OG・OBインタビュー 

俳優 宇津井 健さん

日本を代表する俳優・宇津井健さんが登場!
第一線で活躍し続ける大先輩に、学生時代の思い出や本学にまつわるエピソードをうかがった。

【プロフィール】
1931年、東京都生まれ。1950年、第一文学部文学科芸術学(演劇)専修入学。1952年、俳優座養成所第4期生入学。1953年、俳優座・新東宝製作映画『草を刈る娘』(『思春の泉』)の主演に抜擢されデビュー。初め新東宝、その後、大映映画(大映テレビ)と契約し、110本以上の映画に主演。『ザ・ガードマン』や「赤い―」シリーズに出演するなど、早くからテレビでも活躍する。最近の代表作に映画『マリと子犬の物語』、NTV『ごくせん』、NHK『ディロン~運命の犬ふたたび』など。

学部は「早稲田大学馬術部」!?
  戦時中に東京から千葉県に転居し、現在の千葉県立千葉中学校、千葉高校に通いました。そのころ尾崎士郎先生の『人生劇場』を愛読していたんです。尾崎先生の影響で、大学は早稲田一本と決めて受験しました。演劇にも興味があったので、演劇博物館があったのも魅力的でしたね。

 まだ入学式前に新宿を歩いていると、馬に乗った早稲田の学生を見掛けましてね。その勇姿に一目ぼれし、馬術部に入ったんです。それから、馬に夢中になって。当時は早稲田大学に専用の馬場がなく、目白の学習院と同居していました。朝早く学習院大学に行って馬に乗り、世話をしてから面影橋を通って早稲田まで行き、一応教室に入って夕方には馬場に戻るという生活でした。早稲田大学の馬は3頭だけで、50人くらいの部員が馬一本の脚を寄ってたかって洗っていましたね。馬に専念したので、演劇専攻といっても、大学ではほとんど演劇活動をしていないんです。

 馬にひたすら打ち込んで、大学に入る前までは数えるほどしか乗ったことがなかったのに、1年生の終わりにはレギュラーに抜擢されるほどになりました。何カ月かの間にみるみる上達したんです。僕が競技に出ると、女学生がいっぱい来るなんて言われまして。僕にとっては、早稲田といえば馬術部の印象が強くて、学部は文学部というより「早稲田大学馬術部」という感じでしたね(笑)。

俳優への道と人生の師・尾崎士郎との出会い
  朝・昼・晩、馬に乗っていたので、これは4年間で卒業できないという見通しをいち早くつけました。そんな時、俳優座の養成所が俳優を募集しているのを知り、応募したら受かっちゃったんですよ。同期には仲代達矢、佐藤慶などいまだに現役で活躍している人たちがいます。当時の映画界は、早稲田大学の中退組が非常に多くいましてね。森繁久彌先生をはじめそうそうたるメンバーが満足に卒業していなかったんです。僕も御多分に洩れず中退ですよ(笑)。

 俳優座養成所の2年生の時、石坂洋次郎さんの『草を刈る娘』が、俳優座と新東宝という会社で映画化されることになったんです。裸馬を乗り回せる役者が必要で、僕が主役に大抜擢されました。幸運にも映画デビューできたんです。それも、早稲田で馬をやっていたおかげです。

 あこがれていた『人生劇場』の青成瓢吉も演じることができました。まだ、ビデオテープもなくドラマも全部、生放送のころで。30分くらいの番組を1年間演じました。このドラマがきっかけで、尾崎士郎先生とも親しくなりましてね。結婚の時には尊敬する尾崎先生に仲人をしていただき、子どもの名づけ親にもなっていただきました。僕は4歳の時に父を亡くしたこともあって、尾崎先生を人生の師とも父とも仰ぎ、先生のような男というのを目標に生きてきました。尾崎先生が鬼籍に入られたお歳を僕はもう超えていますが、今でも先生を目標にしています。演技の面でも、尾崎先生のような人物をイメージしてやっていて、かなり影響を受けています。

 大映という映画会社の『巨人 大隈重信』では、大隈重信を演じました。尾崎先生はじめ政治家の石田博英さんなど、そうそうたる早稲田大学関係の方々が製作委員会をつくりましてね。総長室にも呼ばれました。学生時代の成績を調べられたらどうしようという恐怖もありましたが、そんなこともなくて(笑)。試写会は大隈講堂で開催され、僕も客席で妻と母と一緒に座ってその映画を観たんです。終わった後、大勢の学生がスタンディングオベーションで見送ってくれて。100本以上の映画に出ていますが、その試写会は忘れがたいものです。早稲田に入って本当に良かったと思います。

愛校心いまだ衰えず
  主任教授だった印南喬先生がご長寿だったこともあり、頻繁に同窓会があって。僕も参加していました。忘れもしない、あれは還暦の歳の同窓会でした。定年になる人も多かったせいか、みんな普段より酔っ払ったんです。その時、「年寄りの酔っ払いってみっともないな」と思いましてね、それからお酒を止めました(笑)。

 早稲田の人たちとの付き合いは今でも続いています。同窓生には映画監督とか、今も親しくしている人がいますよ。現在、出演している『渡る世間は鬼ばかり』の橋田壽賀子先生も早稲田の大先輩です。早慶戦をテレビで観ていると、愛校心はまだ衰えていないと感じます。

 役者としては、演じたことのない役柄がまだまだたくさんあるので、そういう意味で僕は可能性を出し切っていないという気がしているんです。最近は高齢化社会の中、高齢者を取り上げる作品が少しずつ増えていると思います。そういう役を演じられるいい年齢にきているのは、ラッキーだなと。虎視眈々と狙っていますよ。





















テレビ出演情報
12月14日(日)21:00~23:24
  EX『忠臣蔵・音無しの剣』
12月26日(金)21:30~23:22
  CX『長生き競争!』
毎週木曜日 21:00~
  TBS『渡る世間は鬼ばかり』
毎週金曜日 23:15~
  EX『サラリーマン金太郎』
※2009年度NHK大河ドラマ『天地人』出演
自己エッセイ
『克己心(こっきしん)』幻冬舎より発売中


 
1176号 2008年12月11日掲載