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CD『みんな去ってしまった』中島みゆき
「真直な線」と「創造性」のクラス

杉浦 正和
商学学術院教授 2008年4月嘱任
担当科目:人材・組織、生産性と創造性のマネジメント、創造性と人的資本マネジメントの研究など

 空がどこまでも青く眩しく、こんなにも世界は美しく可能性に満ちているのかと深い溜息をついたことが3度ある。私の場合、それらはいずれも「大学」に関係していた。

  最初に空が抜けたのは京都の大学にいた18歳のとき。中島みゆきにとっての2枚目のアルバム『みんな去ってしまった』はその年(1976年)にリリースされた。次にどこまでも青い空を見上げたのは、留学のためにカリフォルニアに渡った30歳の秋。そして3度目に遥かな空の高さに目が眩む思いをしたのは、縁あって早稲田での教職を得た4年前の秋だった。「大学」という場所に新しい気持ちで立つ度に、何故かきまってこのアルバムの中の「真直な線」という曲が頭の中を何度も何度もリフレインした。

  「直」は、私にとって大切な言葉である。「本音を率直に」「本心を正直に」「本意を素直に」・・・。私にとって「真直な線」は、真に直に「本」なるものに続く道のことだった。(それにしても漢字というのはよくできている。「音」の下に「心」と書いて「意」となる。)私にとって大学は、強烈な磁力のある、特殊なそして不思議な場所である。心の上で流れ続けたこの音は、曲想こそブルージーだが、磁場の渦の中心から真直な「意」が空を突き抜けてどこまでも延びていく、そんな心象風景をあらわしている。

  ビジネススクールで初めての授業を受け持った時、出会いがあった。授業に参加していたデザイナーの方が、たった一本の「真直な線」を引くことで、画期的な商品を創造し、企業を再生したことを知った。その話を題材に、私にとっての初めてのケース(議論を行うために使う実際の事例)を書いた。テーマは創造性、タイトルは「真直な一本の線」。そのケースがきっかけとなり、さまざまなドラマが発展し、この古典ともいえるアルバムが世に出てから32年目の今年の秋、「創造性のマネジメント」の授業が始まることとなった。この曲は、私にとっては「大学」の象徴であり「創造」そのものである。

CD『みんな去ってしまった』中島みゆき
レーベル: ヤマハミュージック
コミュニケーションズ
ASIN: B00005HVAW
2.835円(税込)
YCCW-00005



※各キャンンパス生協に
「ウィークリー薦 コーナーが設置さています」
   
1166号 2008年10月2日掲載