こんな授業!どんなゼミ?

「教育臨床心理学特論」
〜文化的・社会的、歴史的視点を踏まえて〜

人間科学研究科2年 小林 美佐子


 「教育臨床心理学特論」は240人超の学生(大学1年生から院生まで)が受講し、「ひきこもり」「攻撃性や犯罪」「癒し」など、心理臨床(教育臨床)のテーマについて、事例をもとに講義が進められる非常に刺激の多い講義である。

 講義で取り上げられる事例は、主に受講生(大学生)と同世代の人々の関わるような社会問題である。事例にまつわる多くの参考文献や資料の紹介のほかに、当時のニュースやドキュメンタリー映像、映画なども視聴する。社会問題を引き起こした個人については、生育歴、家庭環境、性質までも焦点化し解説される。また文化的側面、歴史的側面からも問題を俯瞰することで、世の中がさまざまな人・個人・個性で成り立っていることや、自己と他者との関係、自己実現や生きるということについても理解を深めてゆく。「狂気」のせいにして恐れたり、理解不可能と考えていた社会問題の数々を、文化・社会・歴史的に形成される産物として、受講生自身が身近な問題として考えるようになる。

 講義ではこうした社会問題をテーマに、レポート課題が半期で2回出される。提出されたレポートの数人分が紹介される。同じテーマについても、批判的、共感的、同情的など、さまざまな捉え方や意見を共有することで、すべての受講生もそれぞれ違う個性や生育歴を持って生きている事を再確認する。

 ものごとを自分に引きつけて考えたり、離れて鳥瞰してみること。そして現代社会に溢れる情報のイデオロギーや感情に流されず、冷静に知的に、広くさまざまな視点から自分なりの考えを導き出し、自分の輪郭をはっきりさせることの重要性を学ぶことができるのだ。

 授業の回数が重ねられるごとに、大教室の席が前から埋まっていく。このことからも、人を惹きつける暖かい語り口調の菅野純先生の講義に、学生たちが引きこまれていくことがよく分かる。幅広い知識や知見が惜しみなく提示されるこの講義は15回でもまだ足りない思いである。

山崎勝男先生(スポーツ科学 学術院教授)
▲菅野純先生(人間科学学術院 教授)

脳波測定電極の装着
▲授業では大教室が一杯に

 
1242号 2011年5月19日掲載