| 『早稲田ウィークリー』は、早稲田大学学生部が発行する学生向け週刊広報紙です。(授業期間中の毎週木曜日に発行) | ![]() |
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最新更新日 2008年11月19日 |
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薦!新任教員によるおススメ!本・映画・音楽・舞台
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成澤 勝嗣 |
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この本を買ったのは19歳くらいの時だったと思う。大学で美術史というものをやることになったのはいいが、自分の美的感覚に自信なぞあるはずもなく、およそ美と縁のない日常を送っていた僕は「ホントにこんな勉強やっていけるんだろうか」と、ひどく不安だった。 僕が早稲田に入った31年前、小林秀雄はその難解な文章で入試の国語問題における帝王だった。受験生にとって「傍線部のこれは何をさすか?」というような設問は、いつも恐怖の的だったのだ。でもこの本は彼の講演集だったせいか、身構えたほどの難解さはなく、僕はその中の『美を求める心』という一編が気にかかって、何度も読み返した。今でも印象に残って思い出すのは、たとえばこんな部分である。 「美しいものは、諸君を黙らせます。美には、人を沈黙させる力があるのです。これが美の持つ根本の力であり、根本の性質です。絵や音楽が本当に解るという事は、こういう沈黙の力に堪える経験をよく味わうことに他なりません」 「感ずるということも学ばなければならないものなのです。そして、立派な芸術というものは、正しく、豊かに感ずる事を、人々に何時も教えているものなのです」要するに小林秀雄が言いたかったのは、よく見て、よく感じることが大切だというようなことだったのだろう。僕はこれらの言葉を「そうか、感じることも学ぶことができるんだ」というふうに都合よく受け止めた。入試なら×になるような曲解だが、これで何となく気楽になり、美術史をやる気が出たのは確かである。それから少し小林秀雄を好きになったし、美術作品をただひたすらじいっと見る訓練を始めた。そしてそのおかげか、今でも美術史をやっている。 |
文春文庫 490円(税込) ※各キャンンパス生協に 「ウィークリー薦 コーナーが設置さています」 |
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1172号 2008年11月13日掲載
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