政治学研究科 科学技術ジャーナリスト養成プログラム(MAJESTy)の学生取材による

MAJESTy(Master of Arts Program for Journalist Education in Science and Technology)とは、科学技術ジャーナリスト養成プログラムに付けられた愛称。MAJESTyの学生は、「科学技術の理解」、「ジャーナリズムとメディアの理解」、「建設的批判精神」、「現場主義」、「実践的スキル」、「未来志向」の能力を身に付けるべく学んでいる。
今回は、彼らに、来年の国際化学オリンピックの開催会場に決まった西早稲田キャンパスの「理工学基礎実験室」を取材していただいた。
実験室の中のようすが廊下から見える
▲実験室の中のようすが廊下から見える

伝統の「早明戦」ここに注目!
実験台の上に設置された排気装置
▲実験台の上に設置された排気装置

 どう変わった?40年ぶりに新しくなった理工学基礎実験室 !
本学理工学部が創設されたのは1908年。以来、100年余にわたり、常に日本の最先端の科学技術を支えてきた。理工系3学部の1年生は理工学基礎実験1A・1Bが必修だ。そのための実験室は56号館にあり、これまでも少しずつ改修されてきたが、今回、国際化学オリンピックの開催を機に2、3階にある化学系・生命科学系実験室が全面改修され、最新鋭の設備が導入された。

 

 

(1) ピカピカの実験室!
 真新しい実験台が並び、床も壁も真っ白。教員の説明がすみずみまで届くよう、TVモニターやスピーカーも設置された。他にも、快適な実験環境のためにさまざまな工夫がこらされている。

(2) 廊下から室内が見えるので安全!
 今回の改修ではドアや壁にガラスが多用され、室内がよく見えるようになった。このため、薬品を持った人が中にいるのに、外の人が気づかずにドアを開けてぶつけるといった危険が避けられる。ガラス壁のおかげで、実験の安全に欠かせない手元の明るさも確保できたという。

(3) 実験室の中も外もキレイな空気を!
 実験室の天井からは、おわんのような形をした排気装置がたくさんぶら下がっている。実験器具の真上へ動かしてきて、排気を確実に行える。実験で発生した気体に学生がなるべくさらされないようにという配慮だ。吸引した気体は屋上で処理された後、排出される。実験室の中で実験をする学生の安全だけでなく、実験室の外の安全も考慮しているのだ。

(4) 実験を支える強力なスタッフ!
 最新の設備・装置に加え、実験を担当する教員・助手や技術職員が効果的な実験の指導や安全確保をめざし、日々、工夫を重ねている。このような強力な体制は他大学には類を見ない。


 先進理工学部の桐村光太郎教授は「理工学の分野では、講義を聴いて学ぶだけではダメで、実験を通して自分の体験として物事を学ぶことが大切。自分の手を動かして学ぶ実験科目には、作り出す喜びや楽しさもある。その一方で、科学や工学の実験にはリスクが伴う。絶対に安全なのは実験をしないことだが、それでは社会に出て通用しない。安全への配慮が詰まった実験室でリスクに対する姿勢も学んでほしい」と、実験の意義とピカピカの実験室に込めた思いを語ってくれた。
改修された実験室
▲改修された実験室

全理工学部生が履修する基礎実験科目
  「理工学基礎実験1A・1B」では、理工系3学部の1年生全員が「実験のイロハ」を学ぶ。1A・1B共に物理系7項目、化学系3項目、生命科学系1項目の11項目で構成されている。実験項目は必要な技術を学べて、内容も学生が面白いと感じられるように年々改良されてきた。現在は、解熱・鎮痛剤として使われる医薬品アスピリン(アセチルサリチル酸)の合成や、ニワトリや鮭のDNAを抽出・増幅し、未知試料のものと比較する実験などを行っている。

 この科目で学生は科学の基礎的な概念、実験の手法やレポートの書き方、プレゼンの方法、安全や環境への配慮などを学び、将来の実験や卒業論文に備える。2年次に学科を選択する基幹理工学部の学生からは「この科目をきっかけに、進む学科を選ぶ人もいる」という声も。

生命科学系実験の一コマ
▲生命科学系実験の一コマ
化学系実験の一コマ
▲化学系実験の一コマ

 


世界中の高校生が化学の「力」を競う舞台に
 

来年日本で初めて開催される第42回国際化学オリンピックでは、改修された理工学基礎実験室が会場の1つとなる。国際化学オリンピックとは、世界の約70カ国、280名の高校生が一堂に会し化学の実力を競う国際大会だ。筆記が60点、実験が40点の個人戦で、上位約1割の生徒に金メダルが与えられる。出題内容は大学の理系学部1~2年で学ぶレベル。知識だけでなく、実験を自分でデザインし実行する能力も審査対象だ。早稲田での実験試験は会期の4日目にあたる7月22日に行われる。試験は5時間の長丁場。世界の高校生たちによる熱い戦いが繰り広げられる。


第42回国際化学オリンピック日本大会
主催:化学オリンピック日本委員会
会期:2010年7月19日(月)~7月28日(水)
会場:東京大学駒場キャンパス(筆記試験)
早稲田大学西早稲田キャンパス(実験試験)
ホームページ:http://www.icho2010.org/

生命科学系実験の一コマ
学生記者のコメント
実験室は、関係者以外はあまり見る機会がない場所。しかし安全について配慮され、明るくきれいなこの実験室を、多くの人たちに見てほしいと思いました。また、学科や専門の枠にとらわれない分野横断的な実験の授業。そこにこめられた「楽しんでほしい」「いろいろなことを学んでほしい」という先生たちの思いと、凝らされた数々の工夫が印象的でした。早大生のみならず、その家族や中・高校生にもこの取り組みを知ってほしいです。 
(政治学研究科MAJESTy 竹谷知永子、矢部あずさ、渡辺友一郎)
 
1202号 2009年11月19日掲載