だから話しかけづらいと思う人もいるでしょうが、テイカーは空気のようなものです。どんどん話していきましょう! 聞こえる、聞こえない関係なく、おしゃべりは楽しいですよ。
 
▲「手話さあくる」で活動中の三好さん
■障がい学生支援室
URL:http://www.waseda.jp/student/shienshitsu/
E-mail:shienshitsu@list.waseda.jp
1248号 2011年6月30日掲載