先輩に乾杯!進路に迷ったときに読む、 身近な先輩へのインタビュー

流行語「草食男子」で
新たな時代を呼び込む

コラムニスト/編集者
深澤 真紀さん

■ふかさわ・まき
1967年、東京都出身。埼玉県立浦和西高等学校卒業。1990年、本学第二文学部社会専修卒業。卒業後は編集者となり、出版社に勤務。1998年に企画会社タクト・プランニングを設立し、代表取締役社長となる。2006年に日経ビジネスオンラインの連載で「草食男子」「肉食女子」という呼称を使用して世間の注目を集める。現在はさまざまなテーマで執筆や講演を行うほか、フジテレビ『情報プレゼンター とくダネ!』でコメンテーターも務めている。

 今回ご登場いただく先輩は、「草食男子」の名付け親でもあるコラムニスト・編集者の深澤真紀さん。学生時代から現在まで貫き続けている「邪道であまのじゃく」な生き方、そして「草食男子」の誕生秘話などについてお話を伺った。

勉強すれども「優」は少なき学生時代
 小学生のときに五木寛之さんの『青春の門』を読んで本学を知った深澤さん。「主人公の学生が、アルバイトで血を売ったりする生活がかっこいいと思ってしまったんです。早稲田に入ればそういう世界があるのかと憧れていたんですが、私が入学するときにはとっくにそんな時代ではなかったですね(笑)」。
 高校時代に本学の女子学生が作るホンネの就職情報誌『私たちの就職手帖』を知り興味を持った。当時の日本はバブルを控えた空前の好景気。女性の就職といえばOLか公務員という時代にあって、就職を真剣に考え抜く姿勢が新鮮だったと深澤さんは話す。

 1986年に本学第二文学部に入学してからは、さまざまな「ミニコミ誌」の編集に携わった。大学生協の冊子や文学部の専修進級ガイドブック『ぶんぶん』、また3年生からは『私たちの就職手帖』の副編集長も勤めた。「『ぶんぶん』は発刊の中心メンバーだったので、思い入れが強かったですね。各専修の先輩方にどのような勉強をしているのか取材をするのですが、自分はそんなことばかりやっていたので、成績も良いはずもなく、卒業前に教授から『優が3つしかないとは信じられん!』と言われたことも、今では懐かしい思い出ですね(笑)」。

肯定の意味で使い始めた「草食男子」
 卒業後、出版社で働くようになった深澤さんは“人がやらないこと”に着目し、積極的に取り組んだ。「昔から子どもっぽいあまのじゃくなんですよ。王道なんて放っておいても誰かがやるから、自分は邪道を担当しようかなと(笑)。入社して最初に手掛けたのも『プライベート・ゲイ・ライフ』という本で、クリスチャンの社長を毎日説得して発行にこぎ着けました」。このほかにも、既存の価値観にとらわれないテーマを取り上げた企画を次々に提案した。
 今でこそ広く認知されているテーマであっても、当時は「時代に合わない」と周囲から反対されることも多かったという。「まあ、バブル時代にあるまじき企画でしたね。多くの企画が失敗しましたが、邪道なんてやってたらそうなってしまいますよね。当時の関係者には迷惑をかけました」。

 深澤さんは、今では広く社会に浸透している「草食男子」の名付け親でもある。実はこの言葉、もともとは現代の若者たちを応援するために使い始めたのだそうだ。「2006年に私と同年代の編集者が『いまどきの若者はダメだ』ということを口にしたのでカチンときちゃって。『私たちも大学を出たころは、先輩方から“新人類”とか呼ばれて嫌な思いをしたでしょ?今の若者にも同じことをするわけ?』と、もう大げんかでしたよ」。「そこまで言うなら何か若者を応援する企画をやってくれ」と話が進展してスタートしたのが、日経ビジネスオンラインで連載された『U35男子マーケティング図鑑』。深澤さんは、現代の若者が消極的と言われているのは、考え方がフラットで、背伸びをせず、自分の立ち位置を理解しているためではないかと考えた。そんな若者たちへの肯定意見を打ち出したいと執筆を始めた。

 しかし、事態は思わぬ方向に進んでしまう。「ネット上で散々叩かれたし、最近は若者に元気がないことを指して草食化と言われています。結果的に上の世代の人たちへ若者叩きの言葉を与えてしまったかも知れない、とても申し訳なく思っています。最近なるべくメディアに露出するようにしているのも、そんな誤解を解きたいとも思うからです」。

リア充の呪いにとらわれない生き方をしてほしい
 世間では、バーチャルではないリアルな実生活の充実を意味する「リア充」というキーワードが頻繁に使われている。例えば、たくさんの友人を持っていたり、サークル活動や集まりにも積極的に参加し、コミュニケーションの輪を広げることイコール「リア充」と思われているが、深澤さんはそれが絶対的な価値観ではないと考えている。「自分が『リア充』だと感じている方はそのままでいいけれど、そうでない人も気にする必要は全くないですよ」。このように話す理由は、ご自身の学生時代にある。人とのコミュニケーション以外にも一人でいる時間であったり、本や映画などから多くのことを学んだと感じているからだ。「最近では、無縁社会を叫び、恐怖心をあおっているような報道も多いように感じます。私はメンテナンスが面倒くさいので人間関係を狭くしていますし、人の生き方はさまざまですよね。メディアから発信されるキーワードの多くは、大人の作り出したものです。それに流されず、自分なりの生き方を見つけてほしいと思います」。

 最後に深澤さんの今後について聞いてみた。「これからも邪道を突き進みます、と言えば収まりがいいのかもしれないけど、正直分からないですね。人の生き方って周りの人や社会情勢にも影響されるし、ネット上で叩かれるのもそろそろしんどいし(笑)。でも『小さな権力』を持ってしまった大人として、若者を叩くことだけはしたくないですね」。どこまでもあまのじゃくな深澤さんの生き方。独自の視点から生み出される意見に今後も目が離せない。


深澤  真紀さん


深澤  真紀さん


深澤  真紀さん


『働くオンナの処世術』(日経BP社)深澤さんの最新刊。現代の働く女子の張り詰めた心をほっと軽くしてくれるコラム集。「日経ウーマンオンライン」の人気連載「平成働き女子のための処世術」を書籍化
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 『草食男子世代―平成男子図鑑』(光文社・知恵の森文庫)今どきの若い男性像を絶妙なネーミングと鋭い視点で描いた深澤さんの話題作。日経ビジネスオンラインで連載された「U35男子マーケティング図鑑」をまとめた『平成男子図鑑』を改題し文庫化
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1246号 2011年6月16日掲載