とっておきの話 

私の英国滞在記
~紅茶と床屋とフットボール~

理工学術院(創造理工学部環境資源工学科)教授 大河内 博


 1999年9月から1年間、イースト・アングリア大学(英国・ノリッチ)に客員研究員として滞在する機会を得た。ひとり暮らしであったが、キャンパス内に家族用フラットを借りた。窓の外に広がる芝生とその奥の湖(英国東部特有のBroads)の眺めは、ジョン・コンスタブルの風景画そのものであった。

 英国といえば紅茶である。牛乳をたっぷり入れた紅茶がお気に入りとなった。ところがだんだんとお腹の調子が悪くなり、全身がだるい日がしばらく続く。食材は週末に1週間分を買い込むのだが、2~3日すると牛乳がドロドロになった。『英国の牛乳はずいぶん濃厚だなぁ』と感心し、茶こしで濾して飲んでいた。毎週同じことを繰り返した末に、牛乳が腐っていることに気付いたのは1カ月ほど経ってからであった。家内に電話で話したところ、しばし絶句の後に大笑いされた。後で知ったことだが、英国では低温殺菌牛乳であり、おいしくて風味はあるが、賞味期限が短いのだそうである。

 滞在1カ月を過ぎたあたりで髪の毛がうっとうしくなったので、街中の床屋に飛び込んだ。“スポーツ刈り”にするつもりが、単語が思い浮かばず、ジェスチャーを交えて『Square cut,please!』と言ったら、ハサミを使わずバリカンだけで“真四角”に刈られてしまった。毎回、髪の毛が服に入り、体中がチクチクしたまま帰宅するハメに陥ったが、結局同じ床屋に通い続けた。

 英国で忘れてはならないのがフットボールである。地元チームやプレミアリーグの試合にも度々足を運び、声が大きく冬でも上半身裸のスキンヘッドのサポーターや選手のプレースピードに驚き、すっかり英国フットボールに魅了された。家内は度々訪英したので、日本から輸送した愛車でウェールズを除く英国ほぼ全土を観て廻ることができた。素晴らしい恩師と友人(マリオ)も得ることができ、生涯忘れることができない実に有意義な1年間であった。


スーパー・マリオに似ている友人マリオ。
▲スーパー・マリオに似ている友人マリオ。
後方の蜂の巣状建物(学生用フラット)は、
景観上すこぶる評判が悪い。


リビングから見える景色。
▲リビングから見える景色。
イースト・アングリア大学のキャンパス内。
遠くにUnivercity Broadsが見える。

 
1191号 2009年6月25日掲載