こんな授業!どんなゼミ?
「生命化学A」 生化学への船出

先進理工学部3年  井上 沙織


 生命化学Aは、教科書「Essential 細胞生物学」に沿って生命現象を原子・分子レベルからアプローチする授業であり、化学・生命化学科の学生が初めて生化学を詳しく学ぶ科目である。担当の小出隆規先生はコラーゲンの研究をしており、生化学に関して非常に精通している。なので、先生自身の体験談や関連する他大学の研究内容を交えながら説明をして下さり、毎回楽しく受講することができた。また、パワーポインタで教科書の図や動画を表示しながらの説明があり、私たち学生がイメージのつかみやすいように説明する工夫がなされていた。

 小出先生はちょっとした小道具屋さんのようでもある。「これ見てみぃ」といって先生が用意したのは折り紙。すでに「かぶと」に折られた折り紙であった。「展開してしまったら1つの折り紙やけど、折り方次第で出来上がるものがまったく違ってくる。これと似たようなことがタンパク質で起こっています」。説明しているうちに、かぶとが折り方を変えていくうちに魚になった。一見同じようなアミノ酸の紐でも、アミノ酸の配列によって折り畳まれ方が違い、生体内で異なる機能を果たすことがよく分かる例である。

 また、ある授業では長い棒状の筒を用意してきた。先生はその筒を教卓にまっすぐ立てて少し手を離す。すると棒が左右どちらかに倒れていきそうになった。「右か左か、どちらに棒が倒れるかはわからないが、手を離さない以上倒れることはない。このように『遷移状態』とは反応が起こるか起こらないかの不安定な状態なのです」。生体内では、このような不安定な化学反応の繰り返しで成り立っているのがとてもよく分かった。

 化学・生命化学科では、この「生命化学A」の履修が終わると、後期の生命化学実験で実験経験を積む、という流れになっている。小出先生の授業は、教科書の文字を追うだけにとどまらない。学生を飽きさせない工夫に富んだ授業を受けると、自然と実験や研究への興味もわいてくる。研究は、知識に基づく理論的な分析と実体験がバランスよく結び付いてこそ、やりがいがでてくるものだ。知識と実験の橋渡しをし、日々進歩する生化学の世界へといざなってくれるのがこの授業なのである。

理工学術院 小出 隆規 教授
▲理工学術院 小出 隆規 教授


タンパク質は「ひとりでに」折りたたまれる! なぜ? どうやって?
▲タンパク質は「ひとりでに」折りたたまれる! 
なぜ? どうやって?

 
1219号 2010年6月10日号掲載