研究最前線

「サブサハラのガバナンス」
~アフリカ諸国の光と影~

◆片岡 貞治(かたおか・さだはる)/国際学術院准教授
本学政治経済学部卒業。パリ第一大学政治学博士。1996~2000年、在フランス日本国大使館(政務班:中東・アフリカ担当)。2000~04年、日本国際問題研究所(欧州・アフリカ担当研究員)を経て2004年4月より現職。専門は国際関係論、アフリカ問題、安全保障など。

 2010FIFAワールドカップ開催で、特に注目を集めるアフリカ大陸。成長目覚しいアフリカ諸国における問題や課題について、片岡貞治先生が解説する。


注目を集めるアフリカ

 第二次世界大戦が終了した1945年には、アフリカの独立国は、エジプト、エチオピア、南アフリカ、リベリアの4カ国のみであったが、「アフリカの年」と呼ばれたあの1960年には17の植民地が一挙に独立した。現在、アフリカ大陸には53の独立した主権国家が存在している。
 その「アフリカの年」からちょうど50周年を祝う意義深い今年2010年に、アフリカ大陸史上初のサッカーW杯が南アフリカで開催された。W杯の開催のみならず、現在、アフリカは安全保障、天然資源、移民、貿易・投資、経済協力、感染症、文化、文学、ファッション、観光等、さまざまな分野で今まさにアフリカが国際社会の注目を集めている。

アフリカをめぐる光と影

 アフリカの現状を如何に捉えるかという作業は、常に困難を伴う。というのも、世界の中でアフリカの占める位置について、多くの議論があり、往々にして相反する2つの流派が激突するからである。アフリカにおける紛争、貧困、汚職、感染症の蔓延、インフォーマルな経済活動、腐敗した政権などの「ネガティブな暗部を殊更に強調する一派」と、最近数年の経済成長を取り上げ、「バラ色のアフリカ、将来性のあるアフリカに重きを置く一派」とに大別される。
 先進国が光であるとすれば、アフリカは陰であろう。アフリカという陰も世界の一面であり、その陰は、アフリカと先進諸国との関係の結果である。アフリカの問題は、アフリカ人及びアフリカ諸国の責任の一端ではあるが、西側ドナー諸国にも責任があるのである。アフリカの問題は、国際社会全体の問題でもあるという認識から出発すべきである。
 経済的には、最後の成長大陸、最後の未開発市場、「BOP※1」等として、世界中の注目を浴びている。確かに、アフリカ諸国の政治経済状況は2000年以降、改善されつつある。世界的な天然資源の価格の高騰を受け、資源国は急激な経済成長を遂げ、それが原動力となり、非資源国も今までにない高い成長率を記録している。しかしながら、依然としてアフリカ大陸の人々の多くが、一日2ドル以下で暮らす貧困層である。2015年にデッドラインを迎える「ミレニアム開発目標(MDGs)※2」においても、アフリカ諸国の多くがその目標を達成できないと見られている。貧困層は依然と堆積し、深刻な失業問題にも直面している。

アフリカの紛争等解決に向けて

 また、武力紛争に関しては、1990年代にアフリカ大陸各地で頻発していた多くの紛争も収斂し、終息に向かっていった。しかし、ソマリアやダルフールの様に紛争が依然として継続中の地域やマダガスカル、ニジェールやコートジボワールなどの様な政情不安な諸国もある。
 こうしたことから見られるように、私の研究関心事は、アフリカ大陸全体における「紛争問題」と「開発問題」である。具体的には、紛争後の平和構築、アフリカ諸国におけるSSR※3、アフリカにおける選挙と民主主義、国際社会とアフリカ、ガバナンス、日本の対アフリカ政策、及び主要国の対アフリカ政策など多岐にわたる。そうした研究成果を踏まえて、各種講演会やシンポジウムを開催し、政策提言なども行いつつ、具体的な経済協力案件も発掘している。


※1 BOP(Bottom of Piramid):新興国市場を「援助対象」ではなく、消費者経済の底辺を担うという発想

※2 ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals:MDGs):国連ミレニアム宣言に基づき、国際社会が合意をまとめた2015年までに達成すべき8つの国際開発目標。

※3 SSR(Security Sector Reform):国家・社会における治安部門の改革・改善

片岡 貞治(かたおか・さだはる)/国際学術院准教授
片岡 貞治(かたおか・さだはる)/国際学術院准教授




ミレニアム開発目標2009
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サブサハラ・アフリカの国々
出典:外務省HP
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/af_data/
pdfs/ssa.pdf
)を一部改編

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1225号 2010年7月22日掲載