『地上の翼』のラストシーン、主人公ミトは家族や仲間を失い、ひとり生き残った幼なじみの少女イルハの手を握りしめ、つぶやく。『行こうイルハ…一緒に生きよう』。桑山さんにとってミトは、かつての自分を投影した部分を持つ少年だ。「人はよく自由になりたい、と言うけれど、何か大切なものを得たとき、始めて自由の意味が分かるんじゃないか?そんな思いをこめて描きました」。
子どものころから、映画が大好き。「だから入学してすぐ、サークルの映画撮影に参加しました」。撮影に夢中になりすぎ、疲労過多で入院。「療養中あまりにも暇だったので、漫画を描いてみたんです」。ペンを握り、ストーリーを考えていると時間が経つのを忘れた。「映画は監督がいて役者がいて…とそれぞれの役割を分担していますが、漫画は全部ひとりでできる。役者も、カメラも思い通りに動かせることに気付きました」。
読み手からつくり手になった桑山さんに、友人が教えてくれたのが『月刊ガンガン』。先輩に誘われコミックイベントに参加し、出版社ブースで 『月刊ガンガン』の版元を見つけた時、迷わず作品を持ち込んだ。厳しい道がここから始まった。アドバイスを受けながら仕上げた作品が出版社主催コンペで佳作を受賞、そして最新作『地上の翼』でプロとしての第一歩を踏み出したのだ。
「パワーがある場所で、いろんな人と出会いたいと思っていたので、早稲田はまさに理想の大学です」。漫画に限らず多種多様なつくり手がいる早稲田だからこそ「ますます負けていられない」と言う。
周囲には就職活動を開始した友人もいる。「不安がない、と言ったらうそになるけど…自分の大切なこと、僕にとっては漫画を描き続けることにしつこくしがみついていきたいと思っています」桑山さんは、はにかみながら言葉を続ける。「将来『あの時、やっておけばよかった』と思いたくないだけなんですよ」漫画一本で自立するためにも、まずは実力をつけるしかない、と桑山さんは力強く言い切った。
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