研究最前線

自然な言葉で本を読み聞かせるブック・リーダ・ロボット
「二宮くん」in 北九州キャンパス

 本学の誇るロボット技術が、また新たな地平を切り開いた。
 北九州キャンパスにある大学院情報生産システム研究科の鎌田清一郎(理工学術院)教授が開発したブック・リーダ・ロボット「二宮くん」は、滑らかな音声で本を朗読する、人間共生型の未来のロボットだ。

◆鎌田 清一郎(かまた・せいいちろう)
理工学術院(情報生産システム研究科)教授
  1983年九州工業大学工学部卒業、85年九州大学大学院総合理工学研究科修士課程修了。日本電気株式会社中央研究所、九州大学大学院システム情報科学研究科助教授を経て、2001年より本学理工学総合研究センター客員教授、03年より現職。著書に『画像処理-画像表現・圧縮・フラクタル-』(サイエンス社)、訳書にH. Sagan(著)『空間充填曲線とフラクタル』(シュプリンガー・フェアラーク東京)など。

鎌田研究室 【URL】http://www.kamata-lab.org/

「二宮くん」にこめた想い
 本学情報生産システム研究科の鎌田研究室では、読み聞かせブック・リーダ・ロボット「二宮くん」(にのみや・くん)の公開デモを、2009年6月11日第49回 西日本総合機械展ロボット産業マッチングフェアIN北九州にて行った。これが、「二宮くん」の初舞台である。
 「二宮くん」は、機械的な音声ではなく、子供のように、あるいはソフトに優しく、などの感情を入れて人に本を読み聞かせてあげたいという想いから生まれた。「二宮くん」の実力はまだ小学校低学年程度のためまだ感情表現は豊かではないが、図書館での子供たちや介護施設でのお年寄り、視覚障がいのある方々への読み聞かせの実現を目指している。これまでの1年半の研究開発に対して、もっとも難しかったのがネーミングである。二宮金次郎をイメージしてデザインを考え、薪のかわりにパソコンを背負うというコンセプトは早い時期にできたが、名前がなかなか決まらなかったのである。結局、その名のとおり、「二宮くん」と命名したのは展示会の1カ月前だった。 

▲鎌田清一郎教授 理工学術院(情報生産システム研究科)
▲鎌田 清一郎 教授
理工学術院(情報生産システム研究科)

文字認識と音声合成の複合機能
 「二宮くん」には大きく分けて文字認識機能と音声合成機能が備わっている。目に搭載されたディジタルカメラから1ページの画像全体を読みとり、次に各文字を認識する。数種類のフォントの違いにも対応できるようになっているが、残念ながら学習されていないフォントの文字や手書き文字は認識できない。文字認識部の出力はテキストデータである。これをTEXT-TO-SPEECHで音声合成し、ロボット下部に搭載されているスピーカから声として出力する。現在、ひらがな、カタカナ、漢字、記号の2,300字種を登録しているが、今後さらに増やす予定である。また、スキャナではなく、ディジタルカメラを使っているため、照明の影響や本の文字サイズの影響を受けやすいのが大きな弱点となっている。今後、この弱点を克服し、認識性能をさらに向上させる予定である。また、音声合成する能力は、文字ごとの音声出力で、文脈全体を理解した感情の表現はまだまだこれからである。 

海外連携でさらなる発展と多言語化を目指す!
 今回の研究開発は、海外連携プロジェクトであり、上海交通大学の趙群飛教授、朱杰教授、北九州工業高等専門学校の山内幸治准教授との共同研究である。この海外連携プロジェクトは、2007年10月31日(水)に締結された北九州市・財団法人 北九州産業学術推進機構〔FAIS〕・上海交通大学の三者間「科学技術・人材交流促進等に関する協定」に基づいて実現したものである。この協定で上海交通大学は、本学情報生産システム研究センターに北九州研究室を開設、海外連携プロジェクトがスタートした。また、文部科学省が実施する知的クラスター創成事業(第II期)の「高速パターンマッチング回路の合成とその応用に関する研究開発」とも連携している。また、上海交通大学におけるロボットは、中国語と英語に対応している。
「二宮くん」は毎年バージョンアップを行い、随時公開していく予定である。

ついに登場「二宮くん」
ついに登場「二宮くん」


音読のメカニズム
音読のメカニズム



展示会ですらすら読み上げ、注目の的に
▲展示会ですらすら読み上げ、注目の的に

 
1199号 2009年10月29日掲載