まるで生き物のように、白いヨーヨーが加川さんの手から自由自在に空間を飛び回っている。ヨーヨーがひもに結び付けられていない?「僕の出場する部門はオフストリングといってひもはただ芯に巻きつけただけの状態で3分間、演技を披露するんです」。ヨーヨーといえばその歴史は古く、紀元前500年前の古代ギリシアにおいてもヨーヨー遊びをする姿が花瓶に残されているくらいだ。「日本でも何回かブームがあったようですが、僕の場合は12年前、バンダイから発売された『ハイパーヨーヨー』がきっかけでした」。
手先が器用だったこともあり、じきにいろんな技のコツをつかんだ加川さん。技ができるようになると、もっとうまくなりたい、もっと高度な技を覚えたい、そう思うようになった。「生来の理屈っぽい性格のせいか(笑)、どうせ上手くなるなら最速最短の方法で上手くなってやろうと思いまして」。DVDや資料を独学で解析し、練習を重ねた。そのうち同好の士が集まり行っている練習会の存在を知り、積極的に参加。地区大会から全国大会へ、歩みを進めるうちに自分なりにつかんだことがある。「やっぱり練習時間が限られてしまう。効率よく練習をするにはどうしたらいいか? と考えた結果“ミスを減らす=ヨーヨーを落とさない”ことが一番だと。じゃあ、ミスを減らすにはどうしたらいいか? 答えは、飛ばしたヨーヨーを確実にひもでとらえればいい、なのですが…」。これが至難の技なのだ。「…なので、落下地点を点でイメージせず、平面でとらえるように意識しました」。つまり、あらかじめより広範囲でヨーヨーをとらえられるような動きをする事にしたのだ。結果、ヨーヨーの落下回数は激減し「バランスのよい動きもできるようになりました」。満足げに笑う加川さん。「でも、そうなるまでにどれだけ失敗したか…。自宅の床はヨーヨーがぶつかった跡だらけで、母が泣いています(笑)」。
もともとものづくりに興味があった。「生意気な言い方なんですが、生きている証を残したいという思いがずっとあって。技術的なものづくりに関わりたいと思い、早稲田に進学しました」。現在、創造理工学研究科の品質マネジメント研究室で、スイッチのボタンを押す時の指の感触や、電気シェーバーの剃り心地を比較し、よりよい品質を分析する研究をしている。ヨーヨーの技習得にも通じるのではないか?「実は、そうなんです。どうしたらもっとよくなるのか? それを探る過程は、品質研究もヨーヨーも本質的には同じでした」。
ヨーヨーが好きだ!と公言することにためらう瞬間もある。「実際に演技を見てもらうまでは子どもっぽい、とか思われるようで…(苦笑)」。でもヨーヨーは自分の個性であり、大切なコミュニケーションツールだ。「自分の好きなものなんだから、恥ずかしがらずに、どんどん出していったもん勝ちだと、早稲田で実感しました」。8月の世界大会に向けて、さらに技を磨く鍛錬の日々が続く。
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