「スキーの滑り、滑走順序、レース展開…さまざまなプラス要因が僕たちチームに味方しました。まるで僕らが勝つように段取りされた戦いでした」。今年チェコ・リベレンツで行われたノルディックスキー世界選手権(複合団体)で、見事な優勝に貢献した渡部さんは、その歴史的戦いを分析する。この優勝は日本にとって14年ぶりの快挙となった。
「3走でゴールした後、スタジアムの大型スクリーン中継を見ながら応援していたら、すぐゴールに戻ったほうがいいって声をかけられたんです。このレースいけるかも・・・そう思った矢先でした。でもゴールエリアには競技用のゼッケンを着なければ入れなかったので、着替えに手間取っている最中に最終走者がゴールしちゃったんですよ(笑)」。その勝利がすぐには信じられず「不思議な気持ちだった」と、勝利の瞬間を振り返る。
こうした国際試合で真の実力を発揮する…強さの秘訣は一体どこにあるのだろう? 「あれこれ考えないことですね。海外での生活スタイルが違うことは、分かりきっています。それを前提条件として受け入れることです」ときっぱり話す。転戦中は競技以外にも、いろいろな雑用もこなさなければならない。「大きく構えて、よく寝ること。神経質になっている暇はありませんから」。
そんなタフ・マインドを育んだ渡部さん。競技選手を真剣に目指すようになった原点のひとつは、98年の長野オリンピックだという。「地響きのような応援の熱気と興奮が、いまだに僕の心に焼き付いています。そのとき、ジャンプ競技の真の魅力に気付き始めました」。高校生の時からコーチによるアドバイスの下、自分自身で練習メニューを組み立て、手探りでスキーをしてきたという渡部さん。一時期は練習が試合結果につながらず、全てに反抗的になった時期もあると言う。しかし現在、「スポ科で勉強することの全てが、競技にプラスになっています」と、勉強と競技生活の相乗効果に手応えを感じている。
バンクーバーオリンピックへ向けて大きな期待がかかる渡部さんには、「心は熱いけれど、頭は冷静」で競技に臨むという信念がある。「強心臓…いやたぶん逆だと思いますね。臆病だから考えて練習するし、どうやったら強くなるかをいつも考えています」と冷静に自己分析する。「将来の事をあれこれ考えるよりも、現在の競技生活に全力を注ぎ込みます。常にオリンピック出場を目指して、結果を出し続けます」。渡部さんの新たな世界への飛翔に期待したい。
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