マレーシア・ボルネオ島で、フィリピン人移民集落の環境改善活動をするボルネオプロジェクトに私は所属している。昨年春までは、同島の山岳先住民族集落であるマンタラナウ村での交流も行っていた。私の『注目!』は、この村での経験をもとに作成した冊子のことだ。
マンタラナウ村で生まれた、「お互いに“しあわせ”を感じ考える場を創る」というプロジェクトの目標。参加した当初、私はこの目標を聞いてもあまりピンとこなかった。“しあわせ”を感じ考えるなんて、所詮“夢見がちな学生のきれいごと”と言われてしまうだろうと思った。もともと私は、他人と心の底から理解しあうなんてできるはずがないと思っていたし、コミュニケーションがうまく取れなくても仕方がないと諦めていた。だから、メンバーから何度も「あなたにとってのしあわせって何?」と聞かれても、曖昧な言葉しか口にできなかった。「しあわせって何なのだろう?」そんな疑問を抱えたまま、マンタラナウ村に向かった私だった。
村での生活は、自然のリズムとともに進んでいった。朝日の明るさで目が覚めて、夜になったり、雨が降ったりすれば暗くなる。物がなく静かな暮らしのなかで、感覚が研ぎ澄まされ、いろいろなことが響いてきた。会ったばかりの私たちに、村の人たちが注いでくれる愛情や親切。この出会いや思いを大切にしたい。そう思った時、私の価値観は180°変わった。身の回りに溢れる物は全て誰かの生活とつながっていること、そして本当は日々たくさんの人々との出会いを繰り返していることに気が付いた。見えていなかったつながりを発見し、大切にすることで“しあわせ”を感じられることを知ったのだ。
マンタラナウ村だけが素晴らしいのではなく、身近に“しあわせ”はあるのだということ。私たちはそのことを伝えたくてこの冊子をつくった。“しあわせ”について真剣に話したり考えたりするのはどこか恥ずかしい。それは自分の価値観や、今までの生き方を見せるのと同じだからだ。冊子を読むことでそのハードルを少し越え、多くの人に“しあわせ”についてもう一度考えてもらえれば嬉しい。
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