會津八一記念博物館所蔵 『明暗』

山崎勝男先生(スポーツ科学 学術院教授)
▲横山 大観・下村 観山 1927年合作 直径445cm

 會津八一記念博物館は、1925年に早稲田大学図書館として建築されました。この建築の設計に携わったのが、後の理工学部教授今井兼次です。今井はその構想の段階から、図書館の大階段には大きな絵画をかけるべきであると考えていました。

 当時、今井は次のように語っています。「ただ私一個の考えとしては大階段室、直径十五尺円形壁画の題材であります。これについてはいろいろの人々によって希望なり意見があると思います。私は極表徴的な構図にしたいと存じております。正面大広間より大階段室への建築構想は強い表徴を描いているからであります。(中略)これに当たるべき画題がなく作者がいないならば、次の時代へと遺していくぐらいの自重がほしいと思っています」。

 今井がこれほどまでにこだわり、図書館の精神を象徴する要と考えていたこの場所には、横山大観・下村観山の合作によるこの《明暗》が掲げられることとなりました。ホール南側にある大扉を背にし、この《明暗》に向かって歩を進めてみてください。大階段に近づくにつれ、隠れていた太陽が徐々にその姿を現すのを体感できるはず。漆黒の暗雲の中から日輪が上るその瞬間を描いたこの大作は、大学という場で学ぶことによって、暗闇から明るい世界へと進みうることを示しています。今井や、この絵画制作に携わった多くの人々の思いは、絵画という理念となってこの場所でいまも学生を見守り続けています。

メインホールから観た《明暗》
▲メインホールから観た《明暗》

 
1242号 2011年5月19日掲載