薦!新任教員によるおススメ!本・映画・音楽・舞台

DVD『運命じゃない人』監督:内田けんじ
お疲れぎみなあなたへ

■木村 好美
文学学術院准教授
2008年4月嘱任
担当科目:社会学演習・社会統計学他

  むかしから、生命力と活力に満ち溢れた、新緑の季節が苦手、である。就職や進学といった大きな環境の変化が無くとも、4月は新年度の始まりであり、みな程度の差はあれ新しい環境に適応せねばならない。新しい環境に戸惑っているうちに、木々の葉が其処此処で5月の陽を受けて輝き出し、その勢いとやる気についてゆけず、理由もなく疲れてしまう。

 倦怠感を抱いたまま、元気な人でも憂鬱になりそうな、じめじめとしたいやな梅雨を迎えてしまうと、思考がどんどん暗いほうへと向かう。木々の緑と同様に、周囲の人びとはみな生き生きと輝いて人生を楽しんでいるように見える。自分ひとりだけ、周囲から取り残されているような気分になり、焦りと孤独が募る。

 新緑の季節でなくとも、こころが少し疲れたとき、ややもすると複雑になりがちな人間関係にうんざりしたときなどにお薦めなのが、内田けんじ監督・脚本の『運命じゃない人』である。「知らない星にひとりぼっちでいるみたいだ。ひとりで生きていかなきゃいけないんだ。この星で。ひとりで」。婚約者と別れ、雑踏を当て所なく眺める真紀。貰った婚約指輪を質屋へ持ち込むと、ついた値段はたったの3,000円。「じぶんの幸せをほかの人間に託すから、こんなことになるんだ」「もー二度とたよらない。だーれも信じない。ひとりで生きていくんだ。ひとりで」。

 そんな真紀は、偶然入ったレストランで、新居用にとマンションを購入した途端、彼女(実は結婚詐欺師)に逃げられたお人よしの宮田と出会う。物語は、この宮田の経験した一晩を、宮田と彼を取り巻く人々の視点から描いている。最後に互いの意外なつながりが明らかになるのだが、その過程が面白い。

 思わずニヤリとしてしまう、人間の本質を突いた発言あり、予想外の展開あり…ぜひ、肩の力を抜いて観てほしい。きっと、何かがふっきれ、明日からまた頑張ろう、と思えるから。


2004年
DVD発売元:クロックワークス
DVD販売元:エイベックス・マ-ケティング
¥4,935(税込) 好評発売中!


※各キャンンパス生協に
「ウィークリー薦 コーナーが設置さています」
   
1192号 2009年7月2日掲載