先輩に乾杯!進路に迷ったときに読む、 身近な先輩へのインタビュー

メタボ対策メニューを1食食べると、アフリカの子どもたちの給食1食分に!
ユニークなプロジェクトに取り組む元マッキンゼーのコンサルタント


小暮 真久さん

■こぐれ・まさひさ
1972年東京都生まれ。91年早稲田大学高等学院卒業。同年早稲田大学理工学部機械工学科入学。95年卒業。98年Swinburne University of Technologyで修士号を取得。マッキンゼーアンドカンパニー、松竹株式会社での勤務を経て、2007年より特定非営利活動法人 TABLE FOR TWO International事務局長に就任。


■TABLE FOR TWO(TFT)
  参加企業・団体の食堂運営担当者と相談の上、カロリー数などのガイドラインに沿ったヘルシーな食事TFTメニューを作り、食堂で提供してもらう。参加者がTFTメニューを購入すると、1食につき食事代金のうち20円分が、開発途上国の子どもたちが食べる学校給食1食として寄付される仕組みだ。1つのテーブルを囲み、先進国の参加者と開発途上国の子どもが、時間と空間を越えて一緒に食事をしているイメージから、TABLE FOR TWO ~2人の食卓~と命名。日本の参加者のメタボ対策や健康管理になることや、仰々しくない寄付の形が受けて、参加団体が急増。現在、企業、官公庁、病院、大学など100団体が参加登録し、メニューも好評を博している。

http://www.tablefor2.org/jp/index_jp.html

 理工学部卒業後オーストラリアで人工心臓を研究した後、マッキンゼーでコンサルタントとして活躍した小暮さんは現在、NPO法人の事務局長として、開発途上国の子どもたちのために、奔走する日々を過ごしている。一見、非常に珍しいキャリアを積む小暮さんだが「自分の人生は『出会い』でつながっていて、TFTの活動には今までのすべての経験が活きている」と語ってくれた。

出会いを求めて海外へ
  自由な校風の早稲田大学高等学院で高校時代を過ごした小暮さん。大学進学後は理工学部の雰囲気になじめず、居場所を求めて自転車で早稲田キャンパスに行き、当時の国際部の授業を海外からの留学生に交じって聴講していた。もっぱら海外旅行に出掛けては、現地の人との交流を楽しんだ。「海外で仕事をしたいと思うくらい英語が好きだったのに、西海岸を旅行した時、全く通じないことにあぜん」とし、本気で英語を学んだことが旅行や後の留学に大いに役立ったという。オーストラリアの大学院への進学のきっかけとなったのは、人工心臓の権威、梅津光生先生との出会い。先生の人柄にひかれ、研究チームに参加し、人工心臓の弁の実験・研究を重ねた。しかし、グループを超えて医師や研究者が協力しあうのが当たり前のオーストラリアに比べ、連携が弱く大きな目的のための結束が弱い日本の現状に、違和感をぬぐえなかった。民間企業の資源を社会的事業に引き込むことの重要性を痛感した小暮さん。経営コンサルタントという仕事を通じて、医療やヘルスケア分野に貢献するため、マッキンゼーに入社。7年間マッキンゼーが得意とする、ロジカルシンキングや問題解決能力を徹底して身に付けたのだった。

社会セクター」との出会い
  NYオフィス勤務時に、新たな道との偶然の出会いがあった。その後の人生のキーワードとなる「社会起業」という言葉をWHO(世界保健機構)の戦略担当に従事している同僚の言葉から知った。その戦略の切り口は「正直悔しいくらい、まさに自分がやりたい仕事だった」。ロックフェラーやビル・ゲイツなどの成功者が最後に行きつくところが、財団活動であることからも「日本もそうなる時代が来る」と確信した。そして、ボランティアとしてではなくコンサルタント出身者がプロとしてNPOで活躍する「社会セクター」の存在を知り、今までの一つひとつの想いが線としてつながった。人々の「感動」の対価として募金が行われる仕組みを実践する可能性を求めて松竹に転職。日系企業独特のノミュニケーション文化に圧倒されるも、この文化の重要性も痛感した。大企業で好きなことを進める難しさを痛感し始めたころ、またもや、新たな出会いに導かれる。マッキンゼー時代の先輩から「社会セクター」の事業が始まることを告げられ、自分が立ち上げようと決心。2007年の「TABLE FOR TWO」のアイデア発足地点から携わってきた。

TABLE FOR TWOでの日々 夢は大学生協との提携 
  現在は「社会起業家」として活躍できるフィールドで、長年の想いの実現のため活動する毎日。「立ち上げのころ、講師業とのかけもちなどきつい時期もありましたね…。アフリカの子どもたちの笑顔を思い浮かべて、乗り切りました!」。昨年6月にルワンダの小学校を訪問し、給食のポショを子どもたちと一緒に食べた時、「遠慮して少しの量しか取らなかった僕を見て、隣に座っていた女の子が、もっとたくさん食べなよ、と言ってくれたのが、とってもうれしかった」と話してくれた小暮さん。「普段、一日の食事もままならない子どもの唯一の食事を、支援をしているとはいえ、初対面の僕に親切にたくさん分けてくれることに感動しました。もちろん、言葉は地元の言葉なので、ボディランゲージでしたけど」と目を細めた。

 TFTの活動を支援してくれる企業・団体を増やすために戦略立案し、交渉する日々だ。「TFTが斬新な点は日本発の社会貢献活動であること、特定の企業や業界でなく多業界にわたるネットワークで支援されていること」だが、今後はグローバルな展開をしていく。「『ノミュニケーション・スキル』がここでは思い切り役立っているんですよ」と笑いながら「活動のプランの策定や国への申請作業など、まさにコンサル時代のスキルを駆使して、必死にプランを練ることも多いんです。企業の意思決定プロセスもたくさん見てきたし…」と語る。「ほとんどの団体のどこかに早大卒業生がいて、この活動がうまくいくよう応援してくれている」と感謝を込めた。「活動やロゴマークの認知度を高めて、TFTブランドのヘルシー食品をコンビニなどでも販売するのが目標です。大学生協でもメニューとして出してもらいたいんです!」

 「今まで多くの出会いに導かれてきた」と語る小暮さん。「好きなことを思い切りやればいい。大学時代は、心が叫んでいるものが何かを探せる時間。TFTへのボランティアも大歓迎です!」と後輩へメッセージを送ってくれた。「実は自分にも失敗はいろいろありましたよ。自分に合わないと思うとき、『出てみる』のもチャンスかもしれない」。小暮さんの「真久」という名前は、信心深い仏教徒である両親の「世のため、人のため」という思いがこめられているそうだ。まさに、名前のとおりの人生を邁進している最中だ。

 


ルワンダにて給食を食べる子どもたちと(写真提供:TFT)  
▲ルワンダにて給食を食べる子どもたちと(写真提供:TFT)

TFT事務局スタッフと(実は3人とも本学出身!)
▲TFT事務局スタッフと(実は3人とも本学出身!)

200人が参加した「アフリカン・クリスマス」での
▲200人が参加した「アフリカン・クリスマス」での
ライブパフォーマンス(写真提供:TFT)










          









          

 
1178号 2009年1月22日掲載