学生注目!! 「これから」のための「これまで」

第一文学部4年 長坂 陽一


 一度は夢見る大学生活……といえば、多くの人がドラマの『オレンジデイズ』を挙げるが、私の頭に浮かぶ「大学生活」像は『神戸在住』の中で描かれるそれが最も近い。

 神戸在住』は、神戸の大学の文学部美術科進学と同時に、東京から神戸に移り住んできた女子大生辰木桂の大学生活の4年間を描いた漫画だ。手書き文字や、横線で濃淡をつける画風が特徴的である。桂は、大きく分けて英語文化研究部、油絵ゼミと、仲良しグループの3つのコミュニティに属している。いろいろな人と交わりながら過ごす桂の大学4年間で描かれるのは、経験の「積み重ね」であるように思われる。

 たとえば、桂の友だちの鈴木タカ美という女の子。英研の同期で、ゼミのクラスメイトでもある、大学生活で最もつきあいの深い人間だ。大学入学当初からいつも一緒にいる2人だが、ほんとうの友だちになれるのはもっとずっと後、卒業間際のこと。「ずっと友だちでいられるだろう」2人はいいことも悪いこともぜんぶ経験した上で、ようやく親友になれるまでにたどりつく。あっさりとネタバレをしているのは、私がそこに至るまでの過程をとても重要なものとしてとらえているからだ。物語が進めば進むほど「これこそが重要!」と思えるエピソードを抽出することはできない。なぜなら読み進むごとに、過去すべての出来事が影響し合いながら、現在につながっている…ということが強く伝わってくるからだ。

 大学生活の終わりを目前にして、私自身の4年間もいろいろなことの「積み重ね」だったように思う。多くのコミュニティで人と協力し衝突しながらも、かえることのできない仲間たちと信頼を深めることができた。漫画のようにはうまくいかないにしても、それなりに充実した大学生活を送れたと思っている。

筆者。戸山キャンパスにて
▲筆者。戸山キャンパスにて

 

『神戸在住』
▲『神戸在住』
木村 紺著。
月刊アフタヌーン(講談社)にて1998~2006年連載。全10巻。
本作品にて第31回日本漫画家協会賞新人賞を受賞

 
1208号 2010年1月21日掲載