日本語教育研究科で行われている「教材教具論」の授業では、特定の教科書を購入する必要は無い。この授業の目的は「教科書で学ぶ」ことではなく、いわば「教科書を学ぶ」ことである。
複数冊の日本語教科書を前に、教科書を分析するという課題が与えられる。「分析するって、何を?どうやって?」。受講生は数人のグループに分かれ、分析の観点や方法を模索して議論を繰り返す。所属の研究室や国籍などの垣根を飛び越え、それぞれの意見を持ち合い一つのグループとして協力しあう作業は、さまざまな発見や刺激に溢れたものである。
授業を担当するのは教材・教具研究室の吉岡英幸教授。学生の主体性を尊重しながら、作業が行き詰まった時には的確なアドバイスによって理論の道筋を立ててくれる。教材のエキスパートかつ、日研が誇る「ジェントルマン」でもある吉岡先生の授業は、毎年多くの院生が履修する人気科目である。
授業では各グループが出した分析結果をまとめ、全員で検討する。そこで明らかになった問題点がまた次の課題となるといったように、教材分析には必ずしも正しい答えや終着点は無い。
さらに、学期末には自分たちが作成した教材を使って模擬授業を行う。ほかの受講生が学習者の役になり、授業後には改善点などのフィードバックが行われる。自らが教師側だけでなく学習者側に立ってみることは、授業の進め方や教材の良し悪しを知るための良い機会となる。
課題について考え、発見し、他者の意見を聞きながらそれをまとめていく過程は、おのずと自らの気付きや思考を促し、研究に対する姿勢を構築することにも繋がっていく。大学院に進学したばかりで何も分からなかった筆者自身も、この授業を通して改めて研究の意義や手法について考えることが出来た。あらかじめ決まった答えを出すのではなく、自分で発見する。この授業で学ぶことは、専門やテーマに関わらず、必ず自身の研究にも活かすことが出来るだろう。
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