とっておきの話 

オクスフォードの麻雀牌

公共経営研究科教授 江上 能義


 1993年にオクスフォード大学で1年間、研究する機会に恵まれた。中2の娘と小5の息子も一緒だった。そこで子どもたちの交流を通して、それぞれの所属するカレッジは違ったが、近くに住む日本人の2家族と親しくなった。筑波大学教授の家族と京都の画家の家族だった。

 そしてある日、3家族とも麻雀好きであることがわかった。だが、もちろん誰も麻雀牌を持参していない。そのとき私は、以前にオクスフォードの街外れの骨董屋に麻雀牌らしきものが陳列してあったのを思い出した。そこで早速、まだ店頭にあるか、確かめに行った。あった!

 中国製の木箱入り麻雀牌でかなり古く、骨董店主は、1920年から30年代にかけて製作されたものではないか、と語っていた。また西洋人にも使える様にであろう、それぞれの牌に算用数字が書かれていた。風変わりな牌はかなり文字が薄れているものもあった。そのころ、東洋の植民地から渡来したこの珍しい移入品は、ロンドンなどで熱狂的に歓迎されたという。

 値段は110ポンドくらい(当時のレートで約1万8千円)だった。私は麻雀をやりたい一心で買って帰り、早速、2家族に呼びかけて我が家で即席の雀卓を囲んだ。

 麻雀の木箱は3家族の家を転々とするようになり、そのうち子供たち同士でもやるようになった。こうして3家族の絆は強まり、帰国後15年が経過した今でも親交が続いている。子供たちもすっかり成長して社会人や大学院生になった。

 子供たちはこの麻雀牌のことをまだ覚えているだろうか。そのうちまた3家族が集まり、このなつかしい麻雀牌で興じてみたいものである。



▲江上能義教授

 



 
1181号 2009年4月9日掲載