わせだかいわい 

早大東門前 大隈通り
記念ペナント オギワラ

元米国大統領クリントン氏も依頼した
オリジナルペナント

 記念ペナントを製作する店である「オギワラ」が早稲田の大隈通り商店会に開店したのは、昭和8(1933)年のこと。はじめは現在の東門前ではなく、大隈講堂横にあった。戦時中の建物疎開によって当時の店舗は取り壊され、戦後再び早稲田に新たな店を構えたという。「子どものころからずっと家の手伝いをしているうちに、気付いたら二代目になっていたんですよ」と、ニコニコと気さくな笑顔で語る荻原久昭さん。

 もともとは紳士服の縫製からスタートし、早稲田に店を構えてからは学生服を作っていた。当初は現在扱っている角帽やペナントよりも、学生服が主力商品だったようだ。「オリジナルのペナント製作を始めたのは、実は母のゆき子なんです」。はじめは一般的な三角形のペナントを細々と作っていたが、お客さんの要望でネームや年号を入れ始めたことをきっかけに、1枚からでもペナントの受注製作をするようになり、いつの間にかオギワラはペナント専門店になっていたのである。オリジナルペナントは、口コミで評判となり、元米国大統領クリントン氏も早稲田に訪れた際に依頼する程であった。

お任せします!
 オギワラのペナントは、荻原さんがすべて手作りしている。ペナントに書かれた文字・イラスト・校章は、圧縮布(ペナント生地)を切り抜いて作っている。文字は鏡文字に切り抜く。一見単純な作業のようだが、複雑な文字も多く熟練した技術が問われる。

 オギワラのオリジナルペナントは東京近郊だけにとどまらず、全国各地から注文が入る。「デザインはお客さんと相談して決めるのですが、『お任せします』と言われるときはとても身の引き締まる思いがしますね」。プレゼントとして贈られることも多いペナントは、誰かの思いを届ける大切な使命を持っているのだ。

伝統に思いを託して
 特にオギワラのオリジナルペナントは、卒業シーズンには後輩から先輩に贈られる。「どの学生さんもすごく熱心に考えたアイデアを持って来てくれます。早大生はいつの時代も変わらず、上下の結びつきが強いしね。たぶんペナントは誰かのためっていうより、自分のために作っているんだろうね」。伝統を絶やさずに継承し、来年は自分も贈られたいという気持ちで、後輩は先輩の喜ぶ顔を思い浮かべながらアイデアを考える。「昔はペナントと言えばストーブを焚いてかじかんだ指を温めながら作っていたものだけど、最近は9月にも卒業式があるので、クーラーをつけながらペナントを作るものだからなんだか不思議でね」。

 父の富光さんの手伝いでペナントを作りはじめてから数十年、荻原さんはずっとペナントを作り続けている。「とにかく一生懸命作っているだけ。3、4年経つと自分が作ったものなんだけど、今だったらもっと上手く作れるなとかよく思っちゃうんですよね。『うちにもオギワラさんのペナントあるんです』と言って貰うと嬉しいんですけど、同時に『ちゃんと出来てるかな』って心配になってしまいます」。ペナント作りにゴールはないようだ。

 荻原さんが丹精込めて作ったペナントは、いつまでも大切に誰かの思い出と共にある。みなさんは誰にペナントを贈りますか?

看板はご主人の手作り


ペナント職人荻原久昭さん
▲ペナント職人荻原久昭さん

製作途中のペナント。早大空手部と慶応體育會空手部は毎年ペナントを交換している。このペナントは「體」の文字には苦労したそうだ
▲製作途中のペナント。早大空手部と慶応體育會空手部は
 毎年ペナントを交換している。
 このペナントは「體」の文字には苦労したそうだ


看板ウサギのQちゃんと妹・恵子さんと。Qちゃんがかぶっているのは早稲田のミニの角帽
▲看板ウサギのQちゃんと妹・恵子さんと。
 Qちゃんがかぶっているのは早稲田のミニの角帽


 
1232号 2010年11月18日号掲載