取材場所へ移動中、エレベーターで一緒になった同級生が手にする分厚い専門書に目をとめた秋吉さん。「ねえ、それ全部読んだの?」「拾い読みですよ」「だよねぇ、私も!!」笑いあう姿はキャンパスの学生そのものだ。
文化人類学と哲学を同時に学べると思い込み入学を希望した公共経営研究科。「実際は思っていた以上にもっと複雑なところでした(笑)」。1年半学んだ今は、現存する社会組織への疑問点を多様的な側面から検討していく上でのツールとして、経営学や哲学を学んでいくところだと考えている。
「社会性を考えて学び、学んだことを社会に還元する…『実践の早稲田』という言葉の意味がやっとわかってきたような気がします」。公共研では、地方自治体や企業に籍を置きキャリアアップを目指す社会人、そして一般学生などが、それぞれの目的を持って学んでいる。「まるで独立自治区ですよ!自由だけれど、自分と向き合う中で自由の意味をそれぞれに解釈していく。その姿に学ぶことが多いですね」
夏に実施された集中講義では意外な事実を発見した。「公共経営って、気風がものすごく『体育会系』なの」。限られた時間の中でグループの方向性を決め、レポートをまとめなければならない講義。効率よく最終地点にたどりつくために、グループメンバーが自然と役割分担をしていた。「礼儀正しく、きちっと上下関係が厳しい。いつのまにか私もそんな体育会系の感じになっていました」
もともと女優という職業は、刹那にどれだけのエネルギーを出せるかという自分との闘いの積み重ねだという。「だから、大学院での経験を通して絞り込んだ焦点からではなく、人間を多角的に見る眼が鍛えられました」。公共経営の授業は「理論と実践が、バームクーヘンの層のようになって重なっていくイメージがありますね」と話す。理論を学ぶだけではだめだし、実践ばかりでも身につかない。「互いを照らし合わせていくことが大切なんです」という秋吉さんの言葉はすべての学問に通じるのではないだろうか。
「でも、まずは修士論文ですね」。9月修了なので時間的余裕があるにもかかわらず、1月提出締切の学生たちの熱気につられて、つい「どきどきしています。本来なら提出期限の迫った4月ごろに一番どきどきするはずなのに、その前の前哨戦のような…。9月入学の宿命なんでしょうか(笑)」。修士論文計画書は完成しているので、あとは調整をしながら書き進めていく予定だ。鞄の中には思いついたことをまとめられるよう、いつも何冊もの専門書やレポートパッドが入っている。「すべての授業が、『生きること』を考えるものでした。それがここの哲学なのかも。そんなことを考えながら修士論文を書き上げるつもりです」重そうな鞄を軽々と肩にかけ、朗らかに笑った。
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