研究最前線

「サッカーを科学する」
~ワールドカップに出場する選手たちをめぐって~


◆堀野 博幸(ほりの・ひろゆき)/スポーツ科学学術院准教授
本学人間科学部卒業。人間科学博士。防衛大学校助手、本学人間科学部専任講師を経て現職。専門はスポーツ心理学、コーチング科学。日本サッカー協会公認S級コーチライセンス取得(申請中)。U19日本女子代表コーチ、ユニバーシアード日本女子代表コーチ、JFAアカデミー福島アスレティックカウンセラーとしても活動。主な著書に『トップパフォーマンスへの挑戦』(共著)

 2010年は、サッカー最大のイベント「FIFAワールドカップ南アフリカ大会」が開催される。ここでは、トップ選手を取り巻く環境について、堀野博幸スポーツ科学学術院准教授が解き明かす!

C.ロナウドやR.メッシ選手はどのように創られるのか?

 2009年レアルマドリッドへ移籍したC.ロナウド選手の移籍金は約130億円(当時)といわれ、その高額な移籍金が注目を集めました。このような傑出したトップ選手は、決して人為的に創り出せないことが明らかになっています。世界で戦うためには、いかに傑出したTalent(タレント:才能を持つ選手)を早期に発掘育成できるが勝負となるのです。つまり、TalentのDetection(発見)→Identification(同定)→Selection(選別)→Development(育成)が極めて重要となります。このプロセスを効率化するため、選手の身体能力や心理的特徴などの観点からさまざまな研究が行われています。しかし、未だに科学的タレント発掘方法は確立されるに至っていません。

クラブと国レベルでのタレント発掘

 ドイツでは、12~15歳の選手を育成する拠点が366カ所設置され、クラブとサッカー連盟が協力しタレントの発掘と育成を積極的に推進しています。その成果が実り、2006年大会では、育成拠点で成長した若手選手が大活躍しました。日本でも、欧州各国の育成システムをモデルに、ナショナルトレーニングセンター(トレセン)制度などが整備されています。この制度では、16歳以下の優れたタレントを集め、市町村から全国の各レベルで定期的に練習を実施し、タレント発掘と選手のスキルアップを行っています。
それでは、厳しい競争を勝ち抜いてプロ選手になるためには、どのような要素が必要なのでしょうか。Neilら(2005)によると、プロ選手など高い競技レベルにある選手は、こども時代から練習時間が他のレベルの選手に比べ、極めて長いことが明らかにされています。つまりプロ選手になるためには、優れたタレントに加えて「競争的環境で早期から練習すること」が必要不可欠な要素となっているのです。

サッカーの最新戦術と「岡田JAPAN」

 近年の世界大会では、約60%の得点がボール奪取後15秒以内に生まれています(JFA,2006)。つまり、「ボール奪取後、迅速に相手ゴールに迫る戦術」が、勝負のカギを握っているのです。
「岡田JAPAN」は、日本選手の敏捷性、活動性、組織的協働などのストロングポイントを最大限に生かし、前線からの連動したプレッシング(相手への圧力)により高い位置でボールを奪い、素早くゴールへ迫る戦術を採用しています。この戦術・戦略は、世界の戦術傾向を分析したうえで、緻密に構築された戦術なのです。「岡田JAPAN」は、この戦術戦略を武器にしたため、南アフリカでの大活躍があるのです。
経験知と科学的分析が融合したサッカーの選手育成強化の中で、私の研究室では、スポーツ心理学とコーチング科学から、サッカー選手のパフォーマンス向上を目指した研究を続けています。

堀野 博幸(ほりの・ひろゆき)/スポーツ科学学術院准教授
▲堀野 博幸(ほりの・ひろゆき)/スポーツ科学学術院准教授


タレント発見・育成プロセス

日本型選手育成システム(JFA.2010)

理論と実践で選手の能力向上を追求する
▲理論と実践で選手の能力向上を追求する

 

 
1221号 2010年6月24日掲載