スタディ・アブロード 連載「ぐろーかる・らうんじ」は「スタディ・アブロード」に名称変更しました

早稲田からギリシャへ 

大学院スポーツ科学研究科修士課程(2008年3月修了)
深澤 朋子さん

ギリシャから早稲田へ

社会科学研究科 修士2年
Chrisoula Sotiriouさん                            

ギリシャでのアンケート調査
  2007年9月に8度目となるギリシャを訪問した。1999年にギリシャ政府のご招待によりギリシャ料理を学ばせていただいたことに始まり、政府関係者のみならず友人も増え、国内でもギリシャ政府主催の「食のイベント」などのお手伝いもさせていただいた。今回の渡航の目的は修士論文のテーマ「Mediterranean Diet」の実態の把握とアンケート調査実施であった。

エルンダビーチのスタッフと筆者(左から2番目)
▲エルンダビーチのスタッフと筆者(左から2番目)

「Mediterranean Diet 」とは?
  南イタリア、ギリシャ、特にクレタ島の伝統的なシンプルな生活様式で、オリーブオイル、穀類、豆類、野菜、果物、木の実、チーズ、ヨーグルトは毎日、卵、魚、家禽肉、スイーツは週に数回、獣肉は月に数回、食事ごとにグラスに2杯ほどのワインを摂り、大切なことは毎日の生活にかかわる身体活動であるといわれている。1960年当時欧米を抜いて、心疾患、ガンの発生率が低く、平均余命が最高であったことから、アメリカ人アンセル・キーズ博士(生理学者・公衆衛生学者)によって疫学研究が実施・提唱された。

ギリシャでの定番「ホリアティキ(田舎風)サラダ」
▲ギリシャでの定番「ホリアティキ(田舎風)サラダ」

リゾートホテルでアンケート!
  クレタ島の訪問先は東部シティア、中東部に位置するエルンダの「エルンダビーチ」、そして西部ハニア。「エルンダビーチ」は世界のVIP、オイルマネーで潤うアラブ、ロシアからの大富豪が1~2カ月バカンスに訪れる素晴らしいリゾートである。ホテルのダイニングが本年の夏向け日本料理メニューを試作したいということで、シェフへの指導のために招かれた。ホテル経営者のご協力のお陰で、従業員の方からアンケートの回答を得ることができた。シティアとハニアは最高のオリーブオイルを産する。ハニアには樹齢3,000年といわれる世界最古のオリーブの木が存在し、それはまるで生きている化石である。地中海沿岸に生育するブドウ、オリーブなどを使った新製品を開発しているMediterranean Agronomic Institute of Chaniaも訪問した。宿泊はドミトリー。研究室のスタッフがアンケートに答えてくれた。ギリシャの人々は人懐っこく気さくである。クレタ島滞在を通じて魅力的な方々に出会い、素晴らしい伝統的クレタ料理を堪能し、そしてアンケート調査は多くの方のご協力のもと大成功を収めることができた。

友人が結んだ日本への関心
  クリスラさんは、日本一の留学生数を誇る本学でも、数少ないギリシャからの留学生だ。「おすしと料理が大好き」と明るく話すクリスラさん。専門は経営学とマーケティング、英国のケント大学でMBAを取得している。英国留学中に、本格的に日本語と日本文化を学ぶようになり、やがて「友人になった日本人の友人たちの人柄に惹かれて」、日本への留学を決意した。文科省の国費留学制度に応募し、見事に合格した。日本ではいろいろな大学から合格通知をもらったが、その中から本学を選択した理由は、「一番インターナショナルな雰囲気だったから」という。

今は修士論文を執筆中
▲今は修士論文を執筆中

「言葉の壁」乗り越え、身につけた辛抱強さ
  しかし研究科へ正式に入学する前に、本学で研修生をしていたクリスラさんは、分厚い「言葉の壁」に直面した。「半年間毎日、部屋や図書館にこもって日本語だけを勉強しました。友人もほとんどいなくて、自信もなかったですね。本当に寂しくてつらい日々でした…」。「でも、そのお陰で、今まで学べなかった真の『辛抱強さ』を体得したのも事実ですね」。今では当時の苦労もカラッとした笑顔で笑い飛ばせる。「ゼミの井上正先生の励ましや、早稲田大学の留学生サポート体制には本当に感謝しています。日本語で修士論文を提出して、絶対早稲田の学位をとる!」、その強い意志で、クリスラさんは「言葉の壁」を突き破ってきた。

白壁の家が美しいサントリーニ島にて
▲白壁の家が美しいサントリーニ島にて

「共に学ぶ姿勢」が大切~留学生の立場から~
  現在、日本の社会規範とその雇用制度への影響などを研究テーマに修士論文を執筆中。日本とギリシャの大手建設会社を対象に、600人以上の従業員などにアンケート調査を実施した。「ギリシャだけではなく、欧米も日本の雇用制度から学ぶことは多いと思う」。クリスラさんは「欧米社会は日本のことをもっと知るべき。それだけじゃなく、日本ももっと英語で情報を国際社会に発信するべき」と、留学生の立場から、共に学び理解し合う姿勢を強調する。

 「卒業後は世界トップの技術を誇る、日本の建設会社で働きたい。でも、もっと日本語を勉強して、来年には日本語検定1級に合格したい」。クリスラさんのような人が増えていけば、ギリシャと日本の友好関係はきっと明るい。

 
1169号 2008年10月23日号掲載