えび茶ゾーン 

えび茶ゾーンの原稿は、全学の教員が交替で執筆しています。

 ちょうどロータリークラブの奨学生としてドイツに滞在して二カ月が過ぎたところだった。現地クラブの会合が毎週金曜にあり、留学生はしばしば昼食に招かれた。だがその日に集まった現地ロータリアンはいつもと違ってみな一様に興奮していた。会長のスピーチは「今日このような記念すべき日に……」という前置きから始まった。状況がのみこめない私たち留学生は、帰りに駅のキオスクで新聞を買って、事の次第をやっと知ったという後の祭り。二〇〇九年十一月九日「壁の崩壊」、その翌日のことである

 「壁の崩壊」という歴史的瞬間にドイツにいたが、だが周囲の動きからは完全に取り残されていた。小型テレビを買ってニュースを見たり、新聞を読んだりするようになったのは、「これではいけない」と思ったそのあとから

 先日の授業で「新聞の終焉?」というドイツ語の記事をとりあげた。インターネットの普及で購読者が減少し、新聞社もかなり苦戦している様子だ。クラスの学生に聞いたところ、「新聞を毎日読む」と答えたのは半数以下。新聞を読むどころかテレビも見ず、インターネットのニュースで十分だという声もあった

 たしかにインターネットは便利だ。世界中の情報に瞬時にアクセスできる。ただし関心のない情報を素通りする危険もあるのではないか。興味があることに集中するのは大事だが、幅広く世界の動きにも関心を向けてほしい。あの二十年前のような瞬間はいつ来るかわからない。(M・H)

 
1205号 2009年12月10日号掲載